「Homogenic」(1997) / Björk

レビュー

ビョークのことを異星人としか思えない、という人がいる。それほどに彼女の佇まいというのは奇抜で、同じ人間とは思えないということなのだろう。

衣装のような表面的な部分から、歌声、サウンド、言動、世界観まで、何から何まで規格外な女性シンガーであり、憂いの強い雰囲気も含め個人的に大好きなアーティストである。

彼女の歌声を引き出した代表作

本作『Homogenic』は三枚目の作品となり、充実した彼女のディスコグラフィーの中でも特に高い評価を獲得している。

前作『Post』はポップな側面が強い作品だったが、本作では#2「Joga」に代表される、壮大かつ悲観的な世界観が展開されている。

どの作品でも言えることだが、ビョークはリズムトラックや電子音などの打ち込みによるサウンドの使い方にこだわっているのがよく分かる。個人的に、彼女はエレクトロアーティストとしての側面がとても強いと思っている。

雰囲気がそれぞれ違う前作・前々作も好きなのだが、彼女の歌声をフィーチャーさせるために作り上げたような世界観の本作も素晴らしい。過去作のサウンドセンスと彼女の伸び伸びとした歌声が上手く合致し、荘厳かつ壮大で緊張感のあるアルバムとなっている。

前述の#2「Joga」とともに彼女の代表曲となっている#4「Bachelorette」#10「All Is Full of Love」は、仰々しいほどの美しいさを放っている。

他の楽曲も、静寂の中から不穏な音色と歌声がゆったりと漂ってくるような、張り詰めた空気感で展開されていく。#5「All Neon Like」は途中から太いリズムトラックが加わる、とても異質な曲。

淡々としたバックのフレーズが癖になる#7「Immature」、力強い打ち込みと多くのコーラスが飛び交う#8「Alarm Call」などは、地味ながらもリピートしたくなる心地よい楽曲である。

ビョークの伸びやかで綺麗な歌声は素晴らしいが、時々ドスの利いた声を出したりシャウトしたりと、聴き手が想像つかないベクトルに突然向かい、ドキッとすることがある。そんな情緒不安定さもまた魅力的である。それは感性が鋭く繊細な表現にこだわる彼女ならではの表現方法なのだと思う。

彼女の作品は、どれも聴き流すだけでは良さはわからないので、一曲一曲腰を据えてじっくり聴き、そのサウンドの細部まで味わって欲しいと思う。

トラックリスト

  1. Hunter
  2. Jóga
  3. Unravel
  4. Bachelorette
  5. All Neon Like
  1. 5 Years
  2. Immature (Mark Bell’s Version)
  3. Alarm Call
  4. Pluto
  5. All Is Full of Love (Howie’s Version)

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