「Road to Rouen」(2005) / Supergrass

レビュー

新たな到達点

Supergrssの5thアルバム。彼らはこのアルバムの制作時、身内の死やスワッピング騒動などトラブルが相次いでおり、そのことが彼らの心境に少なからず影響を与えたのだろうか。本作はアコースティックなサウンドが目立つ非常に内省的な作品となり、ファンを驚かせることとなった。デビューしてから現在までに様々な音楽性を取り入れ、アルバムをリリースする度にリスナー驚かせてきたが、今回のアルバムについては彼らにとっても最も大きな変化だったのではないだろうか。

デビュー当時の特徴でもあった元気いっぱいなサウンドはもはや皆無で、ストリングスを前面に押し出したクラシカルな楽曲がとにかく印象的である。上品で落ち着いた雰囲気を醸しだす楽曲からは、イギリス人特有の素晴らしい音楽センスを感じるとともに、バンドの成熟具合をも窺い知ることが出来る。そして最終的には、西洋の町並みが頭に出てきたり、木造のカフェの店内で演奏している様を想像させる。英国の風を音に乗せて運んできてくれた作品、とは言えないだろうか。

トラック数は9曲と少なく、時間にして約35分。コンパクトに纏まっている性質上、とてもあっさりと聴けてしまえるが、どの楽曲も所謂スルメのような味わい深い曲ばかりなため、人によってはとても永く付き合っていける作品。3rd収録の「Moving」を彷彿とさせる大胆な曲展開が印象的な①と、ピアノとアコースティックなサウンドでゆったり聴かせる②は文句なしの名曲。

地味な印象が強いため、初めてスーパーグラスを聴く人にはおススメできないが、苦肉の末に作り上げた名作であるのは間違いない。彼らが活動10周年にしてようやくたどり着いた新境地は、とても大人びたものであった。それにしても渋すぎる。

トラックリスト

  1. Tales of Endurance, Pts.4, 5 & 6
  2. St. Petersburg
  3. Sad Girl
  4. Roxy
  5. Coffee in the Pot
  1. Road to Rouen
  2. Kick in the Teeth
  3. Low C
  4. Fin

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