nineinchnails-downward
1.Mr. Self Destruct
2.Piggy
3.Heresy
4.March Of The Pigs
5.Closer
6.Ruiner
7.The Becoming
8.I Do Not Want This
9.Big Man With A Gun
10.A Warm Place
11.Eraser
12.Reptile
13.The Downward Spiral
14.Hurt

情緒不安定な”静”と”動”

Nine Inch Nailesの代表作にして、90年台の名盤としてよく取り上げられる本作。USオルタナティブ・ロックの代表格であり、無機質で攻撃的な”インダストリアル・ロック”というジャンルをメインストリームに押し上げたグループでもある。

彼らの曲は、社会の陰を投影したような鬱々としたものが多く、本作はその最たるものだと思われる。聴いているとこちらが病んでしまいそうな、暗く重苦しい音。深い絶望感の中を這いずり、もがき苦しむように、落ち込み、暴れまわる。まるで刃物をふりまわしているかのように情緒不安定な本作は、彼らの作品の中で最も緊張感に満ちた内容となっている。

一聴しただけでは、おどろおどろしさや不気味さを感じるにとどまってしまうのだが、聴きこむごとに一音一音メロディがしっかり練られているのを感じ、気になる曲が増え、結果的に気味の悪い本作にハマっていく。個人的に本作は、究極のスルメ盤の一つであると思っている。

一曲目#1「Mr. Self Destruct」(自己破壊主義)は、タイトルも去ることながら、曲自体も本作の方向性を物語っている。ノイズまみれのサウンドで発狂したように暴走し、途中でぱたっと音が止んでおとなしくなったかと思えば、しばらくして突然また暴れだす。このように、本作は”静”と”動”の移り変わりがあまりに極端で、落ち着いて聴くことが出来ない。そもそもバンド側としても、楽しく聴かせるつもりは毛頭ないのだろうけど。曲単位の移り変わりもそうだが、アルバム単位でも粒ぞろいの楽曲で、リスナーの感情を激しく揺さぶる。

しかも曲者なのが、”動”のときにカッターナイフで切りつけられるようなサウンドだったのに、”静”にシフトしたときにはやたらと美しい音色を聴かせる。#11「A Warm Place」に至っては荘厳さと穏やかさを感じ、個人的にリラックスしたい時に思わずこれだけ聴きたくなる時があるほどである。

このようにポップからかけ離れている作品だが、米国ビルボードチャートで、なんと初登場2位を記録したというから驚きである。フロントマンのトレント・レズナーは悩み多き人物だそうだが、その複雑な思考や感情を丁寧に組み立て、サウンドで表現仕切ったのが本作ということなのだろうか。

次作で二枚組の「The Fragile」を発表し、こちらも繊細かつノイジーという両極端な感情が入り交じった佳作となっているが、未だに『The Downward Spiral』がNINの傑作という評価は揺らぐことがない。ただ、いきなり本作を聴くのはおすすめできないので、メタル色の強い前作『Broken』、もしくは聴きやすい(と言われている)『With Teeth』から聴くのが良いかもしれない。

pantera-vulgardisplayofpower
1.Mouth for War
2.A New Level
3.Walk
4.Fucking Hostile
5.This Love
6.Rise
7.No Good (Attack the Radical)
8.Live in a Hole
9.Regular People (Conceit)
10.By Demons Be Driven
11.Hollow

重戦車級の破壊力を持つヘビーメタル

『俗悪』という邦題で知られているパンテラの代表作。ヘビメタというジャンルにおいても、このパンテラのサウンドは、かなり暴力的である。ギターサウンドの鋭利さや重たさもさることながら、ヴォーカルも絶叫しまくりで、聴く人をかなり選ぶバンドだと思っている。確かにそうなのだろうけど、それでも本作が全米44位まで上り詰め、さらには今でもヘビメタの名盤として評価され続けている事実から考えても、今やアングラなイメージは無い。

81年から活動を行っていたバンドだが、86年にフィル・アンセルモがヴォーカルとして加わったことで、全盛期のスタイルが出来上がった。90年代に入り、グランジ・オルタナがシーンを席巻してメタルが衰退していく中、そんなこともお構いなしに売上を伸ばしていった彼ら。それどころか、後に現れるニュー・メタルやヘヴィ・ロックバンドに多大な影響を与え、90年代のに新たな流れの基盤を作ったとも考えられている。

パンテラのサウンドは、すべての音が重戦車のように重たい。個人的にヘヴィメタを聴き始めた当時は、Helloweenなどのメロディアス系のものしか知らなかったので、彼らのサウンドを初めて聴いたときの衝撃的はとても大きかった。終始がなり声のフィルのヴォーカル、一音一音が突き刺さるかのようなヴィニー・ポールのドラム。そして特筆すべきはやはりダイムバッグ・ダレルのギターだろう。リフメイカーとして数々の名リフを、切れ味鋭くヘヴィなサウンドで生み出してきた彼は、バンドのトレードマークとなっていた。

正直、本作のどこを切り取ってもPanteraの暴力的なサウンドを堪能できる。うねりのあるサウンドで畳み掛ける#1「Mouth for War」から始まり、とりわけ重量感のある#2「A New Level」、縦ノリしやすい名曲#3「Walk」と、始まってから佳曲が続く。他にもスピード感を兼ね備えた#4「Fucking Hostile」、#6「Rise」などは鬼気迫るものを感じさせる。後半も印象的なリフの曲が満載で、重たいサウンドにひたすら打ちひしがれることになるだろう。

