結局行き着くのは始祖の存在なのかもしれない。
1974年にリリースされた『Autobahn』で電子音楽の道を切り開いたKraftwerk。そして彼らの影響を受けた数多くのアーティストが次の時代を作り、様々なジャンルへと派生し、電子音楽は進化し続けてきた。
普遍的なテクノ
そんな流動的なシーンに、約17年ぶりとなる新作『Tour de France Soundtracks』を投入した。
『人間解体』しか聴いていなかった身としては衝撃的というか、クラフトワークのイメージを大きく変えさせられた作品である。
本作を知ったきっかけは#2「Tour de France Étape 2」を聴いたことによるのだが、ここまで心地よいサウンドをすんなり聴かせることができるグループだったのか、と驚いたものである。
そして往年の冷めた雰囲気も手伝って、非常にクールな仕上がりの作品となっている。正直、テクノを知らない人に最初に聞かせてもいいと思うほど聴きやすいし、カッコいい。
本作は、有名な自転車競技”ツール・ド・フランス”が100週年を迎えたことを記念して制作されたもの。Kraftwerk自身もサイクリングを体力づくりの一環で行なっていた時期があったらしく、1983年にはシングル「Tour de France」をリリースしている。
本作ではその曲がリメイクされ、#1「Prologue」から#5「Chrono」にかけて組曲として収録されている。それ以降も、浮遊感のある心地よいサウンドを優しく、そしてクールに鳴らし続けている。
ケミカル・ブラザーズやアンダーワールドなどのクラブアーティストが人気を集める中、それを尻目に完全にインドアなテクノの世界観を貫いた本作。初期の始祖としてのテクノから、洗練された現代のテクノに進化し、古臭さを微塵も感じさせないのが素晴らしい。
フワフワと漂うシンセの気持ち良さと、ヴォーコーダのカッコ良さが引き出された、クラフトワークの新たな名作。今後、長く聴き続けることにも耐えうる普遍的なテクノの傑作として、多くの人に勧められる作品だと思う。
トラックリスト
- Prologue
- Tour de France Étape 1
- Tour de France Étape 2 (Continued)
- Tour de France Étape 3 (Continued)
- Chrono
- Vitamin
- Aéro Dynamik
- Titanium
- Elektro Kardiogramm
- La Forme
- Régéneration
- Tour de France
※赤マーカーはおすすめ曲
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