新たな時代を”聴かせた”、攻撃的な傑作
ご存知、作品をリリースするごとに音楽性を変化させる”カメレオンバンド”、Primal Screamの名作。その異名が表す通り、彼らの音楽性を一言で語るのはとても難しい。しかし、シーンを感じ取る嗅覚は鋭く、常にその時代を反映した作品を作り続けてきた。『Screamadelica』に至っては、世のアシッドハウスシーンを先導するほどの力を持っていた。
そして時は移り、音楽のジャンルが大きく枝分かれをする直前の2000年。この時期に彼らが作り上げた音楽は、エレクトロを取り入れた無機質で鋭利なサウンドだった。本作『XTRMNTR』は、今までにないほどクールな作品となり、カミソリで切り刻むような機械的で冷たい質感が印象的である。
“破壊”なんて言葉もキーワードとしてチラつく、不穏かつ攻撃的な本作。政治的な言葉が多く含まれた歌詞や、ノイズや電子音が飛び交う楽曲、スピード感のある楽曲などから、そのスリリングな雰囲気を堪能できる。そして何と言っても、今まで複数のジャンルを横断してきた彼らならではの個性豊かなサウンドが極まっており、個々の楽曲も個性的で粒ぞろい。それなのに統一感を持った作品に仕上がっているのは、見事という他無い。
緊迫感の有る#1「Kill All Hippies」から幕を開け、その後爆音で襲いかかる#2「Accelerator」は色んな意味で衝撃的。ちなみに本作にはMVBのケビン・シールズが参加しており、ノイズまみれの#2に参加したことは想像に難くない。そして個人的に大好きなのが名曲#4「Swastika Eyes」。当時のPrimal Screamを象徴する楽曲と言われており、クラブやライブの定番ということもありファンからの人気が高い曲である。中盤のインスト#6「Blood Money」は、ベースとドラムが先導する芯の太い楽曲で、こちらも大好きな一曲。
個人的にPrimal Screamでは最も好きなアルバムで、未だに度々聴くことがある。ちなみに本作は商業的にも成功し、00年代の名盤としてもよく取り上げられる。そのことからも間違いなく彼らの代表作の一つで、新たな時代のサウンドを先導して鳴らすことに成功したのではないだろうか。
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