あの伝説的バンド、The Verveが帰ってきた。
1999年の解散から約8年、2007年に奇跡の再々結成を果たした彼ら。作品としてはなんと11年ぶりのリリースとなる。
SUMMER SONIC08にヘッドライナーとして出演したことより、日本初公演まで果たしてくれた。
サイケデリックサウンドへの回帰
本作のリリースがアナウンスされた頃の情報では、サイケデリックサウンドへの回帰が謳われており、実際それに近い作風となった。
前作は言わずとも知れた傑作『Urban Hymns』だが、こちらはアコースティックなサウンド主体の歌モノであり、彼らの本質から外れていた感が否めなかった。個人的に彼らの本質は、初期のサイケデリックサウンドだと思っていたので、とても嬉しかった。
『FORTH』を聴いてみた印象は、確かに1st辺りのサイケ感を意識しているような感じ。ただ、初期のそれとは全く違う感触の音、といった印象だった。
1st『A Storm in Heaven』は、吹き荒れる轟音とドリーミーな音色が織りなすサウンドで、リスナーを絶景・秘境の地に誘う、芸術的な作品だった。対して『Forth』は、即興演奏の中で作られたかのような曲が多く、その中でリチャードの歌声が合いの手を入れるように響き、溶け込んでいく。
こちらも個々のサウンドやメロディが柔らかくて穏やかで、心地よく聴けてしまうが、バンドとしての魅力も強く感じさせた。ライブ映像なども拝見したが、どの曲も非常にライブ映えする曲ばかりである。これはきっと、長い間聴くほどに愛着の湧く作品になっていくに違いない。
これは、特別違うところを目指そうと確信犯的に作られたものではなく、久々に4人で集まって音を出したらこうなった、というような自然発生的な産物に思えた。
どちらにせよ、これは紛れもなくザ・ヴァーヴの音だと納得がいくし、11年ぶりに彼らが作り出した作品としてすんなり受け入れられた。…というより、個人的には前作よりもお気に入りである。
シングルカットされた#2「Love is Noise」は、大ヒット曲「Bitter Sweet Symphony」に匹敵するアンセムもあり、復活を告げる曲としては申し分ないといえる。
他にも、嵐が立ち込めるようなダークさが癖になるオープニングトラック#1「Sit and Wonder」、まばゆいほどの光にゆったりと浸かるような#4「Judas」、後半の狂気を含んだ演奏で一気に持っていく8分に及ぶトラック#7「Noise Epic」など、特筆したい楽曲は目白押し。
私はニックのギターサウンドや彼の佇まいがとにかく好きだ。ポーカーフェイス黙々とうつむいて演奏する姿はまさに職人。さらにライブでは曲の中で自由奔放に音色をかき鳴らすなど、大胆な一面もあり、The Verveのサウンドの核を担っている。
『Forth』は、『Urban Hymns』の延長上の作品と予想して聴くとがっかりしてしまうが、大きなブランクも感じさせずに作り上げた、現在の彼らが届けてくれた贈り物のような名作。再々々結成してほしいな。
トラックリスト
- Sit and Wonder
- Love Is Noise
- Rather Be
- Judas
- Numbness
- I See Houses
- Noise Epic
- Valium Skies
- Columbo
- Appalachian Springs
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