nineinchnails-downward
1.Mr. Self Destruct
2.Piggy
3.Heresy
4.March Of The Pigs
5.Closer
6.Ruiner
7.The Becoming
8.I Do Not Want This
9.Big Man With A Gun
10.A Warm Place
11.Eraser
12.Reptile
13.The Downward Spiral
14.Hurt

情緒不安定な”静”と”動”

Nine Inch Nailesの代表作にして、90年台の名盤としてよく取り上げられる本作。USオルタナティブ・ロックの代表格であり、無機質で攻撃的な”インダストリアル・ロック”というジャンルをメインストリームに押し上げたグループでもある。

彼らの曲は、社会の陰を投影したような鬱々としたものが多く、本作はその最たるものだと思われる。聴いているとこちらが病んでしまいそうな、暗く重苦しい音。深い絶望感の中を這いずり、もがき苦しむように、落ち込み、暴れまわる。まるで刃物をふりまわしているかのように情緒不安定な本作は、彼らの作品の中で最も緊張感に満ちた内容となっている。

一聴しただけでは、おどろおどろしさや不気味さを感じるにとどまってしまうのだが、聴きこむごとに一音一音メロディがしっかり練られているのを感じ、気になる曲が増え、結果的に気味の悪い本作にハマっていく。個人的に本作は、究極のスルメ盤の一つであると思っている。

一曲目#1「Mr. Self Destruct」(自己破壊主義)は、タイトルも去ることながら、曲自体も本作の方向性を物語っている。ノイズまみれのサウンドで発狂したように暴走し、途中でぱたっと音が止んでおとなしくなったかと思えば、しばらくして突然また暴れだす。このように、本作は”静”と”動”の移り変わりがあまりに極端で、落ち着いて聴くことが出来ない。そもそもバンド側としても、楽しく聴かせるつもりは毛頭ないのだろうけど。曲単位の移り変わりもそうだが、アルバム単位でも粒ぞろいの楽曲で、リスナーの感情を激しく揺さぶる。

しかも曲者なのが、”動”のときにカッターナイフで切りつけられるようなサウンドだったのに、”静”にシフトしたときにはやたらと美しい音色を聴かせる。#11「A Warm Place」に至っては荘厳さと穏やかさを感じ、個人的にリラックスしたい時に思わずこれだけ聴きたくなる時があるほどである。

このようにポップからかけ離れている作品だが、米国ビルボードチャートで、なんと初登場2位を記録したというから驚きである。フロントマンのトレント・レズナーは悩み多き人物だそうだが、その複雑な思考や感情を丁寧に組み立て、サウンドで表現仕切ったのが本作ということなのだろうか。

次作で二枚組の「The Fragile」を発表し、こちらも繊細かつノイジーという両極端な感情が入り交じった佳作となっているが、未だに『The Downward Spiral』がNINの傑作という評価は揺らぐことがない。ただ、いきなり本作を聴くのはおすすめできないので、メタル色の強い前作『Broken』、もしくは聴きやすい(と言われている)『With Teeth』から聴くのが良いかもしれない。

nin-broken
1.Pinion
2.Wish
3.Last
4.Help Me I Am In Hell
5.Happiness In Slavery
6.Gave Up

98.Physical (You’re So)
99.Suck

拷問機械の暴走

デビュー作「Pretty Hate Machine」に続いてリリースされた、激情感溢れるミニアルバム。

バンドは現在までに数々の作品をリリースしてきたが、ここまで直接的な攻撃性、暴力的な要素を備えている作品はないだろう。インダストリアルメタルを大衆に根付かせたのも、この作品と次作「The Downward Spiral」によるところが大きい。本作には#2「Wish」、#5「Happiness In Slavery」など、伝説となっている過激なPVとともに、未だに人気の高い曲も収録。

強烈なギターリフが印象的な#2「Wish」#3「Last」の二曲は、同じ質感を持った、まるで双子の兄弟のような両曲。インダストリアル・メタルの無機質なサウンドのカッコ良さをお腹いっぱい味わえる。しかし、その後のインスト#4「Help Me I Am In Hell」~#5「Happiness In Slavery」に達すると、”この領域に踏み込んで大丈夫なのか?”という不安感が一気に高まる。カッコ良さを味わう前に、”なんだこれは”というのが第一印象だった。

本作を聴いて抱くイメージとしては、無人の工場に忍びこむやいなや、機械の暴走により体をむちゃくちゃに切り刻まれてしまうような、無機質で理不尽な恐怖。聴き進めていると、身の危険すら不安になってしまうほどの禍々しさを感じてしまう。#5「Happiness In Slavery」はそれを恐ろしいくらい体現しているが、曲もさることながらあのPVは異常としか思えない。怖いもの見たさで見ようと思う人は、強い覚悟をした方がいいだろう。

Nine Inch Nailsはオルタナティブロックの雄として、その存在感、音楽性で時代を動かした重要バンドの一つ。ただ、彼らのの音楽は難解という印象が強く、次作も傑作と言われながら聴く人は大幅に限られている。そこで最初におすすめしたいのが今作「Broken」ということになるだろう。

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