xx
1.Intro
2.VCR
3.Crystalised
4.Islands
5.Heart Skipped a Beat
6.Fantasy
7.Shelter
8.Basic Space
9.Infinity
10.Night Time
11.Stars

ミニマルで美しい新生ドリーム・ポップバンド

2005年に結成した新生ロックバンド、The XXによるデビュー作。余計な音が排除されたミニマルなサウンドでドリーミーな音楽を作り上げるバンドが00年代にいくつか現れてきたが、The XXはその中の筆頭といえる存在である。

このバンドとの出会いは2010年に上映されたミステリー映画「告白」だった。押しつぶされんばかりの緊張感の中、それを忠実に表現した重苦しく静かな楽曲#6「Fantasy」。ホラーじみた不気味さもあり、劇中のシーンに怖いくらいマッチしていた。頭がおかしくなりそうなほど暗いが、美しさも同居していて、とても癖になる。Maasive Attackの「Mezzanine」に近い感じ、と表現すれば一部の人にはわかるかもしれない。

音数がとても少なく、ヴォーカルは呟くように歌う。黒で塗りつぶすようにベース音が響き渡り、まるで殺人事件でも起こりそうな真夜中の人気のない高架下を再現しているようだ。

しかし、このバンドの肝は、ただ暗いだけではなく、浮遊感のある美しい音色を織り交ぜ、中毒性のある音作りをしているところである。地味に見える個々の楽曲の中に、それぞれ特徴的なメロディがあることに気づくと、とても心地よく感じて何度も聴きたくなる。そのため、Joy Divisionのような鬱になるような音楽ではなく、情景などを浮かび上がらせるような音楽のように感じた。

このようなバンドがインディから現れてはプッシュされるイギリスは、やっぱりセンスがあるんだなーと実感。このような音楽は、心のデトックス効果がありそうで、無性に聴きたくなる。やっぱり暗い音楽は個人的に好きだ。

APOF-RoadEyes
1.Road Eyes
2.Flashlight Planetarium
3.Inside Out
4.Raphael
5.Echo Park / Infinite Delay
6.Wave Of The Future
7.So Naturally
8.Water From The Sun
9.Inspects The Evil Side

バンドサウンドを貫くニューゲイザー、待望の新作

マイケルフィーリックによるソロプロジェクト、Amusement Parks on Fire(以下APOF)の待望の3rdアルバム。

正しく”待望の”と言わざるを得ない、ニューゲイザーバンド4年ぶりの新作。フロントマンであるマイケルのセンスが溢れた前作『Out of the Angeles』は、往年のシューゲイザーサウンドを意識して制作されたそうで、コンセプチュアルな名作となった。これにより、APOFはニューゲイザーバンドの中で頭一つ秀でた存在となったと思う。

ニューゲイザーシーンは、エレクトロニカを組み合わせたグループが多い中、APOFはあくまでバンドサウンドを強調した、重量感のあるサウンドを貫いているのが魅力的。層を重ねた轟音ギターが空間を支配する様は何度聴いても圧巻である。

先行で公開された新曲#2「Flashlight Planetarium」は、2分ほどで駆け抜ける楽曲だが、同じフレーズを繰り返す、今までになくストレートでシンプルな楽曲。リフを弾いているときに身体を上下させているマイケルを見ていると、厚みのあるサウンドに押しつぶされそうになっているかのようにも見える(笑)それほどにサウンドに力強さを感じた。

上記のようなパワフルな曲から突如としてノスタルジックな楽曲(#3「Inside Out」)に切り替わるのは相変わらず。本作もこのように波の満ち引きのように起伏のあるアルバム構成になっており、前作同様アルバム全体を意識した内容となっている。間違いなく前作に引けを取らない名作となっている。

その他の楽曲としては、#8「Water From The Sun」がお気に入りで、コーラスのハーモニーが美しく、ギター音の波とともに包み込まれるように空間に鳴り響く。2分に渡るギターノイズのアウトロも心地よい。

待ちに待った新作をリリースした彼らの作品は、期待を裏切らないサウンドという印象で、良くも悪くも現状維持、といった感じだった。前作と今作で現在の音楽性をやりきった感もあったので、次作では大きな変化を遂げるんじゃないかと期待してしまう。

revolver-babysangry
1.Venice
2.Painting Pictures
3.Red All Over
4.Heaven Sent An Angel
5.Drowning Inside
6.Molasses
7.Cherish
8.Since Yesterday
9.Don’t Ever Leave

