「Tertia」(2009) / Caspian

レビュー

静寂と嵐

乱暴に言ってしまうと、Caspianは、Mogwaiが得意としていた轟音サウンドを、よりメリハリをつけながらダークな世界観に仕上げたバンドだと思っている。

キラキラと美しいアルペジオにうっとりし、嵐のように襲いかかる轟音ギターサウンドで一気に目が覚める。その対比がとても魅力的な轟音インストポストロックバンドである。

ギターの音を何層にも重ねた、洪水のように流れ込むギターサウンドは、一度ハマるとなかなか抜け出せない魅力を持っている。ただ、それを魅力的に感じるには、やはり静寂との対比、曲のドラマ性が大事になってくると思う。

一曲の中で、流麗なギターサウンドで宇宙的な世界を提示したのち、中盤で一気に轟音がバーストして、カタルシスを感じさせる。寄せては返す波のような曲展開をドラマティックに聴かせることで、轟音ギターの魅力を追求。それは、このバンドの特徴となっている。

こと本作に関しては、同列のバンド(轟音インストバンド)の追随を許さないほどの魅力が醸し出されている。アルバムを通して”静寂”と”嵐”とが目まぐるしく入れ替わる展開をみせ、もはや荘厳すら感じさせるほど。

繊細な音色で緊張感あふれる世界を作り上げながらも、それを一気に壊しにかかる爆音。創りあげられた神聖な舞台を吹き飛ばしていくかのようだ。本作はもしかしたら、人が内に秘めた破壊衝動を満たしてくれるかもしれない。

ピアノの旋律が美しい#1「Mie」から始まったかと思えば、#2「La Cerva」では分厚いギターサウンドに終始覆い尽くされる。そんな嵐のような楽曲を経て、今作の目玉である#3「Ghosts of the Garden City」にたどり着く。

息が詰まる様な荘厳な雰囲気から始まり、中盤で一気に爆発する大作である。個人的に大好きなのは#8「The Raven」で、とても妖しいカッコよさが際立った、こちらも大作の一つである。

ギターの音もさることながら、それにかき消されんとドラムの音がとても力強くなっているのも魅力の一つ。それにしても音の粒が整っていて録音状態も良いのも評価が高い。同列の、いわゆる轟音ポストロックバンドは数多くいるとの話なので、Caspian以外にも色々と聴いてみたいと思う。

トラックリスト

  1. Mie
  2. La Cerva
  3. Ghosts of the Garden City
  4. Malacoda
  5. Epochs in Dmaj
  1. Of Foam and Wave
  2. Concrescene
  3. The Raven
  4. Vienna
  5. Sycamore

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