“みんなが二番目に好きなバンド”…メンバーは自分たちのことをそんな風に表現したこともあった。ただこの言葉は、自分たちの存在感・人気を上手く言い当てたものであるように思う。
1995年のデビューから2010年の解散に至るまで、作品を出すごとに深化を遂げていき、常に第一線で活躍してきた安定感のある活動履歴は、他のバンドマンからすれば非常に理想的なものであったと思う。
みんな大好き、愛すべきブリットポップ
英国では非常に高い人気を誇っていた大物バンドであったにもかかわらず、そんな雰囲気は全く見せていなかった(アークティック・モンキーズの前座を務めたこともある)。良い音楽だけを謙虚にリスナーに届けてくれた、とても愛すべき存在である。
そんな彼らのキャリア第一作目としてリリースされたのが本作。本作は、ヒット曲#4「Alright」が象徴するように、底抜けに明るくて元気な作品である。かき鳴らされるギターサウンド、力強いドラムとベースが芯の太い演奏を繰り広げており、アルバム内を軽快に駆け抜けていく。
そのパワフルさとスピード感は、もはやパンクロックにも匹敵するほどである。さらにオルガンの跳ねるような音色が古風なロックの味を作り出し、これが彼らの特徴の一つともなっていく。
そしてなんといっても外せないのはヴォーカルで、その野性的な歌声は胸がすくほど気持ち良い。これらのサウンドが一体となり、スリーピースながらも迫力のあるサウンドを作り上げている。
彼らは若干20歳前後という年齢で本作を作り上げ、瞬く間にブレイクを果たすこととなったが、デビュー作にふさわしい初々しさと勢いが詰め込まれており、ブリットポップ狂騒に一役買ったとも言える名作である。
ただ個人的に凄いと思っているのは、冒頭で記したとおり、安定感のあるキャリアである。なので、彼らを知った方は本作で終わらず、以降の作品もぜひ聴いてもらいたいと切に願う。特に『Road to Rouen』を聴けばきっと驚かれるに違いない。
キャリアのスタートダッシュが良かったし、その後リリースする作品はいずれも評価されてきたからこそ出来た芸当なのかもしれない。
このように、作品を重ねるごとに懐が深くなっていった彼ら。ただ、本作に関してはネガティブな感情は何一つ無く、”嫌なことは忘れてはっちゃけちゃおう!”という、ただ一点に神経が注がれている。なので本作を聴く際は難しいなど考えず、ただおバカになって愉しめばいいと思う。
トラックリスト
- I’d Like to Know
- Caught by the Fuzz
- Mansize Rooster
- Alright
- Lose It
- Lenny
- Strange Ones
- Sitting up Straight
- She’s So Loose
- We’re Not Supposed To
- Time
- Sofa (Of My Lethargy)
- Time to Go
※赤マーカーはおすすめ曲
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