本作以降、よりサウンドに重みが増していき、楽曲やダレルのギターも新しい試みが導入され、癖が強くなっていく印象がある。その点『俗悪』に関しては、楽曲の統一感もあるし、一聴で良さが分かるとっつきやすさもあるので、多くの方に支持されているのも頷ける作品である。パンテラを初めて聴く方はもちろん、ヘビメタ入門としてもオススメできる作品であると思う。

LinkinPark-HybridTheory
1.Papercut
2.One Step Closer
3.With You
4.Points of Authority
5.Crawling
6.Runaway
7.By Myself
8.In the End
9.A Place for My Head
10.Forgotten
11.Cure for the Itch
12.Pushing Me Away

文句なしにカッコいい激ロックアルバム

ラップ・メタル、ニュー・メタル、ミクスチャーロック…。呼称は様々だが、KoRnやLimp Bizkitに代表されるこれらの音楽は、90年代後期にロックシーンを席巻した。その潮流に上手く乗り、大成功を収めたといえるのが、このLINKIN PARKではないだろうか。その人気は一般の音楽ファンをも巻き込み、本作は1500万枚以上もの大ヒットを記録している。

重厚なギターリフによる骨太なサウンドと、チェスター・ベニントンの激情的なヴォーカルが大きな魅力で、サウンドが耳に飛び込んできた瞬間、理屈抜きにカッコいいと思える。それらのサウンドが歌モノとして、コンパクトに纏められたことで、ラウドロック系でありながら非常に聴きやすい楽曲の数々を作り上げており、とてもハイセンスなバンドであると言える。マイク・シノダによるラップヴォーカル(コーラス)もカッコよく噛み合っていて、ミクスチャーロック、ラップ・メタルの新たな指針と完成形をこの作品で提示したといえる。

何より素晴らしいのは、ヘヴィな楽曲がずら~っと並んでいる作品であるにも関わらず、個々の楽曲に色があり、最後まで一気に聴けてしまえるところ。こういったニュー・メタル系の作品は、リスナーがラウドなサウンドの応酬に辟易しないために、ミドルテンポの楽曲を配置して緩急をつけようとするが、本作はラウドロック一本による筋が通った楽曲構成。むしろ曲が進むにつれて、そのバンドの熱量に興奮し、次へ次へと彼らの楽曲を欲するようになっていく。

LINKIN PARKは作品をリリースするごとに大きく作風を変えていることでも知られているが、それは1stと2ndでこの手のサウンドをやり尽くしたと感じたからだ思われる。3rdから政治色を強めていき、4thでは打ち込みやサンプリングを用いたシリアスな楽曲が増えていき、初期の面影は殆どなくなった。しかし、彼らのようにデビュー間もなくして人気や音楽性を確立させたバンドは、”現状維持”でも”変化”でも茨の道となったに違いない。それでも作品をリリースしては評価され、2017年現在も新作をリリースしようとしている彼らは、間違いなく実力者であったと言える。

因みに、洋楽ロックを聴き始めた当時高校1年の自分にとって、彼らの音楽との出会いは衝撃的だった。探し求めていた音楽をついに見つけた!と若いながらに興奮し、しばらくは本作と次作『Meteora』ばかり聴いていた気がする。(今思えば若いときに出会えてよかったとも思う。)エネルギーに満ち溢れた本作にアドレナリン全快で興奮できる、文句なしにカッコいい激ロックアルバム。そして、00年代を代表する名盤。

caspian-tertia
1.Mie
2.La Cerva
3.Ghosts of the Garden City
4.Malacoda
5.Epochs in Dmaj
6.Of Foam and Wave
7.Concrescene
8.The Raven
9.Vienna
10.Sycamore

静寂と嵐

乱暴に言ってしまうと、Caspianは、Mogwaiが得意としていた轟音サウンドを、よりメリハリをつけながらダークな世界観に仕上げたバンドだと思っている。キラキラと美しいアルペジオにうっとりし、嵐のように襲いかかる轟音ギターサウンドで一気に目が覚める。その対比がとても魅力的な轟音インストポストロックバンドである。

ギターの音を何層にも重ねた、洪水のように流れ込むギターサウンドは、一度ハマるとなかなか抜け出せない魅力を持っている。ただ、それを魅力的に感じるには、やはり静寂との対比、曲のドラマ性が大事になってくると思う。一曲の中で、流麗なギターサウンドで宇宙的な世界を提示したのち、中盤で一気に轟音がバーストして、カタルシスを感じさせる。寄せては返す波のような曲展開をドラマティックに聴かせることで、轟音ギターの魅力を追求。それは、このバンドの特徴となっている。

こと本作に関しては、同列のバンド(轟音インストバンド)の追随を許さないほどの魅力が醸し出されている。アルバムを通して”静寂”と”嵐”とが目まぐるしく入れ替わる展開をみせ、もはや荘厳すら感じさせるほど。繊細な音色で緊張感あふれる世界を作り上げながらも、それを一気に壊しにかかる爆音。創りあげられた神聖な舞台を吹き飛ばしていくかのようだ。本作はもしかしたら、人が内に秘めた破壊衝動を満たしてくれるかもしれない。

