不遇とも言える”最後のシューゲイザー”
Adorableの1stアルバム。当時シーンを圧巻していたクリエイションから出されたこの作品も、所謂シューゲイザーとして語られている作品である。92年に①がヒットし、その後にもシングル⑥⑦を発表。そして本作は待ちに待ったフルアルバム、…といくはずだった。しかし、シューゲイザーシーンに飽食気味だった当時のリスナーとメディアにとっては、”時代遅れのサウンド”という印象しか持てず、バンドは随分と冷ややかな目を向けられていたという。そのため当然ながらまともな評価が与えられることは無かった。さらに後年のクリエイションに至っては、このバンドの存在を無かったかのように扱おうとしていた、というのだから恐ろしい。
特徴はシューゲイザーに共通するサイケデリックサウンド、気だるさを持ったヴォーカル。ただアメリカで巻き起こっていたグランジにも共通する疾走感も内包している。しかしその中でも①は非常にシューゲイザーらしく、バックのサイケデリックな轟音に甘いメロディとヴォーカルが重なって、とても夢見心地な一曲に仕上がっている。後半の焦燥感もたまらなく、とにかく①は必聴。しかしこの曲に限らず、どの楽曲を聴いていても気分が高揚してしまう辺りは、他のバンドと違うアドラブルの特徴と言ってもいい。彼らは確かにブームの音を鳴らしていたが、やはり別のところに目線を向けていたといわざるを得ない。
グランジ・パンク直系の③などの厚みのあるサウンドや、余計な音を排除したアコースティックな⑩があったりと本作でのサウンドの幅は広い。この作品を聴くたびに思うのが、もう少し後にこの作品をリリースしていれば、こんな曖昧且つ適当な扱いは受けなかったかもしれない、ということ。そういう意味でも、時期的に最悪のタイミングで出された、隠れた名作であると言える。
トラックリスト
- Sunshine Smile
- Glorious
- Favorite Fallen Idol
- A to Fade In
- I Know You Too Well
- Homeboy
- Sistine Chapel Ceiling
- Cut #2
- Crash Sight
- Still Life
- Breathless
- I’ll Be Your Saint
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