「Zatracenie」(2007) / Matryoshka

レビュー

身体の芯から凍える真冬の季節、夜にひっそりと聴きたくなるのは本作のようなアルバム。

震えるような小刻みなノイズ、静謐なエレクトロサウンド、そしてオーケストラを融合させ、非常に繊細な音を奏でるのが特徴的なエレクトロユニットである。

冷気を感じさせる国内産エレクトロニカ

Matryoshkaは男女二人組で活動しているユニットで、本作は2007年のデビュー作にあたる。繊細なタッチで描かれた音色に、吐息のような女性のウィスパーボイスが重なり、非常に幻想的で壮大な世界観が構築されている。

また、ダークな側面も強く持ち合わせているため、ネガティブな心情にそっと寄り添うかのような、もの悲しい雰囲気がとても印象的である。中でも#8「Ezekiel」で繰り広げられている妖しさは絶品である。

季節で言うと完全に”冬”の作品で、#2「Slowsnow」や#4「Viridian」あたりは白い吐息が漏れそうだ。またこのバンドは、ピアノやバイオリンなどのオーケストラがとてもいい味を出していて、曲の後半に非常にダイナミックな仕上がりとなっているのも印象的。なかでも#10「February Lifesaver」はそれが顕著に現れた名曲で、素晴らしいラストとなっている。

繰り出されるサウンドが異国の幻想的な景色を連想させるので、海外のアーティストかと思っていたが、日本人ユニットだということに驚いた。多くの方が感じているように、Sigur Rosやmumといった、アイスランド出身バンドが作り出す冷気を感じさせる、国内では貴重なアーティストだと思う。

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