センスの良さを見せつけた、シューゲイザーブームの一翼

90年代初頭のシューゲイザームーブメントの一角を担った、Revolverによる1stアルバム。ただし本作は、3枚の初期シングルをまとめた編集盤といった内容である。3ピースの彼らが鳴らすサウンドは、ギターサウンドの厚みと疾走感、力の抜いたヴォーカルと柔らかいメロディーが溶け合い、シューゲイザーを体現していた。

Revolverは曲の構成が比較的はっきりとしているバンドで、メロディアスなパートと轟音パートが波のように行ったり来たりするサウンドで魅了した。アメリカのグランジ寄りの疾走感と荒さを含んだその演奏は、美しさとかっこよさを兼ね揃えていて、非常にセンスの良いバンドだったように思う。そのため未だにシューゲイザーファンからの支持が根強いバンドでもある。

その中でも特に存在感を放っているのが、1#「Venice」。彼らの代表曲でもあるこの曲は、疾走感と重量感のあるリフが心地よい名曲である。

彼らは、本作と次作『Cald Water Flat』の2作を残し、シューゲイザー衰退とともに姿を消してしまった。シューゲイザー再評価の現在も活動の一報はなく、過去の作品も入手困難になっている。そんなこともあり、神格化されつつあるバンドの一つであると言える。

ローファイ気味の厚みのあるギターと、優しいメロディとのコントラストが心地よく、シューゲイザーファンであれば絶対に好きになるバンドであると思う。

Police-ReggattaDeBlanc
1.Message in a Bottle
2.Reggatta de Blanc
3.It’s Alright for You
4.Bring on the Night
5.Deathwish
6.Walking on the Moon
7.On Any Other Day
8.The Bed’s Too Big Without You
9.Contact
10.Does Everyone Stare
11.No Time This Time

3ピースの可能性を広げた作品

1977年にデビューして以後、数枚の作品をリリースして1986年に解散。わずか10年ほどの活動期間だったが、その間に優劣つけがたい5枚の名作を残した。どの作品にも共通して言えるのは、メンバーの高い技術力と、余計な音が削ぎ落とされたタイトな演奏である。スティングの肉体的なベース、アンディー・サマーズの流麗なギター、スチュワート・コープランドの緻密なドラミング…。彼らを語る際は、3ピースでの彼らの高い演奏技術について外すことは出来ない。

デビュー作『Outlandos D’Amour』は、パンクの流れを汲もうとして作られたと言われていて、傑作とされる5th『Synchronicity』と比較して聴くと、確かにスピード感や荒々しさを感じる。ただ洗練されすぎてて、他のバンドと完全に一線を画している。レゲエとロックを融合した音楽性も手伝い、2ndの本作『Reggatta de Blanc』では、1stの荒々しさを衰退させ、マイルドでスピード感のあるサウンドに仕上がっている。

個人的に、5th『Synchronicity』から遡る形で本作を手にしたが、名曲#1「Message in a Bottle」を聴いて、その駆け抜けていくサウンドに一気に惹きつけられた記憶がある。また、それとは対称的な楽曲でとも言える#6「Walking on the Moon」は、ギターの旋律と厳かな雰囲気が、まさにタイトル通りで非常に美しい。本作は前作同様、3ピースによる演奏に比重が置かれており、ロックバンドとしてのカッコよさはそのままに、3ピースで表現できる可能性を大きく広げようとした作品ではないだろうか。それにしてもここまで演奏でリスナーを惹きつけることができるバンドは、そういないのではないだろうか。

上記以外で印象的な曲は、インスト#2「Reggatta de Blanc」。徐々にテンションを上げていき、高揚感を増していく曲で、スチュアートのドラムの力強さが際立っている。

恐らく今のロックリスナーは『Synchronicity』からThe Policeを知る方が多いかと思われるが、演奏に迫力があり、ロックバンドとしてのカッコよさを味わえるのは初期の二枚の作品だと思う。是非とも遡って『Outlandos D’Amour』とともに聴いていただきたい。

verve-forth
1.Sit and Wonder
2.Love Is Noise
3.Rather Be
4.Judas
5.Numbness
6.I See Houses
7.Noise Epic
8.Valium Skies
9.Columbo
10.Appalachian Springs