ピアノの旋律が美しい#1「Mie」から始まったかと思えば、#2「La Cerva」では分厚いギターサウンドに終始覆い尽くされる。そんな嵐のような楽曲を経て、今作の目玉である#3「Ghosts of the Garden City」にたどり着く。息が詰まる様な荘厳な雰囲気から始まり、中盤で一気に爆発する大作である。個人的に大好きなのは#8「The Raven」で、とても妖しいカッコよさが際立った、こちらも大作の一つである。

ギターの音もさることながら、それにかき消されんとドラムの音がとても力強くなっているのも魅力の一つ。それにしても音の粒が整っていて録音状態も良いのも評価が高い。同列の、いわゆる轟音ポストロックバンドは数多くいるとの話なので、Caspian以外にも色々と聴いてみたいと思う。

caroline-murmurs
1.Bicycle
2.Pink & Black
3.Sunrise
4.Where’s My Love
5.Everylittlething
6.All I Need
7.Drove Me to the Wall
8.I’ll Leave My Heart Behind
9.Winter

可愛らしいエレクトロニカの定番

エレクトロニカと女性のウィスパーヴォイス。この組み合わせは今や定番で、近年は根強い人気があると思っている。個人的にはエレクトロシューゲバンドのGuitarでこの手の音楽を知ったのだが、この類のアーティストはサウンドからジャケットまでセンスが現代的でとても好きだ。静寂の中で小刻みに震えるようなサウンドはとても心地よく、リラックスしたい時や美しい景色を眺めている時など、様々なシチュエーションで聴くことができる音楽である。

本作は、ポストロックバンドMice ParadeのヴォーカルであるCarolineによる1stソロアルバム。その可愛らしい歌声が穏やかなエレクトロの波に溶け込み、様々な情景を作り出している。ジャケットに雰囲気がよく出ているので、CDショップで目について試聴機で聴いたら衝動買いしたくなるだろう。

全体を通して聴いてみると、可愛らしい声やサウンドとは裏腹に孤独感や悲壮感を強く感じさせる作品であった。細かいノイズや限られたサウンドをゆったりと聴かせ、音が我々を眠りに誘うかのように辺りを漂う。そんな雰囲気を感じとった途端、その歌声はまるで溜息をついているように聴こえてくる。また、落ち込んでいる我々を包み込むよう暖かい気分がとても心地よい出来る作品でもある。

とても寂しげな#3「Sunrise」は、タイトルに反して夕焼けに染まる街並みを一人ぼんやり歩いているかのような情景が浮かぶ。#7「Drove Me to the Wall」は、個人的に本作に出会うきっかけとなった曲で、サビの開放感と悲壮感が心にグッと来る名曲である。他の楽曲も基本的に上記の雰囲気を踏襲しており、統一感があってあっという間に聴くことができる。

余談だが、彼女は日本の女性シンガーOLIVIAの妹である。#5「Everylittlething」のクリーンなハイトーンは、それを意識させるものであった。クリスタルボイスの姉に負けないほどの美しさ、そしてフェミニンな歌声を持ち合わせ、何気なく耳に流れ込んできたらとても幸せな気持ちになれるんだろうなと思う。可愛らしくて優しい音色に溢れながらも、夕焼けのようなモノ悲しさを持ちあわせた、エレクトロニカファン要チェックのアルバムである。

metallica
1.Enter Sandman
2.Sad But True
3.Holier Than Thou
4.The Unforgiven
5.Wherever I May Roam
6.Don’t Tread on Me
7.Through the Never
8.Nothing Else Matters
9.Of Wolf and Man
10.The God That Failed
11.My Friend of Misery
12.The Struggle Within

暗黒時代の幕開け?それとも…

えげつないスピードと攻撃力で駆け抜ける”スラッシュメタル”から脱し、ミドルテンポになったことで知られる最初の作品。通称”ブラックアルバム”。BPMの速さが魅力の一つだった彼らにとっては、間違いなく冒険作であり、同時に代表作の一つにも数えられている重要作。スピードを落としたことで、ザクザクと切り込むギターの切れ味がより深くなったように感じるし、サウンド全体の重さも圧倒的に増したりと、今までのイメージを覆すこととなった。

異なることを探求することが信条という彼らだが、デビュー時以上にそれを成し遂げた作品となった。本作『Metallica』は大ヒットを記録し、先行シングル#1「Enter Sandman」もバンド最大のヒット曲となった。他のバンドへ与えた影響も大きく、同時期の”グランジ”を始め、腰を据えた重たさを極めた”ヘヴィ・ロック”などが登場するきっかけを作るほどの力が、本作にはあったと思う。Metallica自身も、以降は本作を踏まえた音楽性の作品が増え、他ジャンルにも突入していった。

個人的にMetallicaは次作『Load』から聴き始めたので、本作は違和感なく聴くことが出来た。むしろ最初に出会いたかった…。聴き始めた当初は、踏みしめるようにじっくりと進んでいくサウンドの威圧感に圧倒されたのを覚えている。特に#1「Enter Sandman」は、大きな門をくぐり抜けていくようなオープニングからゾクゾクしてしまう。思えばMetallicaの作品の一曲目は、どれも仰々しいというか、彼らのドラマティックな曲展開の幕開けを上手く表現している気がする。そして、その一曲目に続いて重たいリフのどっしりとした曲が、凝った曲編成の中をズンズンと進んでいく。その中で初期の趣を残しながら、本作らしい音を鳴らす#7「Through the Never」は、このアルバムでは特に好きな曲である。

