「TNT」(1998) / Tortoise

レビュー

ポストロックの代名詞、トータスの3作目にして出世作となったアルバム。

“シカゴ音響派”、”ポストロック”というワードを聴いて連想するのはやはりこのグループだろう。インストゥルメンタルで暖かみのある音を紡ぎ合わせ、トータスの知名度を押し上げた。

後に音楽プロデューサーとして他アーティストへの楽曲参加などで知られていく、ジョン・マッケンタイアが在籍しているバンドとしても有名である。

情緒的で暖かみのあるサウンド

ポスト・ロックは定義がとても難しいジャンルだが、トータスに関しては、エレクトロニクスとアコースティックな音色を駆使したインストゥルメンタルミュージック、だろうか。

曲展開が豊かで、プログレとの親和性も感じさせる。ロックを解体して再構築したサウンド、と説明していた記事も見かけたが、言わばロックの枠から外れて、他のジャンルと交流しながらクリエイティブなサウンドを構築している、ということだろうか。

ポスト・ロックの代表作と言われている本作は、とても情緒的な雰囲気が印象的。クリエイティブなインストという、ポスト・ロックのイメージ通りのサウンドで、音に暖かみや優しさがある。アナログな音や木琴などが多く使われているのがその要因だと思われる。

あくまでバンドという体型でサウンドを作り上げているが、音の数も少なく、一つひとつの音を紡ぐように丁寧に鳴らしている。ギターの音色、繊細にリズムを刻むドラム、線の細い音色が可愛らしいシンセサイザーなどなど。どうやら、彼らのサウンドはジャズを基調としているようだ。

そのように一音一音を繊細に鳴らしている本作は、夕焼けの街並みをイメージさせる、ノスタルジックで儚げな雰囲気がたまらない。強く握ったら壊れてしまいそうな、ガラス細工のような曲の数々。…とはいえ緊張感があるかというとそうでもない。(落書きのようなジャケットからもそれは伺える(笑))

前衛音楽というと、頭を使って聴いてしまいがちだが、本作に限っていは、その雰囲気をゆるーく楽しめれば良いと思う。そんな聴きやすさが本作の魅力だと思う。ロックの名盤として、ぜひ手にとってほしい一枚。

トラックリスト

  1. TNT
  2. Swung from the Gutters
  3. Ten-Day Interval
  4. I Set My Face to the Hillside
  5. The Equator
  6. A Simple Way to Go Faster Than Light That Does Not Work
  1. The Suspension Bridge at Iguazú Falls
  2. Four-Day Interval
  3. In Sarah, Mencken, Christ, and Beethoven There Where Women and Men
  4. Almost Always Is Nearly Enough
  5. Jetty
  6. Everglade

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