11年ぶりの贈り物

あの伝説的バンド、The Verveが帰ってきた!
1999年の解散から約8年、2007年に奇跡の再々結成を果たした彼ら。作品としてはなんと11年ぶりのリリースとなる。SUMMER SONIC08にヘッドライナーとして出演したことより、日本初公演まで果たしてくれた。(未だに行かなかったことを後悔している…)

本作のリリースがアナウンスされた頃の情報では、サイケデリックサウンドへの回帰が謳われており、実際それに近い作風となった。前作は言わずとも知れた傑作『Urban Hymns』だが、こちらはアコースティックなサウンド主体の歌モノであり、彼らの本質から外れていた感が否めなかった。個人的に彼らの本質は、初期のサイケデリックサウンドだと思っていたので、とても嬉しかった。

『FORTH』を聴いてみた印象は、確かに1st辺りのサイケ感を意識しているような感じ。ただ、初期のそれとは全く違う感触の音、といった印象だった。1st『A Storm in Heaven』は、吹き荒れる轟音とドリーミーな音色が織りなすサウンドで、リスナーを絶景・秘境の地に誘う、芸術的な作品だった。対して『Forth』は、即興演奏の中で作られたかのような曲が多く、その中でリチャードの歌声が合いの手を入れるように響き、溶け込んでいく。こちらも個々のサウンドやメロディが柔らかくて穏やかで、心地よく聴けてしまうが、バンドとしての魅力も強く感じさせた。ライブ映像なども拝見したが、どの曲も非常にライブ映えする曲ばかりである。これはきっと、長い間聴くほどに愛着の湧く作品になっていくに違いない。

これは、特別違うところを目指そうと確信犯的に作られたものではなく、久々に4人で集まって音を出したらこうなった、というような自然発生的な産物に思えた。どちらにせよ、これは紛れもなくThe Verveの音だと納得がいくし、11年ぶりに彼らが作り出した作品としてすんなり受け入れられた。…というより、個人的には前作よりもお気に入りである。

シングルカットされた#2「Love is Noise」は、大ヒット曲「Bitter Sweet Symphony」に匹敵するアンセムもあり、復活を告げる曲としては申し分ないといえる。他にも、嵐が立ち込めるようなダークさが癖になるオープニングトラック#1「Sit and Wonder」、まばゆいほどの光にゆったりと浸かるような#4「Judas」、後半の狂気を含んだ演奏で一気に持っていく8分に及ぶトラック「Noise Epic」など、特筆したい楽曲は目白押し。

私はニックのギターサウンドや彼の佇まいがとにかく好きだ。ポーカーフェイス黙々とうつむいて演奏する姿はまさに職人。さらにライブでは曲の中で自由奔放に音色をかき鳴らすなど、大胆な一面もあり、The Verveのサウンドの核を担っている。

『Forth』は、『Urban Hymns』の延長上の作品と予想して聴くとがっかりしてしまうが、大きなブランクも感じさせずに作り上げた、現在の彼らが届けてくれた贈り物のような名作。再々々結成してほしいな。

who-WhosNext
1.Baba O’Riley
2.Bargain
3.Love Ain’t for Keeping
4.My Wife
5.The Song is Over
6.Getting in Tune
7.Going Mobile
8.Behind Blue Eyes
9.Won’t Get Fooled Again
10.Pure and Easy
11.Baby Don’t You Do It

革新性とThe Whoらしさ

The Beatles、The Rolling Stoneと並び、後世のロックに多大な影響を与え続けているのがThe Whoである。荒々しいサウンドと破天荒なライブパフォーマンス、そして革新的な音楽性なども相まって、60年代~70年代を中心に活躍し、ロックの可能性を押し広げた偉大な存在である。ロックオペラを確立した『Tommy』、そしてシンセサイザーをいち早く取り入れた本作『Who’s Next』などから、その革新性は大いに伺える。

本作は、仰々しいシンセサイザーが印象的な#1「Baba O’Riley」がピックアップされがちだが、個人的ベストトラックは#2「Bargain」。薄いシンセ音をバックに畳み掛ける展開が特に好きで、この曲でこそシンセサイザーが有効に使われていることを感じることが出来る。確かに#1「Baba O’Riley」のシンセの使い方は、時代の変わり目を感じさせるもので、無条件に興奮するが、彼らはそこに執着はしなかったようである。

