「Turn on the Bright Lights」(2002) / Interpol

レビュー

黒いスーツを着こなした紳士的なルックスで、闇夜を駆け抜けるような演奏で不穏な空気感を醸し出し、クールすぎる楽曲を数々生み出してきたバンド…。それこそがInterpolである。

正直、彼らの演奏で作り出される楽曲は、予備知識がないと退屈に感じてしまいそうなほど淡々としている。

しかし、そんな彼らの渋みの効いた音楽にカッコよさを見出だせたなら、きっとあなたはこれからポップな音楽が退屈に感じてしまうかもしれない。

聴くごとに病み付きになる、不穏な空気をまとった代表作

そのダンディーな歌声と、暗い世界観も相まって、常にジョイ・ディヴィジョンの名前がついてまわるバンドでもあり、同時にポストパンクというジャンルの正当な後継バンドでもある。特に2002年にリリースされた本作は、ポスト・パンク・リバイバルの直接的なきっかけを作った、00年代を語る上での重要作と言える。

1997年にアメリカ・ニューヨークで結成されたInterolだが、本格的にこのバンドの人気に火をつけたのはイギリスである。そもそもイギリスは、ニューウェイブを目の前で経験してきたのだから、いち早く見出すことができたのは当然ともいえる。

そして00年代といえば、彼らのようにイギリスの音楽文化に影響された米国バンドが英国で花開いた、というケースが非常に多く見られ、彼らはその一員として活躍。(他にも代表的なバンドはストロークス, キラーズなど)。イギリスのロック文化の影響力、また音楽に対する寛容さを改めて感じさせた年代と言えよう。

さて、現代のポスト・パンクの代表作とも言える本作だが、闇に覆われた雰囲気とともに緊迫感のある演奏がとにかく印象的。4人それぞれのパートの主張も強く、これらの数少ない音で技工を凝らし作られたような、壮大な曲展開が美しくもあったりする。

特にギターの音色は、夜の空気を切り裂くヘッドライトのような鋭さを持ちながら、一方で街灯の明かりのような暖かみもあったりと、特に耳に残る。

ベースとドラムはそれぞれが力強く支えあいながらも、疾走感を持ちあわせていてカッコいい。そしてイアン・カーティスばりの太い歌声を披露するヴォーカルは、呪術師のように禍々しい。それぞれのパートが織りなす彼らの演奏は、聴くごとに病みつきになる。

いきなり不穏な音色で始まるインスト#1「Untitled」から引きずり込まれ、名曲#2「Obstacle 1」で早くも虜に。以降も#4「PDA」#9「Roland」といった、”これぞポスト・パンク”といった疾走感のある楽曲が続く。やはりこれらはクールさが際立つが故に単純にカッコいい。

他にも、ギターの音色を際立たせた楽曲も魅力的である。流麗なギターが印象的な#3「NYC」を始め、震えるようなギターサウンドが不気味でもある#6「Hands Away」は、暗闇で灯る蝋燭の灯を思い起こさせる幻想的なものばかり。

一見冷めていて、じっくり耳を傾けないと多くのリスナーが素通りしそうなバンドではある。もっと言えば彼らのこの音楽性は、以降のアルバムでも驚くほど変わらない。そのテクニカルな演奏、モノクロ感のある暗い雰囲気、技工を凝らした美しく壮大な展開は、ニューウェイブ・ポスト・パンクを通過してきた耳には懐かしさを、現代の若者には新しさを感じさせるはずだ。

新旧のリスナーが本作を聴いて新たな時代を感じたことだろう。実際、”ポスト・パンク”は00年代の重要なキーワードとなり、多くのフォロワーが出現した、不穏な空気をまとった名作である。

トラックリスト

  1. Untitled
  2. Obstacle 1
  3. NYC
  4. PDA
  5. Say Hello To The Angels
  6. Hands Away
  1. Obstacle 2
  2. Stella Was A Diver And She Was Always Down
  3. Roland
  4. The New
  5. Leif Erikson

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