大ヒットし評価も上々とはいえ、スラッシュメタルの頃こそMetallicaの本質だと感じている人には、モヤモヤした印象を与えてしまうのは仕方がないのかもしれない。しかしメンバーは、同じことをするのが嫌い、というか音楽への探究心がとても強い人たちなので、こういう変化も全然ありえるし、また今後どのような作品を作っていくか、動向が非常に気になるバンドでもある。

BestCoast-CrazyForYou
1.Boyfriend
2.Crazy for You
3.The End
4.Goodbye
5.Summer Mood
6.Our Deal
7.I Want To
8.When the Sun Don’t Shine
9.Bratty B
10.Honey
11.Happy
12.Each and Everyday

海岸線沿いを駆け抜ける、新世代のギターポップ

澄み渡るヴォーカルとコーラスワークが心地よく、ガレージサウンドにリヴァーヴが効かせたローファイなサウンド。夏の日差しのようにキラキラしたサウンドが魅力のサーフ・ロックバンドである。その雰囲気とサウンド作りは60年代、とりわけビーチボーイズの影響を強く感じさせる。海岸線をオープンカーで走り抜ける(例えが古風?)夏のイメージが強い作品である。

Best Coastは、2009年から活動を始めた、アメリカの男女二人組のロックバンド。本作はデビュー作に当たり、ギターをかき鳴らしたとてもシンプルで聴きやすいギターポップを披露し、各方面から高い評価を受けた。そしてヴォーカルのフワフワ感も印象的なので、Beach Houseなどの近年のドリーム・ポップバンドにも通ずる雰囲気を持っているようにも感じる。ドラマ映画などでさり気なくかかっていたらお洒落だろうなぁ。

個人的に惚れ込んだのは#1「Boyfriend」という曲で、瑞々しいギターサウンドと、コーラスを重ねた透き通った歌声が美しく響き渡る。正直、本作はずっとこんな感じで、太陽の光が降り注ぐように眩しいサウンドが敷き詰められている。また30分ほどで聴くことがが出来るコンパクトさも印象的で、夏が恋しくなった時や陽の光に包まれたいときに(?)、手っ取り早く心地よくなれる作品である。

それだけに1~2分という個々の曲の短さに物足りなさを感じたのは事実。コンパクトにまとめるからこそ彼らの魅力が引き立っているのかもしれないが、これだけセンスの良い曲を作り、心地良いサウンドを作り出せるのだから、もっと聴いていたい、もっと浸っていたいと感じる。是非とも技工を凝らした大作を聴いてみたいものだ。このサウンドメイクのままだったらきっと、本作以上に楽しめる音楽になると思う。

korn-issues
1.Dead
2.Falling Away From Me
3.Trash
4.4U
5.Beg For Me
6.Make Me Bad
7.It’s Gonna Go Away
8.Wake Up
9.Am I Going Crazy
10.Hey Daddy
11.Somebody Someone
12.No Way
13.Let’s Get This Party Started
14.I Wish You Could Be Me
15.Counting
16.Dirty

原点回帰とキャッチーさを併せ持った名作

“ヘヴィロック”…。海外では”ニューメタル”という呼称が一般的のようであるが、90年代後半に一時代を築いたジャンルである。旧来のメタルとはまた違う、オルタナの流れから派生した音楽で、”音圧”と”重さ”を意識したサウンドが特徴である。その基礎を作ったのは他でもない、KoRnであろう。

KoRnは1st『KoRn』で、ジョナサン・デイヴィスの闇が襲いかかるような衝撃的な音楽性を披露。以後、このダークさこそ彼らの持ち味となるのだが、3rd『Follow the Reader』では、サウンドの力強さやノリの良さ、キャッチーさを前面に出した音楽性で商業的成功を収める。そんな前作を経てリリースされたのが4th『Issues』なのだが、キーワードとしては「原点回帰」「キャッチー」という言葉が浮かぶ。

彼らの作品を語る際、あまり話題に上がらない本作だが、個人的には本作については”傑作”に挙げてもいいと思える作品である。真っ暗な部屋ですすり泣いているような、絶望的な闇をもった雰囲気は初期の香りを漂わせる。そして綺麗にまとまった曲構成やサウンドメイクも見事で、KoRnにしてはどの曲も非常に聴きやすい。これは初期のファンと3rdのファンの両方が気にいると思うし、当時のKoRnの集大成とも言える作品となったのではないだろうか。

上記の通り非常に聴きやすい作品なので、癖がなく聴ける曲の数々に良い意味で驚くかもしれない。特に冒頭の#2「Falling Away From Me」、#3「Trash」辺りが気に入れば、本作は後半まで一気に楽しめるはずだ。その他、PVが制作された#6「Make Me Bad」、#11「Somebody Someone」も必聴。

個人的にKoRnを初めて聴いたのはこの作品で、”ここまで暗くて重い音楽があったのか”と衝撃を受けたのを今でも覚えている。この作品を聴いたおかげでKoRnに興味を持ったし、それどころか洋楽ロックの魅力やカッコよさ、さらに言えば世界の広さなども思い知った気がする。絶望的だが、その世界に浸るのも悪く無いと思える名作。まずは本作を聴いてもらい、この世界観ががたまらない方は1st『KoRn』、音の迫力に圧倒された方は3rd『Forrow the Reader』と分岐していくのがいいだろう。