つまり、革新的な音を実験的に色濃く使っているわけではなく、あくまで曲の雰囲気・世界観を表現するために使っているということが分かる。というわけで、The Whoのハードな演奏や分厚いリズムセクションは健在だし、鍵盤やギターの穏やかな音色も相変わらず聴くことができる。本作が時代を跨いで支持され続けている理由の一つは、変化はあっても変わらないThe Whoらしさ、なんだと思う。

本作は元々、別のコンセプト(ピートのアイデアで、前作『Tommy』の第二弾)で制作される予定だったが、それが一旦白紙になり、本来の本作が制作されたそうである。このようにピートの意図とは違う形で作られた作品だが、結果的にThe Whoの評価をより一層高めることとなった。

個人的にThe Whoを本格的に聴き出したのは本作からである。曲の流れが重要な『Tommy』のようなコンセプトアルバムではないので、曲単位で楽しめるし、何よりそれぞれの曲の出来が良いので、とっつきやすさで言えば本作が一番かなと思う。

70年代に突入してからは、ロックの表現方法は破竹の勢いで増えていった。『Who’s Next』は、そんなロック黄金期の始まりを告げた作品、と言えるかもしれない。言うまでもなくロックの名盤である。

primalscream-xtrmntr
1.Kill All Hippies
2.Accelerator
3.Exterminator
4.Swastika Eyes (Jagz Kooner Mix)
5.Pills
6.Blood Money
7.Keep Your Dreams
8.Insect Royalty
9.MBV Arkestra (If They Move Kill ‘Em)
10.Swastika Eyes(Chemical Brothers Mix)
11.Shoot Speed/Kill Light
12.I’m 5 Years Ahead of My Time

新たな時代を”聴かせた”、攻撃的な傑作

ご存知、作品をリリースするごとに音楽性を変化させる”カメレオンバンド”、Primal Screamの名作。その異名が表す通り、彼らの音楽性を一言で語るのはとても難しい。しかし、シーンを感じ取る嗅覚は鋭く、常にその時代を反映した作品を作り続けてきた。『Screamadelica』に至っては、世のアシッドハウスシーンを先導するほどの力を持っていた。

そして時は移り、音楽のジャンルが大きく枝分かれをする直前の2000年。この時期に彼らが作り上げた音楽は、エレクトロを取り入れた無機質で鋭利なサウンドだった。本作『XTRMNTR』は、今までにないほどクールな作品となり、カミソリで切り刻むような機械的で冷たい質感が印象的である。

“破壊”なんて言葉もキーワードとしてチラつく、不穏かつ攻撃的な本作。政治的な言葉が多く含まれた歌詞や、ノイズや電子音が飛び交う楽曲、スピード感のある楽曲などから、そのスリリングな雰囲気を堪能できる。そして何と言っても、今まで複数のジャンルを横断してきた彼らならではの個性豊かなサウンドが極まっており、個々の楽曲も個性的で粒ぞろい。それなのに統一感を持った作品に仕上がっているのは、見事という他無い。

緊迫感の有る#1「Kill All Hippies」から幕を開け、その後爆音で襲いかかる#2「Accelerator」は色んな意味で衝撃的。ちなみに本作にはMVBのケビン・シールズが参加しており、ノイズまみれの#2に参加したことは想像に難くない。そして個人的に大好きなのが名曲#4「Swastika Eyes」。当時のPrimal Screamを象徴する楽曲と言われており、クラブやライブの定番ということもありファンからの人気が高い曲である。中盤のインスト#6「Blood Money」は、ベースとドラムが先導する芯の太い楽曲で、こちらも大好きな一曲。

個人的にPrimal Screamでは最も好きなアルバムで、未だに度々聴くことがある。ちなみに本作は商業的にも成功し、00年代の名盤としてもよく取り上げられる。そのことからも間違いなく彼らの代表作の一つで、新たな時代のサウンドを先導して鳴らすことに成功したのではないだろうか。

massiveattack-mezzanine
1.Angel
2.Risingson
3.Teardrop
4.Inertia Creeps
5.Exchange
6.Dissolved Girl
7.Man Next Door
8.Black Milk
9.Mezzanine
10.Group Four
11.(Exchange)

深淵に広がる未知なる美しさ

1988年から活動を開始して以後、クラブシーンを牽引し続けているMassive Attack。彼らは、ヒップホップやロック、レゲエ、ダブなどの要素を巧みに盛り込みつつ、とても内省的な音楽をつくり上げる。中でも本作『Mezzanine』に関しては、その雰囲気を始め、クオリティが頭一つ抜けている傑作と言える。

