80年代後半にデビューし、当時隆盛を極めていたアシッドハウスと呼応し、ロックの新たな可能性と後の音楽シーンの指針を示した、偉大なロックの名盤。90年代のUKロックの始祖とも言える存在で、後の音楽シーンへの貢献度も非常に大きい作品である。
浮遊感とグルーブ感の掛け合わせ
ジョン・スクワイアの奏でるキラキラとしたギターサウンドと、バンドサウンドに埋もれそうなほどのイアン・ブラウンのヘタウマなヴォーカル。これが組み合わさると、まるで宙に浮いたような、ふわふわと漂うかの様な世界観が生まれる。
その浮遊感と相反するように存在感を示しているのが、マニのベースと、レニのドラム。クラブミュージックとの親和性をもたせるグルーヴィーな演奏が加わることで、唯一無二の彼らの個性は生まれていると言っていい。
つまり彼らの魅力は、浮遊感とグルーブ感の掛け合わせ。結果的にサイケからの影響も感じさせたり、後のシューゲイザーへ間接的にヒントを与えてるとさえも感じる。
中毒性を持つ作品の代表格
一聴でガツンと鳥肌が立つようなインパクトは無いが、「なんか気持ちいい音だなあ」と感じてついつい何度も聞きたくなる。中毒性を持った作品の代表格とも言える。
その持ち味が爆発しているのが、#2「She Bangs The Drums」ではなかろうか。何回聞いても飽きない、個人的に本作で最もお気に入りの曲。
本作リリース前に、シングルリリースを重ねるごとに注目を集めていったのだが、中でもニュー・オーダーのピータ・フックがプロデュースしたシングル#3「Elephant Stone」は、本作唯一と言っていいほど一聴でインパクトを感じる曲。
さらにはラストを飾る#13「Fools Gold」についてはファンキーな演奏を主軸とした黒人音楽のような趣をもつ。まさに多種多様な楽曲群である。
マッドチェスタームーブメントで音楽シーンを席巻—その後
ストーン・ローゼズ登場後、マンチェスターを中心に、「マッドチェスター」と呼ばれるムーブメントとなり、一時期ながらシーンを席巻した。
他に同ムーブメントで登場したバンドとしてはハッピー・マンデーズ、シャーラタンズなどが有名。日本国内であれば「渋谷系」と呼ばれるバンド(フリッパーズ・ギターなど)がその影響を存分に受けている。ストーン・ローゼズが気に入った方は、その辺りを漁ってみるのも面白いかもしれない。
なお本作リリース後は、所属レコード会社との諍いやメンバーとの確執などがあり、次作の発表までは5年ほどの空白を作ることとなる。その後まもなく解散したが、短い活動期間、少ないリリース作品にも拘わらず、彼らはロック史に大きく名を残すこととなった。
トラックリスト
- I Wanna Be Adored
- She Bangs The Drums
- Elephant Stone
- Waterfall
- Don’t Stop
- Bye Bye Badman
- Elizabeth My Dear
- (Song For My) Sugar Spun Sister
- Made Of Stone
- Shoot You Down
- This Is The One
- I Am The Resurrection
- Fools Gold
※赤マーカは、おすすめ曲
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