凍てついた質感で作り上げられた万華鏡サウンド
Lushの1stアルバム。バンド初のオリジナルアルバムとなった作品で、同時にシューゲイザーというジャンルにおける代表作のひとつ。
本作の妖艶なサウンドを聴くとどうしてもコクトーツインズの名前を出したくなるが、同じ4ADというレーベルで且つ、彼らによるプロデュースであるということからも、このバンドはコクトーツインズの純粋なフォロワーであると言うことができる。
天に高く舞いすぎたコクトーツインズのサウンドを継承しつつ、ギターを掻き鳴らして作り出した音の壁が辺りの景色を飲み込む、独自のサウンドを展開。…まさに時代を象徴するサウンドを鳴らしていたバンドだったのである。
まるで氷の城でも組み立てているかのように冷たい質感のサウンドは、常に危うい美しさを放っている。ギターのメロディは、クリスタルのように輝いており、透き通っている。
そして何よりも、女性のツインヴォーカルのセンスが光っている。世界を悲観するように歌い、コーラスするヴォーカルは、まるで一国の皇女が天を仰いで泣いているようにも聞こえてくる。それほどに細くて耽美な歌声は、エリザベス・フレイザーを彷彿とさせ、高貴な雰囲気を醸し出すには十分だった。
そして流麗なメロディの後ろで、耳鳴りのするほど激しく掻き鳴らされたギターサウンドが楽曲に違和感なく被さり、それによってリスナーは最高のカタルシスを得ることができる。
他のシューゲイザーバンドと比べると、”妖艶”一辺倒で覆い尽くされた感のある本作だが、舞い散る花のような女性ヴォーカルと、広がりのある冷たいメロディを中心に構成されたサウンドは、意外にもこのジャンルの特徴をよく表しているように思う。
そのため、シューゲイザーの隠れた魅力を引き出した作品とも言え、以降のバンドへの影響力も容易に想像できるアルバムである。
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