白昼夢へ誘う、幻想的な風景
BOCの3rdアルバム。前作から約三年ぶりに発表された作品。ブレイクビーツを始め、目の覚めるようなサウンドも織り交ぜていた過去作と比べると、雲を掴むかのような音像で我々を浮遊感のある世界へと誘う今回の作品。
サウンドに浸っていると、打ち寄せる波を眺めているような脱力感を覚えるのみで、意識が遠のいていくのを感じる。細かい音を重ねあわせた幻想的なメロディは、辺りを包み込むように鳴り渡っていくのが印象的。BOCの中でも、とりわけ浮遊感が強調され、奇を衒った音が少ない作品である。
一歩一歩踏みしめるようなパーカッション、ギターの音やさざ波などのサンプリング音が取り入れられながらも、電子音と生音との調和が取れていて、とても神秘的に仕上がっている。ビートもしっとりと心地良い上、穏やかに進行していくトラック群。薄く白いベールで覆うように、神経質なメロディが重なり合う美しさ。
心地良いエレクトロミュージック言ってしまえばそれまでだが、紋切り型のエレクトロニカとは、アプローチが大きく異なっていることが想像出来る。派手さは無くとも、計算しつくされた音の配置に安心感さえ覚えてしまうだろう。この作品を聴きながら、絶景や感情などにどっぷりと思いを馳せたい。
地味ながら印象に残ったのが最後の二曲。青白い火が段々と小さくなるように、音もまた儚く響きながら消えていくのである。陳腐な表現で言えば、世界が終焉に向かっている感じ。人っ子ひとりいる感じがしない。しかし、それが心地良くてたまらない・・・。ラストに相応しい曲である。
統一感バッチリのその他の楽曲も見事で、聴くごとに深みが増す素晴らしいサウンド達。心地良さと美しさ、浮遊感が想像力を膨らませる、BOCの名作である。
トラックリスト
- Into the Rainbow Vein
- Chromakey Dreamcoat
- Satellite Anthem Icarus
- Peacock Tail
- Dayvan Cowboy
- A Moment of Clarity
- ’84 Pontiac Dream
- Sherbet Head
- Oscar See Through Red Eye
- Ataronchronon
- Hey Saturday Sun
- Constants Are Changing
- Slow This Bird Down
- Tears from the Compound Eye
- Farewell Fire
※赤マーカは、おすすめ曲
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