「The Dark Ride」(2000) / Helloween

レビュー

ダークだけど魅力は健在の名作

94年にヴォーカリストがアンディ・デリスに変わってから4枚目となった、2000発表の作品。個人的にハロウィンは本作で初めて聴き、それ以降もアンディ・デリスがヴォーカルの作品ばかり聴いていたので、逆にバンドの全盛期にマイクを取っていたマイケル・キスクの作品は、あまり分からなかったりする。(なんで全盛期の作品を聴かないんだ、というツッコミは置いといて…)

スコーピオンズと並び、ドイツ産ヘヴィメタル(ジャーマン・メタル)の代表格となるバンドで、その中でも現在に至るまでコンスタントに作品を生み出し続けている、バリバリ現役のバンドである。恐らくドイツでは国民的人気があるのではないかと思う。また、メロスピの元祖とも言われ、ハイトーンのヴォーカルと馴染みやすいサビ、そしてスピード感のあるサウンドは、特に北欧地方のメタルに大きな影響を与えたのではないかと思われる。

さて、そんな特徴・功績を持つバンドだが、2000年に突入してリリースされた本作『The Dark Ride』は、スピード感よりも重量感を意識した、重たいリフが印象的な楽曲が目立つ、いわゆる”異色な作品”となった。テーマとして闇や黒っぽいものをイメージしていたのか、曲から受ける印象もそのようなものが多い。ジャケットに描かれているように、まさに黒く染まったハロウィンと言った作品だった。

#4「Escalation 666」#5「Mirror Mirror」辺りは、ギターを重心を落として引いているさまが想像できるほど、スピード感が廃された重々しい仕上がり。個人的には好きだけど、おそらくファンには受け入れがたい曲ではないかと思う。シングル・カットされた#6「If I Could Fly」も哀愁漂い今までにない雰囲気を作り上げている。ただ、新たなアンセムとなった#2「Mr. Torture」、#3「All Over the Nations」は、スピード感もあって非常にカッコいい代表曲だし、#12「The Dark Ride」のような9分近くに及ぶドラマティックな曲も健在である。

こうしてみると、アルバムの前半は今までのハロウィンらしさを残しながらも黒さを見せていき、アルバムを聴き進んでいくうちに本作のダークな魅力で覆い尽くす、と言った流れを意識したのかな、なんて思ったりする。

今までのファンからは不評のようで、とても地味なイメージがついてしまっている気がするのだが、個人的には本作はお気に入りの一枚である。ヘヴィなサウンドやダークな雰囲気で新たな魅力を生み出しつつ、キャッチーなサビによる聴きやすさも残している。昔と今との魅力の共存をさせるのがとても旨いということなのだと思う。あと個人的には、本作のギターサウンドの質感がとても心地よいのもお気に入りの理由の一つでもある。

トラックリスト

  1. Beyond the Portal (Intro)
  2. Mr. Torture
  3. All Over the Nations
  4. Escalation 666
  5. Mirror Mirror
  6. If I Could Fly
  7. Salvation
  1. The Departed (Sun Is Going Down)
  2. I Live for Your Pain
  3. We Damn the Night
  4. Immortal
  5. The Dark Ride
  6. The Madness of the Crowds

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