「Whirlpool」(1991) / Chapterhouse

レビュー

霧中を彷徨う夢幻的なサウンド

シューゲイザーシーンにその名を大きく刻みこんだChapterhouseの1stアルバム。91年のムーブメント全盛期にリリースされ、RideやSlowdive、MBVらと共にブームを作り上げた大傑作。SlowdiveのRachel Goswellがコーラスで参加している②は、このジャンルにおいては有名な曲であり、これだけでも本作を聴く価値があるだろう。

しかし、この作品はそれだけを語るためにあるのではない。むしろ本作のすべてのトラックに満遍なくバンドのセンスがちりばめられており、一点の隙も見せないそれぞれの楽曲に魅了される。

深い霧で辺りを覆うように響き渡るギターノイズの心地良さと、繊細で儚いヴォーカルがもたらす、夢中をふわふわと漂うような恍惚感。特にギターノイズの質感の優しさは他のバンドと比べると随一と言えるほどであり、非常に気持ち良いものであった。

加えて、ダンサブルで芯の太いビートを軸にしたことで、マッドチェスターの影響を色濃く感じさせているのもバンドの特徴の一つに挙げられる。それらのサウンドは次第に脳内を侵食していき、何度もその心地よさを味わいたくなっていく・・・、とても中毒性の高い作品。

正直、他のバンドと比べるとインパクトに欠けていた気がしたため(特に中盤)、購入当初は印象の薄い作品だった。しかし何回も聴くうち、徐々にこの作品のサウンドの魅力に気づきながら虜になっていき、今ではMBVやRide以上に素晴らしさを感じている作品である。

焦燥感全快の疾走ナンバー①⑦や、マッドチェスターど真ん中の⑤。深い霧のようなギターに包みこまれる④⑥など、どれも荒々しさを感じさせつつも優しい音色とヴォーカルが寄り添う、至高の名曲ばかり。

ちなみに06年の再発盤には、7曲のボーナストラックに加え、ブックレットがボリュームアップしたとのことなのでこれから手に入れるならばそちらがお勧めです。

Chapterhouse / Whirlpool
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