「The Stone Roses」(1989) / The Stone Roses

レビュー

80年代後半にデビューし、当時隆盛を極めていたアシッドハウスと呼応し、ロックの新たな可能性と後の音楽シーンの指針を示した、偉大なロックの名盤。90年代のUKロックの始祖とも言える存在で、後の音楽シーンへの貢献度も非常に大きい作品である。

浮遊感とグルーブ感の掛け合わせ

ジョン・スクワイアの奏でるキラキラとしたギターサウンドと、バンドサウンドに埋もれそうなほどのイアン・ブラウンのヘタウマなヴォーカル。これが組み合わさると、まるで宙に浮いたような、ふわふわと漂うかの様な世界観が生まれる。

その浮遊感と相反するように存在感を示しているのが、マニのベースと、レニのドラム。クラブミュージックとの親和性をもたせるグルーヴィーな演奏が加わることで、唯一無二の彼らの個性は生まれていると言っていい。

つまり彼らの魅力は、浮遊感とグルーブ感の掛け合わせ。結果的にサイケからの影響も感じさせたり、後のシューゲイザーへ間接的にヒントを与えてるとさえも感じる。

中毒性を持つ作品の代表格

一聴でガツンと鳥肌が立つようなインパクトは無いが、「なんか気持ちいい音だなあ」と感じてついつい何度も聞きたくなる。中毒性を持った作品の代表格とも言える。

その持ち味が爆発しているのが、#2「She Bangs The Drums」ではなかろうか。何回聞いても飽きない、個人的に本作で最もお気に入りの曲。

本作リリース前に、シングルリリースを重ねるごとに注目を集めていったのだが、中でもニュー・オーダーのピータ・フックがプロデュースしたシングル#3「Elephant Stone」は、本作唯一と言っていいほど一聴でインパクトを感じる曲。

さらにはラストを飾る#13「Fools Gold」についてはファンキーな演奏を主軸とした黒人音楽のような趣をもつ。まさに多種多様な楽曲群である。

マッドチェスタームーブメントで音楽シーンを席巻—その後

ストーン・ローゼズ登場後、マンチェスターを中心に、「マッドチェスター」と呼ばれるムーブメントとなり、一時期ながらシーンを席巻した。

他に同ムーブメントで登場したバンドとしてはハッピー・マンデーズシャーラタンズなどが有名。日本国内であれば「渋谷系」と呼ばれるバンド(フリッパーズ・ギターなど)がその影響を存分に受けている。ストーン・ローゼズが気に入った方は、その辺りを漁ってみるのも面白いかもしれない。

なお本作リリース後は、所属レコード会社との諍いやメンバーとの確執などがあり、次作の発表までは5年ほどの空白を作ることとなる。その後まもなく解散したが、短い活動期間、少ないリリース作品にも拘わらず、彼らはロック史に大きく名を残すこととなった。

トラックリスト

  1. I Wanna Be Adored
  2. She Bangs The Drums
  3. Elephant Stone
  4. Waterfall
  5. Don’t Stop
  6. Bye Bye Badman
  7. Elizabeth My Dear
  1. (Song For My) Sugar Spun Sister
  2. Made Of Stone
  3. Shoot You Down
  4. This Is The One
  5. I Am The Resurrection
  6. Fools Gold

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