荒々しくて、美しい
個人的にストレイテナーは大好きなバンドの一つで、2005年に『TITLE』を聴いて以来、リリースされる作品をチェックしてきた。個々のメンバーの繰り出すサウンドが非常にパワフルで、お互いの力強さをぶつけ合わせるような演奏がとても魅力的なバンドである。結成当初はホリエアツシ(Vo/G)とナカヤマシンペイ(Drums)の二人組だったが、2004年に日向秀和(Bass)が加入し、2008年に大山純(Guitar)が加入。それにより音の厚みが格段に増しており、初期の作品と比べると一目瞭然である。
本作は『TITLE』に引き続き、3人編成による作品。日向秀和が加わったことで一気に音の厚みが強くなり、現在に繋がる極太サウンドの核が出来上がった。『TITLE』は、日向を加えた事による轟音サウンドを惜しげもなく詰め込んだ作品となり、音の粗さも魅力に変えた名作だった。
それを踏まえて次作『Dear Deadman』を聴くと、轟音の威力はそのままに、音質がとてもクリアになっており、とても聴きやすいという印象だった。また、前作にもあったアルペジオの音色を駆使した曲も洗練されている。全体的に整ったサウンドメイクがされ、インディっぽさがなくなり、上品さが生まれた作品。多くのファンは、この作品を聴いたことにより、いよいよ彼らが大きなステージに登ってくることを感じただろう。
音のバラエティに富んだことで個々の曲の個性が強く出ている。#1「The Novemberist」は、繊細なアルペジオで始まり、轟音で大サビに入る王道の展開。ただ、これは彼らの持ち味なので、名刺代わりに1曲めから聴かせるのに優れていると思う。そこからシングルカット曲#2「Melodic Storm」で一気に引き込み、#3「Blue Sinks in Green」~#4「Dead Head Beat」で彼らのぶつかり合うようなサウンドが駆け抜ける…といった展開。ギターのカッティングとシンセ音が印象的な#9「Discography」もカッコイイし、ミドルバラード#10「Farewell Dear Deadman」は後半の女性コーラスが感動的(一瞬なのに)、というか使い方が上手い。
音の爆発力も去ることながら、それだけにとどまらずメロディを強調した物語性の強い楽曲を作るので、彼らの曲やサウンドはとても印象に残る。荒々しくて、美しい。対極の部分を見事に共存させつつ、作品を発表するごとに大きく進化していく素晴らしいバンドである。
トラックリスト
- The Novemberist
- Melodic Storm(DEAR EDIT)
- Blue Sinks in Green
- Dead Head Beat
- Sad Code
- The Remains(DEAD EDIT)
- The Nowarist
- Tornado Surfer
- Discography
- Farewell Dear Deadman
※赤マーカーはおすすめ曲
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