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deftones
1.Hexagram
2.Needles and Pins
3.Minerva
4.Good Morning Beautiful
5.Deathblow
6.When Girls Telephone Boys
7.Battle-Axe
8.Lucky You
9.Bloody Cape
10.Anniversary of an Uninteresting Event
11.Moana

枷からの解放

未だに本国では高い支持と人気を誇っており、ニューメタル勢の数少ない生き残りとして、良質な作品を生み出し続けているDeftones。ただ日本国内に関しては、Limp BizkitやKoRnこそ比較的人気があったものの、Deftonesに関しては知名度がまるでない。個人的にはメタルの中では1~2を争うほど大好きなバンドなのだけれど。

実際、ニューメタル特有のノリの良さや明るさはなく、クリエイティブさに裏打ちされたとても内向的なサウンドを追求している、異色のバンドといえる。その片鱗を見せつけたのは前作「White Pony」においてだろう。メンバーとの確執から生まれ、緊張感が研ぎ澄まれた「White Pony」は、未だに彼らの傑作として名高い。その前作の影響を踏まえて、セルフタイトルでリリースされた本作「Deftones」だが、こちらは起伏が激しく、感情的な表現が目立つ作品となった。

特に冒頭の#1「Hexagram」は、クリーンなメロディーと重たいサウンドと暴走気味の演奏、そしてチノのどこまでも伸びる絶叫ヴォーカルで、楽曲として破綻しかけるギリギリのところを渡り歩いている名曲。同様に#6「When Girls Telephone Boys」も、感情に任せたような熱のある演奏と、重たいリフ、キレキレのヴォーカルが癖になる。

一方でスケールの大きさを感じさせる名曲#3「Minerva」や、前作のクールさを踏襲した#5「Deathblow」や、#11「Moana」、さらにシンセ一辺倒の異色な#8「Lucky You」などもあったりする。アルバムを通して聴いてみると統一感は感じられないが、それはつまり自分たちの幅広い音楽性を出し惜しみせずに披露した結果と言える。まるで、前作で押し殺されていた感情や閉塞感といった、見えない枷から解放されたかのようである。

アルバムを出すごとに新たな音楽性を提示してくる彼らは、他のニューメタル勢とは一線を画し、とっつきにくいけど、深い世界観を作り出している。その中でもこの作品は、とても多角的に攻めている。一見本作は不格好に聴こえるかもしれない。しかし、前作で完成した一つの到達点から、Deftonesが次なる方向性を見つけるため、様々な可能性を示したアルバムだったように思う。ここから彼らがどういった道を辿ることになったのか…。それは次作「Saturday Night Wrist」を聴いて確認してほしい。

(さらに…)

interpol-turn
1.Untitled
2.Obstacle 1
3.NYC
4.PDA
5.Say Hello To The Angels
6.Hands Away
7.Obstacle 2
8.Stella Was A Diver And She Was Always Down
9.Roland
10.The New
11.Leif Erikson

聴くごとに病み付きになる、不穏な空気をまとった代表作

黒いスーツを着こなした紳士的なルックスで、闇夜を駆け抜けるような演奏で不穏な空気感を醸し出し、クールすぎる楽曲を数々生み出してきたバンド…。それこそがInterpolである。正直、彼らの演奏で作り出される楽曲は、予備知識がないと退屈に感じてしまいそうなほど淡々としている。しかし、そんな彼らの渋みの効いた音楽にカッコよさを見出だせたなら、きっとあなたはこれからポップな音楽が退屈に感じてしまうかもしれない。

そのダンディーな歌声と、暗い世界観も相まって、常にJoy Divisionの名前がついてまわるバンドでもあり、同時にポストパンクというジャンルの正当な後継バンドでもある。特に2002年にリリースされた本作は、ポスト・パンク・リバイバルの直接的なきっかけを作った、00年代を語る上での重要作と言える。

1997年にアメリカ・ニューヨークで結成されたInterolだが、本格的にこのバンドの人気に火をつけたのはイギリスである。そもそもイギリスは、ニューウェイブを目の前で経験してきたのだから、いち早く見出すことができたのは当然ともいえる。そして00年代といえば、彼らのようにイギリスの音楽文化に影響された米国バンドが英国で花開いた、というケースが非常に多く見られ、彼らはその一員として活躍。(他にも代表的なバンドはThe Strokes, The Killersなど)。イギリスのロック文化の影響力、また音楽に対する寛容さを改めて感じさせた年代と言えよう。

さて、現代のポスト・パンクの代表作とも言える本作だが、闇に覆われた雰囲気とともに緊迫感のある演奏がとにかく印象的。4人それぞれのパートの主張も強く、これらの数少ない音で技工を凝らし作られたような、壮大な曲展開が美しくもあったりする。特にギターの音色は、夜の空気を切り裂くヘッドライトのような鋭さを持ちながら、一方で街灯の明かりのような暖かみもあったりと、特に耳に残る。ベースとドラムはそれぞれが力強く支えあいながらも、疾走感を持ちあわせていてカッコいい。そしてイアン・カーティスばりの太い歌声を披露するヴォーカルは、呪術師のように禍々しい。それぞれのパートが織りなす彼らの演奏は、聴くごとに病みつきになる。

いきなり不穏な音色で始まるインスト#1「Untitled」から引きずり込まれ、名曲#2「Obstacle 1」で早くも虜に。以降も#4「PDA」や#9「Roland」といった、”これぞポスト・パンク”といった疾走感のある楽曲が続く。やはりこれらはクールさが際立つが故に単純にカッコいい。

