「The Smiths」(1984) / The Smiths

レビュー

1980年代のイギリスのロックシーンに突如現れ、短い活動期間ながら爪痕を残すような活動を行ったザ・スミス。本作は記念すべき1stアルバムである。

当時の政権批判を始め、独特な表現方法で当時カルト的人気を獲得したバンドであった。そして今もなお多くの人によって語り継がれる存在となっているが、その理由は先進的な音楽性にこそあるのではないかと思う。

甘いメロディと陰鬱な世界観

ザ・スミスのサウンドの特徴は、陰鬱な世界観の構築とジョニー・マーによるメロディアスなギター。

特に本作は終始甘いメロディがバッキングで奏でられ、そこにモリッシーの独特な歌詞と歌いまわしが組み合わさり、綺麗だけども危ういという二面性が同居した、毒々しさを感じるアルバムとなっている。

その危うさの背景には、政権批判やネガティブな歌詞、モリッシーの奇抜なパフォーマンスなどがある。そこがこのバンドの当時人気を博した要因の一つかと思う。

モリッシーが「口パクだと分からせてやる」と意気込み、グラジオラスの花束を持って出演した音楽番組

鮮烈なデビュー作

ザ・スミスは、リリースした全てのアルバムが優劣無しの名作だが、1stから既に完成されていた。

ラフ・トレードと契約した後、シングルを3枚リリースした時点で一気に知名度は上がっていった。今思えばそれがザ・スミスらしさ満点でまさに”名刺代わり”の3曲だったと思う。(#6「This Charming Man」#8「Hand in Glove」#9「What Difference Does It Make?」)そこで満を持してリリースされた本作は全英チャート2位を記録し、すぐさま成功を収めることとなった。

デビュー作にして演奏技術の高さが伺え、アルバム通してギターの音色とネガティブな雰囲気が覆っており、統一感もバッチリ。ザ・スミスらしさが最も詰まった重要作と言っても良いだろう。

UKロックシーンの指針

そのような表現手法で、わずか5~6年という短い実働期間ながら、後続のUKインディロックシーンに大きな影響を与えることとなった。

中でも、ヴォーカルのモリッシーと人気を二分した、ギターのジョニー・マーは顕著である。事実、後のUKロックシーンに登場したミュージシャンは、こぞって影響を口にする。

繊細かつメロディアスなサウンドを丁寧に奏でるギタースタイルは、テクニック至上主義派と(パンクブームの影響を受けた)コード至上主義派が存在した当時としては、とても斬新に映ったのではないかと想像する。

もちろんモリッシーの独特な歌詞と奇抜なパフォーマンスとの絡みも相まって、周りを寄せ付けない独自性を作り上げた。この陰鬱なのに耽美な世界観は、若者を中心に多くのリスナーを惹きつけたのは間違いない。

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