「Doolittle」(1989) / Pixies

レビュー

80年代後期に登場し、90年代ロックシーンへ多大な影響を与えたバンドとして知られるピクシーズ。本作は2作目に当たる作品であり、ロック史の重要作として語られることの多い名盤である。

日本でこそ知る人ぞ知るバンドだが、多くのバンドから影響を公言される存在のため、そこから名前を聞いたことのある人は多いのではないだろうか。

過激さとポップさの共存

ピクシーズはロックの過激な分子と、ポップの親しみやすい分子を融合させ、それをギターロックとして消化し、ロックシーンに新たな切り口をもたらしたといえる。

親しみやすいと見せかけておいてブラック・フランシスの絶叫が飛び交ったり、近寄りがたいほど刺々しいギターロックを披露しながらもキムディールの優しいコーラスでポップにまとめようとしたりする。なので当時の所見リスナーは困惑したことは想像に難くない。

おまけにメンバーがバンドマンらしくない風貌であることも手伝い、一聴では「何だこれ」となるに違いない。

デビュー時からブレない音楽性

ピクシーズのスタイルは、前作のデビューフルアルバム「Surfer Rosa」から変わらない。どうやらその音楽スタイルは、バンドメンバー募集時から構想にあったようだ。

Pixiesは創成期にメンバー募集をかけたとき、「Hüsker Dü(ハスカー・ドゥ)とPeter, Paul and Mary(ピーター・ポール&マリー)みたいなバンド」をやりたいと謳ったそうなのだが、それがそのままPixiesの音楽性を何よりも雄弁に語っている。

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つまりハードコアな側面と、フォークのキラキラした側面という、対局の音楽性の組み合わせをやりたかったことが伝わってくる。影響を公言しているハードコアパンクを取り入れながら、ポップな曲作りも意識した彼らの音楽は、当時からすると新たなロックの形と映ったに違いない。

ロングセラーを記録し、オルタナティブロック隆盛の布石へ

そのような音楽性を継続させてリリースした2枚目の本作は、シングル#2「Here Comes Your Man」、#7「Monkey Gone to Heaven」のヒットが後押しになりロングセラーを記録。オルタナティブ・ロック隆盛の土壌を作り上げた。

そこからのシーンの変革は周知のとおりだが、90年代に活躍した多くのバンドマンから影響を公言される存在となっている。中でもニルヴァーナのメンバーはファンを公言しており、特徴的な”静と動”を行き来する曲展開は、ピクシーズからの影響が強いと言われる。

ピクシーズの登場、はたまた本作のヒットが与えた影響は数字以上に大きいと言える。日本ではナンバーガールがその影響を色濃く受けた存在だろうか。90年代のロック史を知る上で外すことの出来ない作品である。

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