ジャンル横断の末に辿り着いた脱力感
Primal Screamの5thアルバム。本作の後に、傑作「XTMNTR」「Evil Heat」と、無機質で機械的な印象を与える作品が続くが、それらと繋がりのようなものを感じさせる本作。
以前まで(特に2nd~4th)は、その作風の変貌っぷりに、繋がりなどあったものではなかったが、本作から「Evil Heat」辺りの三作は、まるで兄弟のような親密感がある。
本作から、ストーン・ローゼズのマニが加入し、次作ではMBVのケビン・シールズが加わるのだが、彼の魅力があまりにも大きかったのだろう。推測するにこの三作、彼の魅力を活かすための作風のようにも思えてくる。
前作ではクラシカルなロックを披露したが、本作ではミキシングを多用し、スタジオに篭って作られた空気が漂っている。いわゆるダブステップがフィーチャーされた作品で、バンドサウンドや打ち込みを初め、様々な音が曲の中で飛び交う。
予測不能な曲展開ながらも、強調されたリズムセクションが心地良く、彼らならではのメロディも介入。コミカルさを装いながらも、ダブ特有のクールさが際立った仕上がりとなっている。
このクールにまとめてくるセンスが個人的に大好きで、そういった意味では本作を極めたような次作「XTMNTR」の素晴らしさは言うまでもない。
キラーチューンと言える曲が無い上に、淡々としたテンションでトラックが進んでいくため、本作の存在感や人気は、他と比べると低い。しかし、カメレオンバンドの名に違わぬ、大胆な色変化(作風チェンジ)を器用にやり遂げ、センスの高い彼らの音楽性の一端をみせつけた、バランスのとれた名作といえるだろう。
トラックリスト
- Burning Wheel
- Get Duffy
- Kowalski
- Star
- If They Move, Kill ‘Em
- Out of the Void
- Stuka
- Medication
- Motorhead
- Trainspotting
- Long Life
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