「Technodelic」(1981) / Yellow Magic Orchestra

レビュー

時代を選ばない、普遍的な名作

テクノ創世記にシンセサイザーという武器を手にした三人は、その新しい”サウンド”でどんなことができるのか、どこまで表現できるのか、という考えに取り憑かれていたと言ってもいい。もっと言えば、そういう思いついた表現や考えをひたすら試すためにYMOというユニットを活用していたのではないか。

世間の大きな反響が逆に足枷になったり、メンバー内で不和が溜まったりして、”解散したかったけどさせてもらえなかった”などとぼやいていたそうだが、そんな心境の中でも作品を完璧に作り上げる辺り、彼らは凄いなあと思う。

また、個々の作品を聴き比べてみると、それぞれにテーマがあり、非常に考えられて作られており、突発的な発想や感情的な表現とは対局に位置しているのが分かる。

3rd『BGM』発表後、彼らが次なる境地として試みたのは、生楽器との融合。聴くものを芯から刺激するような、肉体的で力強いサウンドは、時代を感じさせない普遍性に満ちている。今聴いても全然古臭さを感じさせない。

『Technodelic』は前作に引き続き、実験的といえる作品だが、一つ一つの音にハマっていくと、ズルズルと本作の魅力に取り憑かれていく。

“ベーシストとしてのアイデンティティを失っていた”細野氏が、久々に四弦ベースを手にしたり、全生の演奏の曲があったりと、新鮮さを感じさせる曲が多い。特にメンバーの演奏力の高さがそれを後押しし、より高水準の作品に仕上がっている。

個人的に本作は、刺激的なベース音がたまらない。特に#4「Seoul Music」~#6「Taiso」辺りは、どう考えても聴きどころは細野氏のベースだと思う。他にもフワフワとしたシンセでクールダウンさせる#7「Gradated Grey」、#10「Epilogue」では、音の組み込み方が、現代に通ずる部分があり、こちらも今聴いても新鮮。

YMOがリリースした作品では異質で、とっつきにくい部分があるが、時代を先取りしたようなサウンドからは、彼らの実験の成果がありありと感じられる。2nd『Solid State Survivor』や5th『浮気なぼくら』のような歌謡テクノだけを聴いた方にも、ぜひ挑戦してもらいたい作品である。ちなみに、個人的には本作がYMOで最も魅力的な一枚である。

トラックリスト

  1. Pure Jam
  2. Neue Tanz
  3. Stairs
  4. Seoul Music
  5. Light in Darkness
  1. Taiso
  2. Gradated Grey
  3. Key
  4. Prologue
  5. Epilogue

コメント

タイトルとURLをコピーしました