「Walking Wounded」(1996) / Everything But the Girl

レビュー
1.Before Today
2.Wrong
3.Single
4.The Heart Remains a Child
5.Walking Wounded
6.Flipside
7.Big Deal
8.Mirrorball
9.Good Cop Bad Cop
10.Wrong (Todd Terry Remix)
11.Walking Wounded (Omni Trio Mix)

クラブシーンに進出、新たな境地へ

トレイシー・ソーンがマッシヴ・アタックとコラボしたことが影響したのか、一気にエレクトロ色が強くなった衝撃の作品。前作がヒット曲「Missing」を含んだ集大成的な内容の作品だったこともあり、まるで本作の変化は、新たなる一歩を踏みしめたかのようである。とはいえ、リラックスして聴ける安心感は相変わらず顕在で、仕事終わりにまったりしながら聴くには最適の音楽だと思う。とりわけ本作の雰囲気は、喩えるならば、都会の喧騒を感じながら薄暗いバーでくつろいている感じ、といったところだろうか。

エレクトロニック・ミュージックをメインに構築された本作だが、音の質感が冷ややかになったことで、ネオンサインが輝く真夜中の静かな繁華街のイメージを強く感じさせる。二人が並んで写っているジャケットは、その繁華街での一コマなのだろうか。また、その音の質感により、非常にクールな雰囲気を作りだしていてなかなかにカッコいい。個人的に、力強いパーカッションが印象的な#6「Flipside」の冷めっぷりがたまらない。暖かみがあった以前までの作品と比べると、雰囲気の部分でも大きな違いが生まれていることが分かる。

このように大きな転機となったはずの本作。本来ならEBTGを語る上で欠かせない作品のはずなのだが、あまり話題に上らず、おまけに評価も芳しくない。彼らのイメージから離れてしまっているために、評価が二の次になってしまうことは仕方がないかもしれない。ただ本作は、EBTGの可能性を引き出しただけでなく、使い慣れていないはずのサウンドを手玉に取るかのように操る、ハイクオリティな出来栄え。他の作品と比べるのは難しいが、EBTGの中でもベスト3に入る内容のアルバムと言っても過言ではない。

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