シューゲイザーからの脱却
1994年。この頃と言えば、シューゲイザーが完全に終焉を迎え、ブリットポップが台頭してきた時期である。少なくともライドがデビューをしてブレイクを果たした時期とは大きくシーンが変わっていた。
ライドは96年までの活動期間に合計4枚のアルバムを残している。中でもデビュー・アルバム『Nowhere』は、嵐のようなギターノイズと、夢幻的な世界観で、シューゲイザームーブメントの旗手としてシーンを大いに盛り立てた。
以降のアルバムも、音楽性を柔軟に変化させた名作ばかりである。しかし時代にハマりすぎたためか、後期の作品は”らしくないサウンド”だと一蹴され、正当な評価が下されることはなかった。
3rdアルバムである本作『Carnival of Light』は、ライドにとって最も大きな転換期を迎えたアルバムだったのではないだろうか。シューゲイザーからの完全なる脱却が図られ、ギターポップ、ブリットポップに寄った作品となり、バンドの新たな方向性が示された。しかし思うように売上が伸びず、この時期からバンド内での不和が広がっていったようである。
ライドにこびりついたシューゲイザーの印象は、再評価された現在でも根強く、彼らも否定はしないところだろう。ただしその葛藤や苦労は大きいようで、音楽性が大きく変わっていった2nd以降の作品を聴けばそれがよく分かる。同時に、ファンが求めていたのは、初期の衝動性を秘めた青臭いサウンドだったということも…。
ただ、初期から順番に聴いてみるとわかるが、とても理想的な成長を遂げているバンドであると思う。アルバムを出すごとに青臭さが薄れていき、一気に成熟味を増していく。一見地味なのだが、とても味わい深いギターロックに仕上がっており、癖になるフレーズが満載。ツインギターによるの激しいサウンドや、ドアーズのような古き良きオルガンの音色、脱力したツインボーカルが重なり、荒々しいのにとても風通しが良い。身体が宙に浮いた靄がかかったような以前の雰囲気から一変、地に足を着けた視界良好な雰囲気が印象的である。
楽曲のセンスも相変わらずで、#3「From Time to Time」なんかは永遠に聴き続けていたいと思わせるほど癖になった楽曲。暖かみがあるのに冷たい質感も残っており、まるで冬のベランダでひなたぼっこをしているかのようである。これは#4「Natural Grace」も同様である。上記の2曲はお気に入りで何度もリピートしてしまった。
音が変わったことで、変化しないライドたらしめる部分というのも再確認した。例えば、前述したツインギターとクールなコーラスのコントラスト。さり気なく使われている特徴的なフレーズなど。乱暴な言い方をすると、シューゲイザーとブリットポップの間に立つ作品といえるだろう。シューゲイザーも好きだけど、OASISや、アーバンヒムズ期のThe Verveも好きだという方にはおすすめできる。
とても質の良いギターロックアルバムである。
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