「m b v」(2013) / My Bloody Valentine

レビュー

シューゲイザーの代名詞的存在であるマイブラによる、およそ22年ぶりとなる新作。

シューゲイザームーブメントの渦中で、ジャンルの指針となる名盤「Loveless」を発表したあと、新作の噂などが飛び交いながらも97年に解散。

このまま伝説のバンドとなるかと思われたバンドだが、2006年にシューゲイザー再評価の波に押されるように重い腰を上げた。

長い制作期間を経て

本作はとても長い制作期間を経て生み出された作品で、それは90年代にまで遡る。

バンドは96年頃、新作発表に向けて楽曲制作や録音、リフなどの取り溜めなどをしていたが、その間にメンバーの脱退やレーベルの倒産などがあった。

とはいえ、ある程度作品は出来上がっていたらしいが、ケビン・シールズいわく「中途半端な完成度」だったこともあり、制作は頓挫し、一時お蔵入りとなった。

時は経ち、2006年に黄金期のメンバーが揃っての再結成を果たしたことで制作を再開。日の目を見ないままだった作品に再び命を吹き込むかのような作業を行うこととなった。

再結成後はライブ活動なども積極的に行っていたことや、納得がいくまで制作を続けるケビン・シールズの制作意欲っぷりも手伝って、2012年にようやく作品は完成。

リリースは2013年2月2日当日にアナウンスと同時に発表され、衝撃を与える事となった。

ムーブメント当時の雰囲気と、ネオシューゲイザーのハイブリッド

解散前に制作していた音源をベースにしていたこともあり、油の乗り切っていた当時の雰囲気を感じ取るように聴くと感慨深い。

そこに、ネオシューゲイザーを感じさせるエレクトロやクラブよりのサウンドなども加わったことで、時代を超えた邂逅を果たした、まさに新たなマイブラといえる作品である。

レイヤーの重なった轟音ギターサウンドと脱力したケビンとビリンダのヴォーカルを軸に、フワフワと漂う浮遊感と同じフレーズを繰り返す曲展開はそのまま。まさにLovelessを正当に継承したアルバムと言える。

「sometimes」のような粒度の粗いギターサウンドの#1「She Found Now」から始まり、酩酊感のある揺らいだ轟音ノイズギターがクセになる#3「Who Sees You」などはお気に入り。個人的には激しいダンスビートをバックに轟音とシンセの音が吹き抜ける#7「In Another Way」は特にお気に入り。

賛否両論

傑作「Loveless」の次作であり、あれから22年も経ったこと、制作期間が長く中々日の目を見なかったということも影響してか、賛否を大きく分けた作品。

王道シューゲイザーを表現しながらも、メロディーに重点を置いた楽曲などがいくつかあるため、その辺りが影響している気もする。(#4「Is This and Yes」など)

ただ、その辺りについてケビンはビーチボーイズを引き合いに本作を語ることもあったらしいので、彼らの新たな一面と言うことができるだろう。

「Loveless」が蒔いたシューゲイザーの遺伝子を継ぐバンドが溢れた現在、そのバンドたちから逆にパワーを貰って復活した感もあるマイブラ。彼らの復活によって今後ますますシーンは活性化していくに違いない。

トラックリスト

  1. She Found Now
  2. Only Tomorrow
  3. Who Sees You
  4. Is This and Yes
  5. If I Am
  1. New You
  2. In Another Way
  3. Nothing Is
  4. Wonder 2

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