「In Ribbons」(1992) / Pale Saints

レビュー

飛躍する音楽センスを支える、甘酸っぱいギターと男女混合ヴォーカル

Pale Saintsの2ndアルバム。デビュー作である前作が大きく参賞されたことで、UKのアンダーグラウンドシーンはますます盛り上がりを見せたに違いない。

その証拠に、その後シューゲイザー系のドリームポップバンドによるブームが突如として訪れ、このバンドも時代の寵児となっていった。そして、そんな境遇に置かれたことでなお進化するペイルセインツのサウンド。バンドは時代の流れに沿って音楽性を大きく飛躍させていった。

ラッシュに参加していたメリエル(Vo/G)が正式メンバーとして加入したことによる女性ヴォーカルの導入、マイブラ経由の粒の粗いノイズ。本作での大きな特徴はこの二つで、これらと前作のペイルセインツと比較すると随分サウンドの印象が変わっている。

なんといっても、炭酸のはじけるように心地よいギターノイズがこうも大胆に鳴らされているのは意外だった。前作ではありえなかったアプローチだったと思う。

他にも轟音に加え、様々な楽器の音色も忍ばせて表現力が飛躍的に向上したことも伺える。しかし流麗なギターサウンドが極端にに薄味になったわけではないし、メリエルだけがマイクを支配しているわけでもない。前作の統一感のあるサウンドの安定感の上に新たなサウンドが築かれ、バンドの可能性が押し広げられている。

代表曲は疾走感溢れる#1「Throwing Back the Apple」#9「Babymaker」で、両方ともバックのメリエルのコーラスがとても心地よく、何とも神々しい。

それら以外はミドルテンポの楽曲が多く、繊細な音色を丁寧に扱う演奏がとても耳に優しい。炭酸ノイズの気持ち良さは、彼らだから出すことができる。

残念ながらセールスは伴わなかった本作だが、(タイプは違うが)前作とタメをはれる名作。お勧め。

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