その重苦しさと言ったら、まるで光の閉ざされた深淵を、手探りで動きまわっているかのよう…、とでも言おうか。地を這うような重低音が支配するこの世界観は、非常にゆったりと進んでいき、非常に重苦しい。ただ本作が白眉なのは、そんなダークさに神々しさが組み合わさり、とてつもない緊張感が生み出されていることではないだろうか。サンプリングを始め、サウンドのチョイスや組み合わせがとても美しく、まるで別次元の全く新しい世界を見せられているような感覚に陥る。

全体を通して非常に素晴らしい作品だが、中でも冒頭の3曲の存在感が強い。ロック色の強い#1「Angel」は、抑揚のついた曲展開がかっこ良すぎる。そして3Dとダディのボソボソと囁くラップがクールな#2「Risingson」から、Cocteau Twinsのエリザベス・フレイザーが参加した#3「Teardrop」へと続いていく。#3は、本作のダークさと神々しさが見事に表現された、彼らの代表曲。

Massive Attackは、計算された冷めっぷりがとてもカッコいいと思う反面、支持は少ないと思っていた。しかし、それを極めた『Mezzanine』が彼ら最大のヒットを記録したという事実は、改めて聞いても驚きである。ビッグビートが流行し、音圧のある攻撃的な電子音楽が流行する中、それに逆流するかの如くサウンドをそぎ落とし、攻撃力だけではなく空気感を重視した作風は見事。時代に左右されない普遍的なカッコよさを湛えた名作である。

SecretShine-Untouched
1.Suck Me Down
2.Temporal
3.Spellbound
4.So Close I Come
5.Into the Ether
6.Toward the Sky
7.Underworld
8.Sun Warmed Water

シューゲイザーの伝道師

COTDのNARASAKIがインタビューで、最もシューゲイザーしているバンドとしてSecret Shineの名を上げて絶賛しているのを見たことがある。RideやMVBほどのブレイクをしたとは言いがたいが、間違いなくムーブメントの一角を担ったバンドで、ジャンルの音をものの見事に体現している。

ブームの流れを受けながら1991年より活動を始めた彼ら。デビュー作『Untouched』が発表されたのは1993年で、ネオアコレーベルと言われるサラレコードからリリースされている。空間系のエフェクトをふんだんに用いたサウンドメイクにより、ドリーミーかつ荒々しい音を作り上げており、まるで霊峰から響いてくる音色のように神々しくもある。そんなSecret Shineの音は、どのバンドよりもシューゲイザーの世界観やサウンド、イメージを体現しているのではないだろうか。

重層かつまろやかなギターノイズのアンサンブルは本当にうっとりするほど心地よく、そこに折り重なる男女混声の歌声・コーラスが、霊峰にこだまするように儚げに響き渡っている。Rideのような焦燥感を持ちながらも、夢幻的な空間も重視したSecret Shineは、ジャンルを象徴するサウンドを披露していることもあり、初めてシューゲイザーに触れる方にもお勧めしたい名作である。

長年廃盤となっていた本作だが、2015年についに再発された。当時のシューゲイザーの名作が続々と再発されていく中、本作の再発は”待ちに待った”といった感じで、ファンにとってはとても喜ばしい。

2008年には14年ぶりとなる2ndアルバムをリリースし、以降はコンスタントに作品をリリースしそうな勢いを見せており、シューゲイザー再評価の動きをとても良く感じさせるバンドである。今後もシューゲイザーの伝道師として益々の活躍を期待したいところである。

(さらに…)

supergrass-coco
1.I’d Like to Know
2.Caught by the Fuzz
3.Mansize Rooster
4.Alright
5.Lose It
6.Lenny
7.Strange Ones
8.Sitting up Straight
9.She’s So Loose
10.We’re Not Supposed To
11.Time
12.Sofa (Of My Lethargy)
13.Time to Go

みんな大好き、愛すべきブリットポップ

“みんなが二番目に好きなバンド”…自分たちのことをそんな風に表現したこともあった彼ら。ただこの言葉は、自分たちの存在感・人気を上手く言い当てたものであるように思う。1995年のデビューから2010年の解散に至るまで、作品を出すごとに深化を遂げていき、常に第一線で活躍してきた安定感のある活動履歴は、他のバンドマンからすれば非常に理想的なものであったと思う。英国では非常に高い人気を誇っていた大物バンドであったにもかかわらず、そんな雰囲気は全く見せていなかった(アクモンの前座を務めたこともある)。良い音楽だけを謙虚にリスナーに届けてくれた、とても愛すべき存在である。

