「Isn’t Anything」(1988) / My Bloody Valentine

レビュー

平衡感覚が失われていく廃退的ノイズミュージック

My Bloody Valentineの1stアルバム。フルアルバムとしてはコレが一作目である。次作のイメージが強すぎるため本作に手を伸ばす人が少ないが、シーンに強いインパクトを与えたという意味ではこのアルバムも同等に評価されても良いはず。

ラブレスが足場の見えない浮遊感を表現しているならば、本作は歪んだ地面の上を必死で這い蹲るようなイメージだろうか。変則的な音や絶望感にも似た悲しいコーラス、実験的とも取れる多彩なノイズを聴いていたら、もはや音楽として成立しているかも疑わしくなってしまう。

ノイズについては、耳障りの良い包み込むようなモノ(⑥⑨)や、粒の粗い刺々しいモノ(⑦⑩)、バックで妖しく鳴り響く不協和音まがいのモノ(②⑤)など多種多様である。

暴れまわるドラミングなどもラブレスでは聴けないもので、①のオープニングに至っては鈍器で頭を殴られているような感覚である。

コンセプトをはっきりさせず、自分達の気に入ったサウンドを組み合わせたような作品にも見えるが、決して適当につなぎ合わせたわけではなく、実験的でありながら計算しつくされたとても完成度の高いアルバムである。

「Loveless」以上に大衆に理解され難いサウンドであるが、ノイズまみれのサウンドをここまで音楽たらしめた彼らの技量には、もう頭が下がる思いである。

トラックリスト

  1. Soft as Snow (But Warm Inside)
  2. Lose My Breath
  3. Cupid Come
  4. (When You Wake) You’re Still in a Dream
  5. No More Sorry
  6. All I Need
  1. Feed Me With Your Kiss
  2. Sueisfine
  3. Several Girls Galore
  4. You Never Should
  5. Nothing Much to Lose
  6. I Can See It (But I Can’t Feel It)

コメント

タイトルとURLをコピーしました