繊細さと凶暴性のコントラスト
The Vinesの1stアルバム。暴力性と繊細さを持ち合わせていることから、しばしば「ビートルズmeetsニルヴァーナ」と語られる彼ら。特に代表曲⑥でのシンプルで荒々しい演奏と、繊細なメロディを主軸に優しく歌い上げる⑤を合わせて聴くと、本当に同じ心情を持った人間が歌っているのかと疑ってしまう。それほどクレイグの脳内にははいろんな感情が渦巻いており、整理することが出来なかったのだろう。ただ、コレこそがヴァインズの真骨頂。感情の二面性を大胆に表現したことでアルバムを通して情緒不安定さが出来上がり、これがリスナーの感情を大きく揺さぶるのである。
背中をさするかのように丁寧に歌い上げる曲があるだけに、相手に噛み付くような形相で歌う③や⑥にはいろんな意味で驚かされる。ギターのノイジー具合やクレイグのヴォーカルからはカートを感じずにはいられない。さらに、跳ねるようなリズムとサウンドが織り成すポップな⑧を聴けば、ますますアルバムの全体像が分からなくなる。まぁ、それが良いのだけれども。ラストの⑫は、ザクザクした穏やかなリフと、長く伸びるクレイグの叫び声がとてもインパクト大である。
ガレージロックリバイバルの煽りなのか独特の世界観が注目されたのか、デビュー作にして早くもヒットを記録した作品。クレイグの変化に富んだ感情と、耳に残るサウンドを十二分に詰め込んだこのアルバムは、彼らの代表作となっている。因みにジャケットデザインは、クレイグ自ら手がけたとか。
トラックリスト
- Highly Evolved
- Autumn Shade
- Outtathaway
- Sunshinin’
- Homesick
- Get Free
- Country Yard
- Factory
- In the Jungle
- Mary Jane
- Ain’t No Room
- 1969
※赤マーカは、おすすめ曲
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