そんな彼らのキャリア第一作目としてリリースされたのが、この『I Should Coco』。本作は、ヒット曲#4「Alright」が象徴するように、底抜けに明るくて元気な作品である。かき鳴らされるギターサウンド、力強いドラムとベースが芯の太い演奏を繰り広げており、アルバム内を軽快に駆け抜けていく。そのパワフルさとスピード感は、もはやパンクロックにも匹敵するほどである。さらにオルガンの跳ねるような音色が古風なロックの味を作り出し、これが彼らの特徴の一つともなっていく。そしてなんといっても外せないのはヴォーカルで、その野性的な歌声は胸がすくほど気持ち良い。これらのサウンドが一体となり、スリーピースながらも迫力のあるサウンドを作り上げている。

彼らは若干20歳前後という年齢で本作を作り上げ、瞬く間にブレイクを果たすこととなったが、デビュー作にふさわしい初々しさと勢いが詰め込まれており、ブリットポップ狂騒に一役買ったとも言える名作である。ただ個人的に凄いと思っているのは、冒頭で記したとおり、安定感のあるキャリアである。なので、彼らを知った方は本作で終わらず、以降の作品もぜひ聴いてもらいたいと切に願う。特に『Road to Rouen』を聴けばきっと驚かれるに違いない。キャリアのスタートダッシュが良かったし、その後リリースする作品はいずれも評価されてきたからこそ出来た芸当なのかもしれない。

このように、作品を重ねるごとに懐が深くなっていった彼ら。ただ、本作に関してはネガティブな感情は何一つ無く、”嫌なことは忘れてはっちゃけちゃおう!”という、ただ一点に神経が注がれている。なので本作を聴く際は難しいなど考えず、ただおバカになって愉しめばいいと思う。

rollingstones-outofourheads
1.Mercy, Mercy
2.Hitch Hike
3.The Last Time
4.That’s How Strong My Love Is
5.Good Times
6.I’m All Right
7.(I Can’t Get No) Satisfaction
8.Cry To Me
9.The Under Assistant West Coast Promotion Man
10.Play With Fire
11.The Spider And The Fly
12.One More Try

ストーンズ史始まりの兆し

偉大なるブリティッシュロックバンド、ローリング・ストーンズの初期にあたる作品。まず、彼らの初期作品に関しては、色々ややこしいところがある。例えば本作は、英国では3枚目でありながら米国では4枚目であるとか、ジャケットも違えば収録内容も違うなどである。ちなみに今回紹介するのは、ヒット曲#3「The Last Time」#7「(I Can’t Get No) Satisfaction」が収録されている米国盤。

彼らの初期の作品といえば、R&Bのカバーが大半だったが、本作ではオリジナル曲の存在感が際立つようになった。それを象徴するのは、言うまでもなく上記の2曲である。これが契機となったのか、次作『Aftermath』からはオリジナル曲のみの構成となり、一気に飛躍していく真のストーンズ史が始まるのである。以降の作品と比べると粗い作りなのは否めないが、彼らの出世への足がかりになった曲と言っても過言ではない名曲#7「(I Can’t Get No) Satisfaction」が収録されているので、是非ともチェックしておきたい。

R&Bやフォークから影響を受けたモノクロ感たっぷりのサウンドは、60年代ロックの代名詞だが、本作は正にその雰囲気を味わうにはもってこいである。優等生のビートルズとは反対のやさぐれた不良っぽい雰囲気もこの頃から出ていたようだ。#1「Mercy, Mercy」、#2「Hitch Hike」は個人的に癖になり、跳ねるようなリズムにブルースハープの音が心地よい#9「The Under Assistant West Coast Promotion Man」も良い。

個人的に初めてストーンズを聴いたのはこの作品で、未だになぜこの作品から手つけたの自分でもわからない(笑)。しかし冒頭の3曲、特に#3「The Last Time」にはどっぷりハマってしまい、前知識なくても楽しめた。ローリング・ストーンズという大物バンドが飛躍する前段階の作品に於いて、聴きやすい部類に入るのではないかと思う。彼らのどの作品から手を付けていいかわからない方は、米国盤の本作はオススメできる。

radiohead-kida
1.Everything In Its Right Place
2.Kid A
3.The National Anthem
4.How To Disappear Completely
5.Treefingers
6.Optimistic
7.In Limbo
8.Idioteque
9.Morning Bell
10.Motion Picture Soundtrack

