「いつか、桜の雨に…」(2000) / 松たか子

レビュー

ヒット曲「桜の雨、いつか」を収録した、松たか子の3rdアルバム。

他の作品同様、彼女の優しい歌声を活かした穏やかな楽曲で構成され、松たか子の透明感のある雰囲気がとても良く表現されている作品。

春、夏…暖かい季節を噛みしめる作品

彼女の声は、聴き手に微笑みかけているかのような優しさを持っており、ピュアな気持ちが心の奥から湧いてくるかのよう。

思うに、こういう歌声は、暖かくなり始めた初春が似合う。アルバムタイトルからもそれを感じられるし、桜の花びらが舞い、春風が雲を押し流していくような、そんな情景を想い起こさせる。

しかし歌詞を覗いてみると、憂いを含んだもの多く、ぽっかり空いた心の隙間に入り込むように響いてくる。

聴いていると寂しさが込み上げてくるが、穏やかで優しい雰囲気が光のように射し込んでくるため、最終的には、顔をほころばせて歌う彼女の姿が想像できる。

寂しさを持ちつつ、初春を感じさせ、穏やかな気持ちになるという意味では#12「桜の雨、いつか」はまさに本作を象徴している。桜の木を見上げながら過去と決別し、新たな一歩を踏み出すような、心地良い名曲。

隠れた名曲#4「夏の記憶」も素晴らしく、アルバム全体を通して”春” “新生活”のイメージが顕著に現れた本作。

桜舞い散る季節に是非とも耳に流れこんできてほしい音楽である。

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