夢から醒めたサウンド
シューゲイザームーブメントの一翼を担ったバンド、Chapterhouseの2枚目となるアルバム。
リリース当時はムーブメントが収束に向かっていた時期で、シューゲイザーシーンにどっぷりと漬かっていたことも影響してか、名作なのに正当な評価を受けていない印象があるアルバム。ちなみにこのアルバムを発表後、間もなく解散してしまった。
前作とは異なり、夢見心地な世界観から脱却し、血に足がついた骨太なギターサウンドを披露。憂いがあって美意識に則ったセンスの良さをのこしつつ、新境地を図った作品に仕上がっているが、チャプターハウスのように極端なジャンル分けをされたバンドは、そのイメージを払拭するのが難しいようだ。
全体を通して極力ギターサウンドの比率が抑えられつつも力強さが増しており、マッドチェスター(またはギターロックバンド)としての色が濃くなっている。#3「We Are the Beautiful」、#8「She’s a Vision」あたりはまさにそれだろう。
ヴォーカルは相変わらずコーラスしながら囁くように歌っているが、前作と変わらずの美しさを放っている。前作ではぼやけていた音の境界線が本作ではくっきりとした印象。夢の中の世界から、橙色の秋空の下に姿を現した。…というのが私の勝手なイメージである。
そんな変化した音楽性の本作だが、個人的に最もお気に入りなのが、憂いを帯びた#4「Summer’s Gone」で、キラキラしたギターと儚げな雰囲気に胸が締め付けられる。
他にも名曲と名高い#11「Love Forever」は独特の甘美さを持っているのに加え、同じフレーズを繰り返す後半に女性コーラスが入ってくるのが絶妙すぎてたまらない。
このアルバムに対する世間の評価は散々だったようだが、そこまで酷いモノではないのは作品を聴けば明らかである。前作を踏襲しつつも、バンドのチャレンジ精神を垣間見られる優秀作。
長年廃盤状態が続いて入手困難だったが、近年ようやくリイシューされたこともあり、時が過ぎた今だからこそ冷静に、客観的に評価できるのかもしれない。
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