「HEART STATION」(2008) / 宇多田ヒカル

レビュー
1.Fight The Blues
2.HEART STATION
3.Beautiful World
4.Flavor of Life (Ballad Version)
5.Stay Gold
6.Kiss & Cry
7.Gentle Beast Interlude
8.Celebrate
9.Prisoner of Love
10.テイク 5
11.ぼくはくま
12.虹色バス
13.Flavor of Life (Bonus Track)

深化していくクリエイティヴ性

前作「ULTRA BLUE」から約二年の期間を経てのリリースとなった、5枚目のオリジナルアルバム。デビューしてから年々増している宇多田ヒカルの安定感と存在感を、前作以上に感じさせた作品。やりたいことをやりながらもキャッチーにまとめてくる完成度の高さに、相変わらず感心させられた。このアルバムには、映画”エヴァンゲリオン”の主題歌「Beautiful World」や、ドラマの主題歌「Prisoner of Love」など大きなタイアップが存在するが、これをきっかけに宇多田ヒカルの存在が世間に再認識されたのではないだろうか。再評価と言っては大げさだが、CMのタイアップも含め世間に彼女の楽曲が終始流れている環境が生まれたのは良かった。

自由奔放な彼女の歌声やコーラスに惹かれるのは当然だが、細かいことを抜きにして単純にサウンドが気持ちいい。透き通るような美声とともに、技巧の凝らされた近代的なメロディ・アレンジで、クリスタルのような輝きを魅せる。中でも2#「Heart Station」の、辺りを覆うかのようなシンセの音がたまらなく心地良いし、#6「Kiss&Cry」のコミカルな音の使い方は、他のアーティストには真似できない芸当だろう。名曲#3「Beautiful World」はタイアップを意識してか、大きなプレッシャーの中で作られたそうだが、その気概が伝わる素晴らしい曲に仕上がっている。全体的に前作同様、緊張感が漂う作品に仕上がっているが、後半に#11「ぼくはくま」、#12「虹色バス」といった肩の力が抜けた微笑ましい楽曲が配置され、締められていく。

前作から作風が変わり、宇多田ヒカルのセンスの良さと引き出しの多さに驚いたが、才能の枯渇を感じさせない本作にも、ある意味驚かされた。R&Bは薄くなり、曲の質を重視した作品なので、サビだけで良し悪しが分かるような作品ではない。そういう意味で、前作が好きな方は間違いなくハマると思う。現時点での彼女の代表作として自信を持っておすすめできるアルバム。

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