自然に還る、静謐で壮大なアンビエント
Hammockの1stアルバム。耳に心地よいエレクトロニカのサウンドを中心に繰り広げられる本作の世界観は、聴くたびに広がっているような気がする。サウンドが耳に飛び込んできた瞬間、我々の目に映る景色は一変し、辺りが海や自然で覆われ、パッと視野が水平線の彼方まで広がっていくように感じられる。本作はまるで、海岸から望む果てしなく広がる海を作ろうとしているかのようだ。
水のせせらぎや鳥のさえずり、木々が風ではためく音といった環境音のサンプリングは一切入っていないにもかかわらず、そういった自然の生きる姿がありありとこちらに伝わってくる、アンビエントな音楽。これは、耳元を通り抜ける神秘的なエレクトロサウンドや音色、さらには優しく響き渡るギターの音色の美しさが作り出したものに他ならない。本作は、人工的に自然の「生」をくっきりと表現しているのである。他にも、女性がコーラスを交えた楽曲もあるため、聴き手はうっとりしてしまい、心地よい眠気に誘われてしまうことだろう…。この静謐さと世界観は、綺麗な音をただ並べただけではまずできない。
アルバムのどこを切り取ってもそういった自然や絶景を望むような、アンビエント風のモノが満載なため、どの楽曲も甲乙つけ難いほどに統一感がある。しかし、その中でも特筆したい楽曲が②⑦⑩。この三曲は特にメロディの親しみやすさが秀でていたため、他の楽曲とはやや印象が異なって聴こえてきた曲である。因みにハンモックは、静謐さとギターの混ざり具合などから、シガーロスと共通する部分が多い。シガーロスが好きならば、こちらも一聴の価値は十分にあると思う。
トラックリスト
- Before the Celebration
- The Air Between Us
- Through a Glass Darkly
- Blankets of Night
- Winter Light
- Miles to Go Before Sleep
- Wish
- Overcast / Sorrow
- Glacial
- Kenotic
- Stars In the Rearview Mirror
- You May Emerge From This More Dead Than Alive
- What Heaven Allows
- The Silence
- Dawn Begins to Creep
- Rising Tide
※赤マーカは、おすすめ曲
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