「Stereo Musicale」(1992) / Blind Mr.Jones

レビュー

隠れすぎた名バンド

Blind Mr.Jonesの1stアルバム。Slowdveのニールによる強い勧めにより、チェリーレッドからのデビューを果たした彼ら。

本作はChapterhouseやSlowdiveを手がけたクリスハフォードがプロデューサーを担当。

突如鼓膜を襲う、耳を劈くほどのギターノイズ、スピード感のある演奏、流麗で息を呑むほど美しいメロディ・・・。改めて聴くと彼らは、当時の数多といたシューゲイザーバンドの特徴を飲み込んだ、とてもスケールの大きなバンドだったんだと気づく。

とても青く、とても品があり、一方でジザメリばりのノイズを散りばめるなど、メリハリのある楽曲を披露している。

そしてサウンドのイメージを立体的にしているのが、フルート奏者(ジョン・テグナー)による音色である。この音色はシューゲイザーの悲哀や哀愁をこれでもかと引き出している。2ndアルバムでジョンは参加していないため、本作はシューゲイザーとフルートが交わった最初で最後の作品なのかも知れない。

そして、彼らも他のシューゲイザーバンドと同様、サウンドを何層にも重ね、ギターノイズに極限まで迫力と恍惚感をもたらしている。特にメリハリの聞いた曲展開が興奮を呼ぶ#1「Sister」をはじめ、徐々に音の層が厚くなっていく#9「Going on Cold」#12「Dolores」での轟音は、もはや耳が痛いほどなのだが、これほどのギターノイズを生み出したことにむしろ感動すら覚える。

一方でリヴァーブが聞いたうっとりするほどの優しい音空間は、視界がぼやけるほどの美しさを与えてくれる。スロウダイブの影を感じさせるそのセンス、さすがニールが惚れ込んだだけのことはある。

今一度本作を聴いていたところ、その世界観、サウンドメイク、ヴォーカルスタイル、・・・いずれを取ってもシューゲイザーの教科書のように鳴り響いているではないか。シューゲイザーの隠れた名作などという曖昧な評価ではなく、シューゲイザーの代表作として紹介されてもいいのではないか、と本作を聴いて感じた。

ただ、サウンドのイメージを無視した、コミカルなジャケットはいかがなものだろうか(笑)。これではせっかくの”隠れた名作”も手にとってもらえないよ。

トラックリスト

  1. Sisters
  2. Spooky Vibes
  3. Regular Disease
  4. Small Caravan
  5. Flying with Lux
  6. Henna and Swayed
  7. Lonesome Boatman
  1. Unforgettable Waltz
  2. Going on Cold
  3. Spook Easy
  4. One Watt Above Darkness
  5. Dolores
  6. Against the Glass

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