「Vanishing Point」(1997) / Primal Scream

レビュー

ジャンル横断の末に辿り着いた脱力感

Primal Screamの5thアルバム。本作の後に、傑作「XTMNTR」「Evil Heat」と、無機質で機械的な印象を与える作品が続くが、それらと繋がりのようなものを感じさせる本作。

以前まで(特に2nd~4th)は、その作風の変貌っぷりに、繋がりなどあったものではなかったが、本作から「Evil Heat」辺りの三作は、まるで兄弟のような親密感がある。

本作から、ストーン・ローゼズのマニが加入し、次作ではMBVのケビン・シールズが加わるのだが、彼の魅力があまりにも大きかったのだろう。推測するにこの三作、彼の魅力を活かすための作風のようにも思えてくる。

前作ではクラシカルなロックを披露したが、本作ではミキシングを多用し、スタジオに篭って作られた空気が漂っている。いわゆるダブステップがフィーチャーされた作品で、バンドサウンドや打ち込みを初め、様々な音が曲の中で飛び交う。

予測不能な曲展開ながらも、強調されたリズムセクションが心地良く、彼らならではのメロディも介入。コミカルさを装いながらも、ダブ特有のクールさが際立った仕上がりとなっている。

このクールにまとめてくるセンスが個人的に大好きで、そういった意味では本作を極めたような次作「XTMNTR」の素晴らしさは言うまでもない。

キラーチューンと言える曲が無い上に、淡々としたテンションでトラックが進んでいくため、本作の存在感や人気は、他と比べると低い。しかし、カメレオンバンドの名に違わぬ、大胆な色変化(作風チェンジ)を器用にやり遂げ、センスの高い彼らの音楽性の一端をみせつけた、バランスのとれた名作といえるだろう。

トラックリスト

  1. Burning Wheel
  2. Get Duffy
  3. Kowalski
  4. Star
  5. If They Move, Kill ‘Em
  6. Out of the Void
  1. Stuka
  2. Medication
  3. Motorhead
  4. Trainspotting
  5. Long Life

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