シアトルでグランジ・ロックが隆盛を迎え、ロックが息を吹き返しはじめた90年代初頭。イギリスでも92年にロックの復興を告げるかのように、過激でスキャンダラスなバンドが登場する。それがスウェードである。
衝撃度で言えば彼らの作品の中ではダントツと言える本作。眠りかけていた英国ロックシーンに強烈なインパクトを与えた、90年代の名作。
英国ロックシーンを叩き起こした衝撃的作品
禁忌とされていた事柄をふんだんに用いたブレッド・アンダーソンによる過激な歌詞と、気持ち悪いほどねちっこくて中性的な声。”歌うかのよう”と評された、バーナード・バトラーによる華やかなギターサウンド。
ザ・スミスからヒントを得たと思しき音楽性は、退廃的で過激、そしてエロティックで美しい。この異様な世界観は、スウェードたらしめる部分である。このような音楽性でシーンに現れたのだから、当時の衝撃といったら想像に難くない。
本作は、シングルとしてリリースされた#1「So Young」、#2「Animal Niterate」、#6「The Drowners」の出来と存在感が圧倒的。ブレッドが艶やかにサビを歌い上げる横で、歪んだギターがまるでコーラスのように絡みつくのが心地良い。
一方、繊細な音色で紡がれる#3「She’s Not Dead」、#7「Sleeping Pills」、#8「Breakdown」といったスローナンバーは、リスナーを眠りに誘うかのような優しさをもち、リスナーに小休止を促す。禍々しさの強い本作において、本作がここまで支持されているのは、相反するこのような楽曲が間にはまされているからだと感じた。
2001年の解散までに5枚のアルバムを世に送り出したが、本作が最もスウェードの音楽性を表しているのは間違いない。
ちなみに、サウンドの核を担っていたバーナード・バトラーは、次作「Dog Man Star」の制作を最後にバンドを脱退。未だにバーナード・バトラーが在籍していた時こそが真のスウェードだ、という声は根強く、私もその一人だったりする。もちろん3rd以降の作品も素晴らしいのだが、やはりスウェードの音といったら、本作か2nd「Dog Man Star」である。
トラックリスト
- So Young
- Animal Nitrate
- She’s Not Dead
- Moving
- Pantomime Horse
- The Drowners
- Sleeping Pills
- Breakdown
- Metal Mickey
- Animal Lover
- The Next Life
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