「Vulgar」(2003) / DIR EN GREY

レビュー

2015年現在に至るまで、様々な”痛み”を生々しく、時にはグロテスクに表現してきた異色のロックバンド。ライブでは身体を傷めつけることも厭わない、もはや見ているこっちが顔を引きつらせてしまうほどのパフォーマンスを見せる。

そんな独特な表現力が魅力の彼らだが、新作がリリースされるたびに注目されるのは、その音楽性の行方。作品がリリースするごとに表現方法が変わるためである。そのため個々の作品に優劣は無いが、『Vulgar』は特に評価が高い作品ではないかと思う。

地を這う和風ニューメタル

前作『鬼葬』辺りから、いよいよヴィジュアル系路線から脱却し、表現力、サウンドが破竹の勢いで進化しているのが感じられたDir en Grey。『鬼葬』は、ひとことで言うとエログロな内容で、狂気すら感じる背徳的な作品だった。

一方本作は、よりサウンドの重量感が増しており、海外のニューメタル勢から影響を受けたようなバンドサウンドに圧倒される。メンバーが本作を表現する際、「墨汁のついた太い筆で塗りたくったような作品」…のようなことを何処かで言っていたような記憶がある。直線的で突進力がありながら深みも感じさせる本作にはピッタリの表現である。

まずは#1「audience KILLER LOOP」から#3「INCREASE BLUE」辺りまで、ライブ映えしそうな迫力のある曲で一気に畳み掛ける。

その後、7弦ギターを駆使した本作中最も重たいサウンドで狂い回る#13「Obscure」、絶叫中心で駆け抜けるシングル曲#14「CHILD PREY」など、一聴でのインパクトは相変わらず大きい。

ただ、こうやって荒々しく表現していても、所々にしっとりとした”和”のテイストを組み込んできたり、綺麗な京のヴォーカルのサビが印象的だったりと、決してやかましいだけの作品ではないことは付け加えておきたい。#5「砂上の唄」#9「かすみ」に関してはその証左と言える。

彼らの曲は癖があって聴きづらいものが多いが、だからこそ好きだったりする。

一曲の中でも聴きどころは多く、一秒たりとも聴き逃すまいとじっくり聞き込みたくなる。…それが彼らの音楽の魅力ではないだろうか。

トラックリスト

  1. audience KILLER LOOP
  2. THE IIID EMPIRE
  3. INCREASE BLUE
  4. 蝕紅
  5. 砂上の唄
  6. RED…[em]
  7. 明日無き幸福、呼笑亡き明日
  8. MARMALADE CHAINSAW
  1. かすみ
  2. R TO THE CORE
  3. DRAIN AWAY
  4. NEW AGE CULTURE[
  5. OBSCURE
  6. CHILD PREY
  7. AMBER

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