「Nowhere」(1990) / Ride

レビュー

シューゲイザームーブメントの旗手

シューゲイザーといえばMVBだが、それと双璧を成す存在といえばライドである。本作はライドの1stフルアルバムにして、シューゲイザームーブメントの旗手となった偉大なる名盤。20歳そこそこの若者が、疾走感あふれる蒼い雰囲気や空間を覆いつくすギターサウンドを駆使し、青春の甘酸っぱさをクールに表現した素晴らしい作品。

大手インディレーベルのクリエイションから大型新人バンドとして自信をもって送り出された彼らは、「Ride EP」(赤ライド)、「Play EP」(黄ライド)を発表し、まだ1stアルバムをリリースしていない時点で早くも注目される。その後、満を持して発表されたこの作品で人気爆発。

耳を劈くフィードバックノイズ、洪水と形容される轟音の嵐、嘆くように歌うヴォーカルに重なる美しいコーラス…。そんなサイケデリックなライドのサウンドは「ドラッグの手を一切借りずに創るエクスタシー」と評された。脳内をノイズが飛び交うような錯覚はまさにエクスタシーであり、ジャケットのような波のうねりを存分に感じさせる。

私は後追いでこの作品を聴いたが、印象的だったのがリズム隊。ノイズの轟音のウラでぶんぶんとうねるベースと、柔らかい音で暴れまわるドラムは、見事に心地良さを増幅させている。つまり、このアルバムで聴けるサウンドはすべてが優しく、美しい。青春の蒼さを表現したと言うべきか。耳障りなノイズを奏でているはずなのに…である。

どの楽曲も上記の特徴を踏まえた、シューゲイザーを象徴するサウンドを鳴らしている。この作品で特に人気のある#5「Dreams Burn Down」はとにかく衝撃的だった。滑らかで優しいメロディをバラード調で聴かせていたかと思えば、突然耳が痛くなるほどの轟音が襲ってくるのが特徴で、Live映像も必見。

このデビュー作をきっかけにライドは全盛期を迎え、シューゲイザーブームは加熱していくこととなる。そしてこの1stが時代を揺るがした名作であるのは言うまでもない。

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