ドイツ産シューゲイザーバンドの快作
シューゲイザーの王道を貫きながら、現代的な味付けで新鮮さを醸し出しているMalory。本作は2010年リリースの4thアルバムで、恐らく彼らのキャリアでも快作に位置づけてもいい作品である。
マロリーは、90年代中期から活動をしているようで、そこそこ長いキャリアを持つ。彼らの紡ぎだす音はシューゲイザーそのもので、とりわけスロウダイブの面影が色濃い印象である。神々しいフィードバックノイズ、粒立ちの良い洪水ギター、水平線の彼方へ消えていきそうな心地よいメロディー、男女混合の気だるいヴォーカル…。シューゲイザーのエッセンスをコレでもかと詰め込み、その魅力を存分に伝えてくれる、ネオ・シューゲイザーを象徴するバンドの一角である。
今までの作品は、ドローン、アンビエント色が強く、いわば雰囲気を重視している印象だった。しかし本作は、わかり易い曲展開やキャッチーなメロディがあって、非常に聴きやすい。バンドサウンドのみならずエレクトロ要素もふんだんに取り入れられており、バンドという形態を超えた幅広い音作りも魅力的。
#1「Floating」の心地よいイントロから段々と音が重なっていく感じが特に好きで、本作を知る切っ掛けとなった曲でもある。#2「The Sign」は、シュワシュワとした心地良いギターノイズがインパクト抜群で、シンプルで聴きやすい曲。後半の荒々しい畳み掛けはもはやシューゲイザーの定番で、恍惚となる。#10「Ajar Door (Live Version)」は8分に及ぶ大作だが、フワフワと海洋を漂う心地よさと、嵐に変わる豹変ぶりが交互に押し寄せる、もはや永遠に聴いていられる曲である。
今のシューゲイザーはこうなっているんだぞと、ネオ・シューゲイザーを語る上での指標の一つになりえる作品かもしれない。また、電子音楽の活発なドイツのミュージシャンらしい作品だとも思った。音による味付けも濃すぎず、雰囲気重視で作られているのも高評価。今後特に注目したいシューゲイザーバンドである。
トラックリスト
- Floating
- The Signs
- Cache
- Water In My Hands
- Pearl Diver
- Back to the Point (I’ve Started From)
- Dragon In You
- Secret Love
- Tornado
- Ajar Door (Live Version)
- Sarah (3 Parts)
- Take Me Down Pt.2
- Space in Mind 2009
- Trans Europe Express
※赤マーカは、おすすめ曲
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