地下世界という舞台を、意思の強さで彩る
2001年にPS2で発売されたダンジョンRPGの隠れた名作。そのサウンドトラックである。
もともとは音楽の良さに惹かれて手にとったゲームのため、プレイしながらも音楽の方に夢中になってしまい、結局我慢できずにサントラを買ってしまった。結果的にこのゲームに関しては音楽を聞いている時間のほうが圧倒的に長かったように思う。それほど大好きなサントラである。勿論ゲームもお気に入りなのだけれど。
このゲームは地下世界が舞台、物語もなかなかにダークで、難易度が高くて緊張感漂う雰囲気ということも有り、人を選ぶゲームだと言われている。現実で言う労働者階級に属する主人公”リュウ”が一人のか弱い少女”ニーナ”と出会い、その少女を救うため、禁忌である空(外の世界)を目指す、というのが本作の軸となるストーリー。その廃退的なフィールド、絶望的な立ち位置にいる主人公の心情を、大仰といえるほどの表現と繊細な音色で表現している、というのが今回の音楽の印象である。その繊細さは、もはや錆びた金属の臭い、湿った土の質感が感じられそうなほどである。
音楽制作は崎元仁がメインで担当。オーケストラに電子音楽を取り入れた、まるで映画のワンシーンのような壮大で大胆な作りの曲の数々は、本作とうまくリンクしている。特に戦闘シーンでの迫力ある音楽は、リュウの意志の強さ、プレイヤーが感じる”ここで負けてはいけない”という焦りを掻き立たせる。フィールドの音楽も素晴らしく、印象に残る曲だらけ。レンジャーとしての仕事をするために突き進む「リフト」、物語終盤を感じさせるダンジョン「電力供給ビル」など、物語の進み具合が曲にうまく反映されている気がする。
そして本作での曲で特に人気の高い「ちいさな旅立ち」。これからどうすればいいのかという絶望感な立ち位置の主人公の心境を表すと同時に、か弱い彼女をこれから守っていくという力強い意思も感じさせる、ピアノ主体の旋律が涙を誘う名曲。
明るい兆しが見えない中、果たしてこのゲームの登場人物で幸せになれる人間はいるのか。その世界での規範や秩序に抗い、絶望的な戦いを繰り返すこの物語は、悲しい出来事の連続だが、最後の最後には、それこそ最高のカタルシスを感じる素晴らしいエンディングが待っている。その場面を担当するのが、本作のテーマソングである鬼束ちひろの「Castle Imitation」である。
今までのブレスオブファイアシリーズと比べると、世界観が別物で、今まであったシステムが無くなったりと賛否が別れ、おまけに一般ウケしにくそうな世界観なども相まって、なかなかに窓口が狭い作品。しかも物語を進めるほど苦しくなるのでゲーム自体も人に薦めにくい。しかし、その切なく苦しい雰囲気を、音楽でここまで美しく壮大に表現してくれたお陰で、最後までプレイする気力がわいたものである。個人的には音楽ありきのゲームだったが、エンディングまで辛抱強くプレイすれば、”出会ってよかった最高のゲーム”に心変わりすると思う。音楽ともども是非手にとって頂きたいゲームである。
トラックリスト
Disc1
- ブレス オブ ファイア V ドラゴンクォーター ~オープニングアニメーション~
- はじまり
- やさしい友だち
- レンジャー基地
- 下層地区
- リフト
- そらをみにいく
- 勝利のうたげ
- バイオ公社
- オリジン
- 襲撃
- 廃物遺棄坑
- 強敵
- ちいさな旅立ち
- 最初の決心
- 最下層区街
- 世を統べるもの
- かなしい思い出
- まえぶれ
- 危機、せまる
- 工業区
- かなしい色
- くるおしい心
- きざし
- 後悔はない
- やすらぎ
Disc2
- 中層区街
- 放棄商業区
- トリニティピット
- おもかげを残して
- ライフライン
- 上層区街
- 電力供給ビル
- 一瞬のよろこび
- 中央省庁区
- 遠い呼び声
- 再会のとき
- あすを見失う
- 封印
- エンディング
- Castle・imitation (BREATH OF FIRE V DRAGON QUARTER)
- 銀の音色
- 掘れば掘るほど
- ほほえんでいこう
- ココン・ホレ
- プロローグ
- 正しき道
- 今をぬけだして
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