他にも、ギターの音色を際立たせた楽曲も魅力的である。流麗なギターが印象的な#3「NYC」を始め、震えるようなギターサウンドが不気味でもある#6「Hands Away」は、暗闇で灯る蝋燭の灯を思い起こさせる幻想的なものばかり。

一見冷めていて、じっくり耳を傾けないと多くのリスナーが素通りしそうなバンドではある。もっと言えば彼らのこの音楽性は、以降のアルバムでも驚くほど変わらない。そのテクニカルな演奏、モノクロ感のある暗い雰囲気、技工を凝らした美しく壮大な展開は、ニューウェイブ・ポスト・パンクを通過してきた耳には懐かしさを、現代の若者には新しさを感じさせるはずだ。新旧のリスナーが本作を聴いて新たな時代を感じたことだろう。実際、”ポスト・パンク”は00年代の重要なキーワードとなり、多くのフォロワーが出現した、不穏な空気をまとった名作である。

beachboys-petsounds
1.Wouldn’t It Be Nice
2.You Still Believe in Me
3.That’s Not Me
4.Don’t Talk (Put Your Head on My Shoulder)
5.I’m Waiting for the Day
6.Let’s Go Away for Awhile
7.Sloop John B
8.God Only Knows
9.I Know There’s an Answer
10.Here Today
11.I Just Wasn’t Made for These Times
12.Pet Sounds
13.Caroline, No

何と言われようと名作

本作がリリースされてもうすぐで50年。今なお語り継がれているビーチボーイズの代表作「Pet Sounds」。ロックの名盤としてもおなじみなので、ロックファンはご存知のことだろう。ただ、数多くのロックの名盤の中でも、とりわけ理解されにくい作品という印象もある。

そもそも、ビートルズの「ラバー・ソウル」にブライアンが対抗心を燃やして作られたという経緯があり、今までの作品とは音楽性が異なる本作。今までが波と戯れている作品とするならば、本作は海岸から海を眺めているような、内省的な雰囲気を醸し出している。そのため、実際リリース当時も酷評が多かったという。そこから長い歳月をかけ評価されていき、現在の”ロックの名盤”という位置にまで辿り着いた。

また本作は”最も美しいロックアルバム”とも言われる。思うに彼らのサウンドは、とても純心さを感じさせるのだと思う。暖かくて幸福感に満ちたサウンドは、我々の心を洗うかのようだ。もっと言えば、後のポップミュージック、サイケデリック・ロック、ドリームポップなどのすべての基板は、この作品で出来上がったといってもいいかもしれない。コーラスワークによって作られた、輪郭が曖昧な世界観。そして爪弾くギターの一音一音はキラキラしていて、水面に反射した光の輝きのようである。このような浮遊感のある空間を作り上げたビーチボーイズのサウンドは、身を委ねたくなるほどに心地よい。リリースされた時代から鑑みれば、そんな美しい音で組み立てられた本作の凄さは、何となく伝わると思う。

とは言え、発売当時から現在に至るまで、人によっては評価がとても別れる作品であるのも前述のとおり。本作がリリースされる以前のファンからはその音楽性の変化で敬遠され、後追いのロックファンからは理解され難いという理由で避けられることも多い。個人的には、煌めくようなバンドアンサンブルと、ブライアン・ウィルソンのセンス良さに唸ったものである。

英国のビートルズと切磋琢磨しながら時代を先導したバンドであり、今活躍するバンドのルーツを辿れば、ビートルズかビーチ・ボイーズにたどり着くのではないだろうか。ビートルズがロックサイドのルーツならば、ビーチ・ボーイズはポップサイドのルーツ。特に本作は、ポップの基板を作り上げたビーチボーイズが生み出した最高傑作。もっと言えば、ブライアン・ウィルソンの完璧主義と才能を最も感じさせる作品。

(さらに…)

limpbizkit-chocolatestarfish
1.Intro
2.Hot Dog
3.My Generation
4.Full Nelson
5.My Way
6.Rollin’ (Air Raid Vehicle)
7.Livin’ It Up
8.The One
9.Getcha Groove On
10.Take a Look Around
11.I’ll Be OK
12.Boiler
13.Hold On
14.Rollin’ (Urban Assault Vehicle)
15.Outro

リンプの傑作にして、ラップメタルの頂点に君臨するアルバム

汚らしい隠語満載、そしてとても長いタイトルがもうインパクト抜群。大ヒットの前作からの勢いをそのままにリリースとなった約一年ぶりのオリジナルアルバム。本作は、M:I-2のテーマソングともなった#10「Take a Look Around」を始め、ドラマティックな楽曲が増えた印象。勢い、話題性、完成度の高さなどが相まって、前作以上の売上を記録。バンドの絶頂期を象徴する作品である。個人的にもリンプの代表作として推したいのはコレである。

前作は脳天気なイメージを持たせる作品だったのに対し、本作ではメロディアスなパートが積極的に組み込まれたことで、シリアスな雰囲気がとても強くなっている。そんな静かなメロディパートから、彼らお得意の極悪ギターリフへと変貌してく展開がまた強烈。静と動の対比を前作以上に感じさせ、それが音に別の意味での重たさを加え、また爆発力をより研ぎ澄まされたものにしている。これらの点から、なかなか完成度が高く、器用に作られた作品だという風に感じた。

