「Siamese Dream」(1993) / The Smashing Pumpkins

レビュー

人気を決定づけた、スマパンの出世作

シカゴ出身のオルタナティブロックバンド、スマッシング・パンプキンズの2ndアルバム。繊細で情緒的なメロディを奏でながらも、それと対比する暴力的なギターの轟音の猛進ぶりが特徴的な、まさに今後のスマパンのイメージを決定づけた代表作。そんなバンドの魅力が詰まっている濃厚な本作だが、これをきっかけに世界的なロックバンドへと進化したということもあり、改めて重要な一枚である。

ビリー・コーガンの完璧主義が反映された輝かしく壮大な物語を形作るのは、粒の荒い轟音とジェームス・イハのひねくれたギターサウンド、素人にも凄さが伝わるジミー・チェンバレンのテクニカルなドラミング。彼らが形成する、もはやスマパン以外の何物でもないサウンドは、同世代のグランジ・オルタナティヴバンドとは頭一つ抜けた独特の世界観を構築している。

様々なバンドが独自の音楽を追及して人気を博していた90年代において、スマパンはその時代を象徴する存在であったと言えるだろう。

本作はなんといってもそれぞれの楽曲がほぼ完璧に近い内容で、#1「Cherub Rock」#9「Mayonaise」あたりはもはや名曲のオンパレード。それぞれが高い人気を誇る楽曲のためか、もはやベストに近い作品。

最初と最後の巻き込むようなドラミングがアルバムの勢いを盛りたてる代表曲#1「Cherub Rock」で始まり、繰り返しになるがそれに続けとばかりに緩急の付いた個性的な名曲が押し寄せてくる。

重量感たっぷりの#2「Quiet」や、突っ走りながらも起伏の激しい展開が興奮を呼ぶ#8「Geek U.S.A.」などは特に刺々しい上に攻撃的だが、オーケストラのように壮大なサウンドが非常に感動的な#6「Disarm」と、スロウテンポの名バラード⑨は涙なしには聴くことはできない。極めつけはボーナストラック⑭のかっこよさ。彼らの表現の幅がとても大きいことを実感できる。

そしてこの作品をさらにスケールアップさせてドラマティックな世界にしたのが、最高傑作である次作なわけだが、この「Siamese Dream」も引けを取らない人気と完成度であることは間違いない。今後の音楽性の変化を考慮すると、スマパンの中で最も聴きやすいのはこの作品だと思うので、スマパンに興味を持った方はこの作品から手に取るといいと思う。

トラックリスト

  1. Cherub Rock
  2. Quiet
  3. Today
  4. Hummer
  5. Rocket
  6. Disarm
  7. Soma
  1. Geek U.S.A.
  2. Mayonaise
  3. Spaceboy
  4. Silverfuck
  5. Sweet Sweet
  6. Luna
  7. Pissant *

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