「Doubt」(1991) / Jesus Jones

レビュー

90年代初頭という、ロックシーンが地殻変動を起こしている時期に、その隙間を縫うように現れたバンド。本作は、彼らが世界的な人気を確立した2ndアルバムである。

“デジタル・ロック、ビッグビートの先駆者”という言葉で片付けられることも多く、またメンバーのルックスやファッションに関する話題性も強かった彼ら。そんな彼らの名作をレビューしていく。

デジタルロックの先駆者としてのサウンド

話題性が先行した一方で、時代を反映したサウンドをポップに消化して鳴らしていたという印象が強く、その割にはどのジャンルの括りにも入れない彼らの不思議な存在感。その異質さは、シーンからは浮いていたと感じるほど。

本作は、#5「Right Here, Right Now」#7「Real, Real, Real」のヒットも手伝い、最もポップ性を感じさせる作品であり、世界中で大ヒットを記録。

アルバム冒頭の#1「Trust Me」では、分厚いギターサウンドとシンセとの絡みつきによる火花散るサウンドで、時代を超越したかっこよさを感じるが、#3「International Bright Young Thing」、ヒット曲#7「Real, Real, Real」などの時代感の強い古臭い音使いが魅力的。

このように当時の音楽シーンの空気感をダイレクトに味わえる作品であるともいえる。

ロックシーンの間に挟まれた存在

シンセが大げさなほど取り入れられたニューウェイブ時代の音作り、グルーヴ感を強く持たせたマンチェスター系列のノリで一世を風靡したかれらは。ケミカル・ブラザーズらの先駆的存在といえ、ミクスチャーの先駆けのようでもある。

日本においても、90年代に活躍した音楽プロデューサー(小室哲哉など)は、彼らの影響を少なからず受けているんじゃないだろうか。

既存の音楽の影響を強く受けつつ、さらにそれをポップに消化させて大ヒットを収める・・・。今考えると高いポテンシャルをもったバンドだったんだと感心してしまう。

しかし、しばらくしてロックシーンにはオルタナの波が押し寄せ、ブリットポップの波が押し寄せ、持ち味のクラブサウンドも、ビッグビートとして後継のバンドが大ヒットを記録していく・・・。

事実、大ヒットの本作以降、売上は一気に落ちてしまったと言う。ジーザス・ジョーンズは、なんとも損な立ち位置にいるバンドだなぁと感じてしまった。

トラックリスト

  1. Trust Me
  2. Who? Where? Why?
  3. International Bright Young Thing
  4. I’m Burning
  5. Right Here, Right Now
  6. Nothing to Hold Me
  1. Real, Real, Real
  2. Welcome Back Victoria
  3. Two and Two
  4. Stripped
  5. Blissed

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