#2「Hot Dog」~#4「Full Nelson」までは、前作の雰囲気を踏襲しつつ、前作以上に重たいサウンドで攻め立てる。前作が気に入っていた方にとっては、この三曲は特に気に入ることだろう。ただ本作の魅力は#5「My Way」から始まるといっても過言ではない。霧が立ち込めるような静けさをもったオープニングが新鮮なこの曲は、このアルバムのシリアスサイドを特に強調している。他にも#7「Livin’ It Up」、#10「Take a Look Around」、#11「I’ll Be OK」、#12「Boiler」などは特にドラマティックで、美しささえ感じてしまった。

個人的に#7「Livin’ It Up」がこのバンドで一番好きな楽曲。Aメロの美しさもさることながら、一つの曲の中で様々なリフが飛び出し、飽きずに何回も聴きたくなる。聞き所満載の名曲。

メロディアスさばかり強調して書いたが、音の重量感も本作のほうがあると思う。本作は、色んな意味で軽かった前作と比べると、明らかな進化を感じさせた。フレッドのラップは当然好き嫌いが別れるところだと思うが、やはり彼らの魅力は、太いギターリフによる暴力的なサウンド。それを十二分に活かし、新たな音楽性を見出した彼らの代表作。ラップメタルの頂点にして完成形と言える作品である。

(さらに…)

limpbizkit-Significantother
1.Intro
2.Just Like This
3.Nookie
4.Break Stuff
5.Re-Arranged
6.I’m Broke
7.Nobody Like You
8.Don’t Go off Wandering
9.9 Teen 90 Nine
10.N 2 Gether Now
11.Trust?
12.No Sex
13.Show Me What You Got
14.A Lesson Learned
15.Outro

シーンを揺がした大ヒット作

Limp Bizkitにとって2枚目となった本作は、700万枚の大ヒットを記録した出世作。これにより、ラップメタルがシーンに台頭。次作「Chocolate Starfish~」とともに一時代を気づいたモンスターアルバムである。#7「Nobody Like You」にはKoRnのジョナサン・デイヴィスが参加。#4「Break Stuff」のPVには数多くのスターが登場しており、もはやお祭り騒ぎといった様相を呈している。

一方でこの作品のヒット以降、様々なミュージシャンから疎まれる存在ともなってしまい、なんとも罪深さを感じさせる作品となっている。・・・まあビッグマウスだったフレッド・ダーストにも原因があるんだけれども。

代表曲#3「Nookie」、#4「Break Stuff」を聴けばわかるように、その暴力的なまでに重たいリフ、盛り上げ方の上手い曲構成などはバンドの魅力だろう。後半に新たなリフを持ってきて大きな波を作り出すのは、以降でもLimp Bizkitの基本の手法となっている。本作ではこの構成は全くぶれておらず、安心して聴くことが出来る。音や構成が荒くてアングラ感が強かった前作に対し、とても整った音の並びで聴きやすく、メジャー感がでたという印象。大衆向けになったとも言えるだろうけど。

シーンを揺るがしたとはいえやはりこの手のバンドは、メロコアと同様、キッズ向けという印象が強く、いかに若いうちに聴けるかが重要な気がする。私はと言えば、洋楽聴き初めの高校生の時に知ることが出来た。KoRnを通してこのバンドを知り、ブッ○オフで本作を入手し、聴き倒すほどハマったことで本格的に洋楽デビューを実感。そこからニューメタル全般を漁り、ようやくHR/HMに行き着いたという個人的な経緯もあり、とても思い入れのある作品だったりする。

(さらに…)

cibomatto-stereo
1.Working For Vacation
2.Spoon
3.Flowers
4.Lint Of Love
5.Moonchild
6.Sci-Fi Wasabi
7.Clouds
8.Speechless
9.King Of Silence
10.Backseat
11.Blue Train
12.Sunday Part I
13.Sunday Part II
14.Stone
15.Mortming
16.Country

様々なジャンルがぶつかり合った”なんであり”の音楽

Cibo Mattoは、ニューヨーク在住の日本人、ハトリ・ミホとホンダ・ユカによるユニット。本作は2ndアルバムにあたる。

このユニットの特徴といえば、なんと言ってもその柔軟すぎる音楽性。一曲の中でも様々なジャンルの音楽が混在し、もはや何でもありの様相を呈している。いろんなジャンルを飲み込んで独自に消化しているというよりは、様々な音楽ジャンルをぶつけあっているようなごった煮感。おそらく音楽に関する造詣がとても深いのだと思う。

デビュー・アルバム「Viva la Woman」は発売前からそのコンセプトなどから話題性が強かったようだが、本作は明らかなビルドアップ、スケールアップを果たしている。クラブ向きの明るいポップス、硬いリフを用いたヘヴィメタル、要所要所で披露されるラップ、ボイスパーカッション、管楽器を用いてバーの落ち着いた雰囲気を作り出したり、涼しくて心地よいメロディーを際立たせたりと、まさに”なんでもあり”。そんなどこまでもごった煮な音楽にもかかわらず、非常に聴きやすいのが本作の最大の特徴。おまけにユニークな曲が多いので何回も聴けてしまうのも魅力である。

