宇宙空間に放り出される、壮大なクラブミュージック
イギリスの兄弟テクノデュオ、Orbitalによる2ndアルバム。便宜上「Orbital 2」や「Brown Album」と呼ばれている作品だが、本来は無題である。
今やクラブミュージックを代表するバンドとなっている彼らの作品の中でも、とりわけ評価がずば抜けているアルバムで、バンドの代表曲も#3「Lush3-1」、#4「Lush3-2」、#9「Halcyon + On + On」など、多数含まれている。90年代のテクノを代表するアルバムでもあり、今でも長く聴き継がれている。
クラブの熱気を反映するような軽快で心臓を刺激するようなビートは、勿論インパクトがあるが、それ以上に印象的だったのが、周囲を包み込むような優しいメロディセンス。これが実に心地良い。
曲の構成に関しても、同じフレーズを繰り返し、躍らせることを意識したような従来の手法とは異なり、7~10分かけて空間を演出するような大曲群が、ゆったりとした大波のように次々と押し寄せてくる。
アルバムを通して聴けば、まるでひとつの曲になっているかのような統一感。・・・初見でのインパクトも凄かったが、聴けば聴くほど好きになっていく作品であり、この作品が愛されている理由もよく分かる。
上記のような性格を持つ作品であるため、じっくり噛みしめるように聴いても十分に楽しめる作品となっている。クラブミュージックとしての音楽性を持ちながらもアンビエント要素も備えているという、当時のテクノシーンからすれば、なかなかないアプローチの作品だったのではないだろうか。じっくり聞いていると、まるで宇宙空間に放り出されているかのような感覚に陥る。
同時期のビッグビートとと呼ばれるアーティスト(The Prodigy、Chemical Brothersなど)とともにテクノ四天王とも呼ばれる彼らだが、その中でも特に空間を意識した美しい作品を作り続けているバンドである。
以降の作品でも美しさとビートの強さが混在した作品を生み出し続けているが、アナログ感が強いサウンド、そしてOrbital色がよく出ている作品と言うことで、彼らに興味を持ったならば是非最初に手にとってもらいたい作品である。
トラックリスト
- Time Becomes
- Planet of the Shapes
- Lush 3-1
- Lush 3-2
- Impact (The Earth Is Burning)
- Remind
- Walk Now…
- Monday
- Halcyon + On and On
- Input Out
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