「Selected Ambient Works 85-92」(1992) / Aphex Twin

レビュー

奇人、奇才と言われるリチャード・D・ジェームズのソロ名義、Aphex Twinの1stアルバム。

後のビートの強い作品とはかけ離れた美しさを放つデビュー作で、アンビエント・エレクトロニカの教科書とも言われるこの作品。

現在活躍するエレクトロアーティストに多大な影響を与えているとされる。

エレクトロニカの教科書

優しく包み込む電子音と、閑静な都会に迷い込んだような空虚な音使いが緊張感を生みだし、聴き手を非現実的な別世界へと誘っていく。

ハードコアなサウンドも得意とする彼だが、この作品は美意識に則った心地よく神秘的なサウンドを突き詰めている。

#1「Xtal」はその頂点に君臨するかのような名曲で、余りの虚しさに涙が出そうになる。霧が立ち込めるように物静かなサウンドは、都会をモノクロで描写したような、アートのような世界観を作り出す。

同じサウンドを繰り返すミニマルな手法と、数少ないサウンドを絡み合わせる曲構成も癖になり、この世界を彷徨い続けたいと思わせる。それぞれの楽曲の音選びも、彼のセンスの賜物だろう。

ビートの強い楽曲で駆け抜けるような曲もあれば、#6「Green Calx」のような重量感のあるサウンドで攻める楽曲もあり、エレクトロニカの基本を全てこの作品で披露しているかのよう。

作品を聴いた時感じたのは、まるで見知らぬ街で一人ぼっちでいるような不安感。しかし音が美しいためうっとりと聴き惚れてしまう・・・。

テクノ・エレクトロニカにおいての名盤であるのは言うまでもないが、電子音の心地よさやカッコよさが幅広く詰め込まれた作品で、何より非常に聴きやすい。

なのでこの周辺の音楽の入門編としては最適な作品だろう。無論、テクノが好きな方には一度は聴いてほしい。

トラックリスト

  1. Xtal
  2. Tha
  3. Pulsewidth
  4. Ageispolis
  5. I
  6. Green Calx
  7. Heliosphan
  1. We Are the Music Makers
  2. Schottkey 7th Path
  3. Ptolemy
  4. Hedphelym
  5. Delphium
  6. Actium

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