「Angel Dust」(1992) / Faith No More

レビュー

広すぎる感性が生み出した最高純度のミクスチャー

FNMの4thアルバム。ミクスチャーと区分されるバンドの中でも、最も強烈な個性を放つグループではないだろうか。このバンドはメタルを下敷きに、多方面から音楽性やサウンドなどを取り込み、曲ごとに見事なほどバラバラな音楽性を持つ。にも関わらずこのアルバムにおいては、非常に良くまとまっている印象をうける。

バラエティ豊かというのは、乱雑になりがちなのが玉にキズだが、本作はそれを感じさせないのである。本作が評価されている部分はおそらくそこなのだと思う。もちろん一箇所のテリトリーで落ち着いているわけもなく、ノーテンキにはっちゃけ、静まり返り、激昂したりと忙しなく暴れ、バンドの個性と魅力を高い濃度で煮詰めた内容となっている。

本作においては特にそれぞれの楽曲の個性が強いにもかかわらず、まとまりがあるのは、個々の楽曲のクオリティの高さに他ならない。気の緩みがどこにもない緊張感がそれを裏付けており、つまるところ、余計な音や楽曲が極力排除された結果なのだろうか。

そしてなんといっても個々の演奏が作り出すサウンドの魅力によるところも大きい。ずっしりと重いギターリフにスラップベース、骨太な音を叩き出すドラム、そしてマイク・パットンの変態的と評されるヴォーカル。そんな彼らの魅力が最も味わえるのが、おそらくこの作品なのである。

…にしても、やっぱりマイク・パットンのヴォーカルはいろんな意味で衝撃的。激昂やダンディズム、ラップなどを織りまぜた、彼の声は必聴に値する。余談だが、メンバーは自分たちのサウンドを、「ラップメタル」と称したというが、後のラップメタルとは比べ物にならないほど強烈な個性を放つFNM。この骨太で実験的で変態的な名作は是非とも耳にして欲しい。本作は90年代の名盤の一つである。

トラックリスト

  1. Land of Sunshine
  2. Caffeine
  3. Midlife Crisis
  4. RV
  5. Smaller And Smaller
  6. Everything’s Ruined
  7. Malpractice
  8. Kindergarten
  1. Be Aggressive
  2. A Small Victory
  3. Crack Hitler
  4. Jizzlobber
  5. Midnight Cowboy
  6. Easy *
  7. As the Worm Turns *

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