拷問機械の暴走
デビュー作「Pretty Hate Machine」に続いてリリースされた、激情感溢れるミニアルバム。
バンドは現在までに数々の作品をリリースしてきたが、ここまで直接的な攻撃性、暴力的な要素を備えている作品はないだろう。インダストリアルメタルを大衆に根付かせたのも、この作品と次作「The Downward Spiral」によるところが大きい。本作には#2「Wish」、#5「Happiness In Slavery」など、伝説となっている過激なPVとともに、未だに人気の高い曲も収録。
強烈なギターリフが印象的な#2「Wish」、#3「Last」の二曲は、同じ質感を持った、まるで双子の兄弟のような両曲。インダストリアル・メタルの無機質なサウンドのカッコ良さをお腹いっぱい味わえる。しかし、その後のインスト#4「Help Me I Am In Hell」~#5「Happiness In Slavery」に達すると、”この領域に踏み込んで大丈夫なのか?”という不安感が一気に高まる。カッコ良さを味わう前に、”なんだこれは”というのが第一印象だった。
本作を聴いて抱くイメージとしては、無人の工場に忍びこむやいなや、機械の暴走により体をむちゃくちゃに切り刻まれてしまうような、無機質で理不尽な恐怖。聴き進めていると、身の危険すら不安になってしまうほどの禍々しさを感じてしまう。#5「Happiness In Slavery」はそれを恐ろしいくらい体現しているが、曲もさることながらあのPVは異常としか思えない。怖いもの見たさで見ようと思う人は、強い覚悟をした方がいいだろう。
Nine Inch Nailsはオルタナティブロックの雄として、その存在感、音楽性で時代を動かした重要バンドの一つ。ただ、彼らのの音楽は難解という印象が強く、次作も傑作と言われながら聴く人は大幅に限られている。そこで最初におすすめしたいのが今作「Broken」ということになるだろう。
トラックリスト
- Pinion
- Wish
- Last
- Help Me I Am In Hell
- Happiness In Slavery
- Gave Up
- Physical (You’re So)
- Suck
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