曲単位で紹介するときりがないが、聴いてて面白かったのが#4「Lint of Love」。管楽器が強調されたクラブ向きの曲なのだが、後半からメタルリフが入り込み一気に世界観が変わる。交じり合うというより、ぶつかり合っているようなそれぞれの音は、思わず笑みがこぼれてしまうほどの衝撃を与える。そして本作のベストトラックとも言える#5「Moonchind」は、心地よいシンセとアコギがとても涼しげに響く穏やかな一曲で、夜のドライブに聴くといいかも知れない。

前作で注目されたこのユニットだが、個人的には本作「Stereo Type A」を推したい。スケールの大きさ、聴きやすさ、そしてなんといってもその独創的な音楽性などから、もっと評価されるべき作品だと思う。

nin-broken
1.Pinion
2.Wish
3.Last
4.Help Me I Am In Hell
5.Happiness In Slavery
6.Gave Up

98.Physical (You’re So)
99.Suck

拷問機械の暴走

デビュー作「Pretty Hate Machine」に続いてリリースされた、激情感溢れるミニアルバム。

バンドは現在までに数々の作品をリリースしてきたが、ここまで直接的な攻撃性、暴力的な要素を備えている作品はないだろう。インダストリアルメタルを大衆に根付かせたのも、この作品と次作「The Downward Spiral」によるところが大きい。本作には#2「Wish」、#5「Happiness In Slavery」など、伝説となっている過激なPVとともに、未だに人気の高い曲も収録。

強烈なギターリフが印象的な#2「Wish」#3「Last」の二曲は、同じ質感を持った、まるで双子の兄弟のような両曲。インダストリアル・メタルの無機質なサウンドのカッコ良さをお腹いっぱい味わえる。しかし、その後のインスト#4「Help Me I Am In Hell」~#5「Happiness In Slavery」に達すると、”この領域に踏み込んで大丈夫なのか?”という不安感が一気に高まる。カッコ良さを味わう前に、”なんだこれは”というのが第一印象だった。

本作を聴いて抱くイメージとしては、無人の工場に忍びこむやいなや、機械の暴走により体をむちゃくちゃに切り刻まれてしまうような、無機質で理不尽な恐怖。聴き進めていると、身の危険すら不安になってしまうほどの禍々しさを感じてしまう。#5「Happiness In Slavery」はそれを恐ろしいくらい体現しているが、曲もさることながらあのPVは異常としか思えない。怖いもの見たさで見ようと思う人は、強い覚悟をした方がいいだろう。

Nine Inch Nailsはオルタナティブロックの雄として、その存在感、音楽性で時代を動かした重要バンドの一つ。ただ、彼らのの音楽は難解という印象が強く、次作も傑作と言われながら聴く人は大幅に限られている。そこで最初におすすめしたいのが今作「Broken」ということになるだろう。

nirvana-nevermind
1.Smells Like Teen Spirit
2.In Bloom
3.Come As You Are
4.Breed
5.Lithium
6.Polly
7.Territorial Pissings
8.Drain You
9.Lounge Act
10.Stay Away
11.On a Plain
12.Something in the Way

完成されてしまったアルバム

もはや説明不要、90年代はおろか、ロック史を代表する名作「NEVERMIND」。本作、そして本作に収録されている#1「Smells Like Teen Spirit」のリリースは、それまでのロックシーンが一瞬にして変わってしまう出来事であった。それはまさに事件とも言えるものだったと思う。

NIRVANAのブレイクをきっかけにグランジブームが巻き起こり、インディーロックバンドがシーンを席巻。そして革新的で社会的なバンドが次々と登場する、オルタナティブロックの下地をも作ってしまったのである。というわけで、90年代の音楽はこのアルバムなしには語ることは出来ない。「NEVERMIND」がリリースされた1991年は、歴史的名盤が数多く発表され、ロックシーンの中でも特に重要な年に位置づけられているのだが、本作の重要度はその中でもトップに君臨するほどだと思う。

これだけの影響力と支持を誇る作品ではあるが、当の本人たちは、本作の大ヒットには快く思っておらず、むしろ否定的である。それはアンダーグラウンド志向で行ってきたカートにとっては、自身に対する大きな裏切りとなり、名声による重圧も相まって、この辺りからカートの精神は不安定になっていく。

NIRVANAはそのアンダーグラウンド志向の強さから、70年代のパンクを土台にSonic YouthやPixiesのような音楽を目指していた。しかし本作でポップな路線に向かったこと、当時の冷えきったロックシーンに求められたことなどが引き金となり、幸か不幸か爆発的なヒットにつながったと言える。

前作「Bleach」は、お金をかけずに作られたローファイなサウンドと重層な音が楽しめるのだが、本作はプロデューサーの意向もあり、前述通りとてもポップで綺麗にまとまっており、耳馴染みの良い作品になっている。それはロックファンのみならずとも聴けるものであり、幅広く支持された大きな要因である。

#1を筆頭に#5「Lithium」など、サビとのメリハリがある曲は、非常にシンプルながら聴きやすく、本作の魅力を担っている二曲である。ただ、彼ららしいのは#4「Breed」、#7「Territorial Pissings」、#10「Stay Away」といった、ひたすら駆けまわる荒々しい曲だろう。とはいえ、これらも奇をてらう展開は避けており、とても聴きやすい。

本作は、悪い言い方をすれば”作られた”作品である。「NEVERMIND」は、完成されている作品で出来が良いのは言うまでもないのだが、彼らの真の魅力はアンダーグラウンド故の”未完成”な部分にあると思う。そのため、本作をきっかけにNIRIVANAを聴き始めた方には前後の作品も是非聴いてもらいたい。

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