「12 Memories」(2003) / Travis

レビュー

Travisの4thアルバム。

セルフプロデュースにより作られた作品だが、元々強かった陰鬱な雰囲気を色濃く表現したことで賛否両論が生まれた作品。

その陰鬱さは内面や社会的な部分に強くベクトルが向かっており、終始切ない気持ちにさせられる。

日常に接近した音

個人的に前作と前々作を聴いて印象的だったのは、現実逃避させるほどの美しい情景が終始浮かび上がっていたこと。それはまるで雪国に連れて行かれるようだったり、森林の紅葉を眺めているかのようだった。

しかし本作は、綺麗な情景を浮かび上がらせるような世界観が排され、我々の日常生活に急接近したような雰囲気を醸しだしている。

聴いている我々の心境に共感し、共に悲しんでくれてるような楽曲の数々。

人によっては親近感や安心感を覚えるかもしれない。おまけに曲のクオリティにムラを感じさせず、統一感をもってすんなりと聴き通すことが出来るのも強み。

細かい部分で言えば、力強いギターサウンドが差し込まれたり激しい転調をみせたりと、曲の中で感情的な演奏も目立つ。いつも通り暖かみのある歌声を聴かせるフランのヴォーカルも、心なしか涙をこらえながら歌っている感じさえある。

トラヴィス中級者向け作品?

上記のように本作ならではのサウンドを楽しめるが、とろけるような甘みがあった今までと比べると、苦味が強いので、初めてトラヴィスを聞く方にはあまりオススメはできない。

そうは言っても、語りかけるように鳴らされる優しいサウンドは顕在なので、トラヴィスのイメージはほとんど崩れていない。そのため”深化”とも”変化”とも取れる作品と言えるだろう。

このアルバムが傑作との声もあるので、トラヴィスが好きな方はもちろん、「陰鬱だけど暖かいサウンド」に興味を持った方は是非聴いてもらいたい。

トラックリスト

  1. Quicksand
  2. The Beautiful Occupation
  3. Re-Offender
  4. Peace the Fuck Out
  5. How Many Hearts
  6. Paperclips
  1. Somewhere Else
  2. Love Will Come Through
  3. Mid-Life Krysis
  4. Happy to Hang Around
  5. Walking Down the Hill

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