「Ferment」(1992) / Catherine Wheel

レビュー

Catherine Wheelの1stアルバム。

シングル#2「I Want to Touch You」#3「Black Metallic」で注目を集めた彼らによる、初のフルアルバムである。粒子の細かいギターサウンドを洪水のようにかき鳴らし、ワウペダル等を駆使した甲高いノイズがその中を巡る。

この輪郭の曖昧なサウンドの波の中を、陶酔しきった顔で歌うヴォーカルなどが漂えば、そこはもう白昼夢の世界と化す。しかし、全体から醸し出される空気はネガティブなもので、なんだか倦怠感を伴っている曲が多い。それは他のシューゲイザーバンドとは違う、濃い色に覆われたイメージから感じさせるものなのかもしれない。

渦を巻くギターの洪水にまみれながらも、リヴァーブを効かせたギターノイズがうねるように鳴り渡っていく。…目眩にも似たこのサウンドから、サイケ色がとても強い作品であることが言える。

さらにヴォーカルの歌声なども加味すると、サウンドの中に身体を埋めたくなるような虚脱感を覚えていく。そこからもシューゲイザーバンドとしての本質も存分に味わうことができるハズだ。

ロブのボーカルは、リスナーの気持ちを体現しているかのように、サウンドの中で恍惚としている。野太い声だからこそ、半目で気持よく歌っている様が容易に想像出来る。

音の厚みで圧倒するような曲がひしめく中、歌モノのようなキャッチーな曲があったりして、バンドのクオリティの高さを物語る一面も随所で垣間見れる。

とはいえ全体的に轟音にまみれまくっている本作。その中で物静かな曲は#7「Ferment」程度。しかし、こちらも中盤には嵐のようサウンドが通り過ぎるという、凝った曲展開がなされている。彼らには轟音は必要不可欠な要素であり、美意識が高いこともよくわかる。

シングル二作も良いが、地面から水が吹き出してくるような#12「Balloon」が、個人的には病みつき。シンプルな曲展開だからこそ、ストレートに味わえる迫力のあるサウンド。素晴らしい。

“シューゲイザー”と一括りにされてはいるものの、ダークで濃ゆい雰囲気が、他バンドと一線を画しているこのバンド。とはいえ、本作がシューゲイザーシーンにおける名作であるという評価は、今後も揺ぎ無いといえよう。

トラックリスト

  1. Texture
  2. I Want to Touch You
  3. Black Metallic
  4. Indigo is Blue
  5. She’s My Friend
  6. Swallow
  1. Ferment
  2. Flower to Hide
  3. Tumbledown
  4. Bill and Ben
  5. Salt
  6. Balloon

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