「TRY AND TRY AGAIN」(1988) / Sing Like Talking

レビュー

都会的でおしゃれな音楽といえばAOR、シティポップだが、日本国内でそれを忠実に表現するバンドがシング・ライク・トーキングである。本作は彼らのデビュー作に当たる。

知る人ぞ知る名バンド

国内AOR、シティポップと言えば必ずと言っていいほど名前が上がるのがこのバンド。80年台後半にデビューして以降、オシャレなポップスの作品を数々リリースしてきたベテランバンドである。30年ほどのキャリアを築いてきたバンドだが、世間一般の認知は決して高くない。

自分はAORに興味を持ったことがキッカケで彼らの存在を知ったが、このようなふとしたことがない限り、存在すら知らないままになってしまう可能性がある。

その長いキャリアに反して大きなヒットを経験していないが、作品ごとに変異していく彼らの長いキャリアを辿れば、そのアダルトな魅力から抜け出せなくなること間違いなしのバンドである。

初期のコンセプトはAOR、ファンク

本作を含めた初期の3枚ほどのアルバムでは、メンバーもAORを意識して制作していたという。

現在こそオシャレなポップスを様々なアプローチで披露している彼らだが、初期の作品は、AORと真正面から向き合っており、都会的でロマンチックなサウンドが非常に心地よく聴かせてくれる。

デビュー作にも関わらずスーパーバンドばりの洗練されたサウンド、その演奏技術の高さや音の繊細さに、なぜ話題にならなかったのか不思議でならない。

当時来日していたTOTOのジェフ・ポーカロがシング・ライク・トーキングの音楽を耳にして「日本にこんな凄いバンドが現れるとは思わなかった」と絶賛したらしく、一部の有識者の間では話題になっていたようである。

佐藤竹善のボーカル

アルバムを通し一貫して高級感のある音色と、ファンキーなバンドサウンドに溢れており、その中でも佐藤竹善のヴォーカルの上手さは圧巻である。

自由奔放でありながらクリアな歌声は、ジャジーで高級感のあるサウンドにぴったりで、国内屈指のヴォーカリストといえるだろう。

AORを出発点として、数々の隠れた名作を世に送り出してきたこのバンド。以降もリリースごとに特色の違う音楽性を披露し、コアなファンを飽きさせないバンドとして存続し続けている。

トラックリスト

  1. TRY AND TRY AGAIN
  2. Dancin’ With Your Lies
  3. 君がいなければ
  4. PLANTED PLANNER
  5. Dancin’ With Your Lies (I’m Hot Version)
  1. FAIR~JUST THE TWO OF US~
  2. EVENING BYZANTIUM
  3. 11月の記憶 ~RAINING BLUES~
  4. WHAT TIME IS IT NOW?
  5. 眠りに就くまで

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