「A Storm in Heaven」(1993) / The Verve

レビュー

The Verveの本性

The Verveの1stアルバム。名作「Urban Hymns」とはかけ離れたサウンドを繰り広げており、バンド初期の力強さが表れたサイケデリックなアルバム。いわゆる歌モノはほとんど存在せず、ひたすら音の波に身体を委ねていくような作品なので、「Urban Hymns」とは別物と考えてもらっても構わない。

特徴はなんといってもニックが作りだす音の壁の如きギターサウンドと、反響する美しいメロディとの対比による、壮麗な世界観。もう一つは、もはやサウンドの一部と化しているリチャードの囁きヴォーカルである。

本作では厚みのあるサウンドとは裏腹に、静かな炎を湛えたバンドの心情を垣間見ることができ、 ブリッドポップというよりはシューゲイザーに近い。流し目で世の中を見渡すようなクールさがあり、タイプは違えど他の作品に劣らないアルバムと言える。

この作品を聴いて連想するのが海岸。寄せて返すような穏やかな起伏をもった曲展開は、まさに波である。潮の満ち引きを足元で感じながら、砂浜から海の荒波ををぼんやりと眺めている・・・そんな様を連想させる。それはもはや海をイメージして作られのではないかと思えてくるほど。 もちろん聴く人によって印象は違うだろうが、美しい絶景が連想されることは間違いない。

先行シングルの②と⑧こそ馴染みやすい曲だが、他の曲は音を身体に染み込ませて恍惚に浸るような楽曲ばかり。

書いたように大ヒットした「Urban Hymns」とは大きく路線が違うので、そこを理解して聴いてもらいたい。 同時期にブームになっていたシューゲイザーとの共通点を大いにに感じさせる作品であり、ヴァーヴの本質を知る上での重要作であると言えそうだ。

The Verve / A Storm in Heaven
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