隠れすぎた名バンド
Blind Mr.Jonesの1stアルバム。Slowdveのニールによる強い勧めにより、チェリーレッドからのデビューを果たした彼ら。
本作はChapterhouseやSlowdiveを手がけたクリスハフォードがプロデューサーを担当。
突如鼓膜を襲う、耳を劈くほどのギターノイズ、スピード感のある演奏、流麗で息を呑むほど美しいメロディ・・・。改めて聴くと彼らは、当時の数多といたシューゲイザーバンドの特徴を飲み込んだ、とてもスケールの大きなバンドだったんだと気づく。
とても青く、とても品があり、一方でジザメリばりのノイズを散りばめるなど、メリハリのある楽曲を披露している。
そしてサウンドのイメージを立体的にしているのが、フルート奏者(ジョン・テグナー)による音色である。この音色はシューゲイザーの悲哀や哀愁をこれでもかと引き出している。2ndアルバムでジョンは参加していないため、本作はシューゲイザーとフルートが交わった最初で最後の作品なのかも知れない。
そして、彼らも他のシューゲイザーバンドと同様、サウンドを何層にも重ね、ギターノイズに極限まで迫力と恍惚感をもたらしている。特にメリハリの聞いた曲展開が興奮を呼ぶ#1「Sister」をはじめ、徐々に音の層が厚くなっていく#9「Going on Cold」、#12「Dolores」での轟音は、もはや耳が痛いほどなのだが、これほどのギターノイズを生み出したことにむしろ感動すら覚える。
一方でリヴァーブが聞いたうっとりするほどの優しい音空間は、視界がぼやけるほどの美しさを与えてくれる。スロウダイブの影を感じさせるそのセンス、さすがニールが惚れ込んだだけのことはある。
今一度本作を聴いていたところ、その世界観、サウンドメイク、ヴォーカルスタイル、・・・いずれを取ってもシューゲイザーの教科書のように鳴り響いているではないか。シューゲイザーの隠れた名作などという曖昧な評価ではなく、シューゲイザーの代表作として紹介されてもいいのではないか、と本作を聴いて感じた。
ただ、サウンドのイメージを無視した、コミカルなジャケットはいかがなものだろうか(笑)。これではせっかくの”隠れた名作”も手にとってもらえないよ。
トラックリスト
- Sisters
- Spooky Vibes
- Regular Disease
- Small Caravan
- Flying with Lux
- Henna and Swayed
- Lonesome Boatman
- Unforgettable Waltz
- Going on Cold
- Spook Easy
- One Watt Above Darkness
- Dolores
- Against the Glass
※赤マーカーはおすすめ曲
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