私の心の処方箋

残念ながら私は、本作をリアルタイムで聴くことは出来なかった。しかし、一度聴いてしまえば、当時のリスナーに与えた衝撃は容易に想像できる。なにせ前作『OK COMPUTER』で、ロックバンドとして頂点に君臨した彼らが、そのロックの概念を壊すようなことをしているのだから。

とは言え、前作の成功から、バンドへの関心度は非常に高い状態にあったので、チャートアクションも各国で良好であり、日本でもオリコン3位まで上り詰めた。結果的に商業的にも大成功したといえる。

現在でこそ00年代の名作と評され、レディオヘッドの傑作の一つに挙げられている本作だが、当時は評価が真っ二つに別れた作品であった。ただ、それはあくまでも今までのレディオヘッドを聴いてきたからこその衝撃であって、評価が落ち着いた現在においては、多方面から素晴らしい賛辞をもって迎えられている作品である。彼らにとっては間違いなく『OK COMPUTER』と対を成す、もう一つの頂点である。

ロックを解体し、無機質な電子音の波で作られた、無感情で静寂な音世界。ギターの音などまるで無く、荒々しさも皆無。”うつ”を音に置き換えたような、限りなく内省的な音楽性は、まるで既存のリスナーを突き放したかのようである。”難解”というのも本作のキーワードだが、今となっては意外と聴きやすい音楽なのではないかと思っている。また、どこまで計算されているのかわからないが、聴きこむごとに新たな良さも発見できるので、聴き応えもある。そういう部分が、本作が多くの人に支持されている要因ではないだろうか。

本作は、突き抜けた名曲がないところも特徴の一つで、それがアルバム全体に漂う”緻密さ”として表現され、統一感のある作品にしている。”すべてが名曲”…、言うのは簡単だけど、あえて名曲を上げるならば#8「Idioteque」。打ち込みの強いピコピコの電子音が耳に残り、とても聴きやすいので、まずはこの曲から聴いてみることを勧めたい。

今回、このような作品となった理由としては、トム・ヨークがAutechreに影響を受けていたことがよく言われている。また、この時期にトム・ヨークが「ロックなんか退屈だ」「ゴミ音楽じゃないか!」などと何度も発言しており、嗜好や心境の変化がこのような作品に影響を及ぼしたのは想像に難くない。

個人的に本作は、うつ状態で何も考えたくない無気力のときに聴くと、非常に良く体に染み渡る。なので処方箋の役割を果たしている。気持ちが極端にふさがっている時は、本作やNew Orderのような暗い音楽が、心に寄り添ってくれているような安心感を持たせてくれるはず。人間の心はバネと同じで、一度どん底まで落ち込めばその反動で一気に飛び上がることが出来る。

話がそれたが、そんなこともあってか、以前まで『the bends』こそ傑作だと思っていた私は、現在は『KID A』の方が圧倒的に聴き返す回数は多く、とてもお気に入りの作品となっている。独特の作風のため手放しに勧めることは出来ないが、多くの方に支持されてきた作品なので、一聴の価値は大いにあると思う。

(さらに…)

ride-carnivaloflight
1.Moonlight Medicine
2.1000 Miles
3.From Time to Time
4.Natural Grace
5.Only Now
6.Birdman
7.Crown of Creation
8.How Does It Feel to Feel
9.Endless Road
10.Magical Spring
11.Rolling Thunder
12.I Don’t Know Where It Comes From

シューゲイザーからの脱却

1994年。この頃と言えば、シューゲイザーが完全に終焉を迎え、ブリットポップが台頭してきた時期である。少なくともライドがデビューをしてブレイクを果たした時期とは大きくシーンが変わっていた。

ライドは96年までの活動期間に合計4枚のアルバムを残している。中でもデビュー・アルバム『Nowhere』は、嵐のようなギターノイズと、夢幻的な世界観で、シューゲイザームーブメントの旗手としてシーンを大いに盛り立てた。以降のアルバムも、音楽性を柔軟に変化させた名作ばかりである。しかし時代にハマりすぎたためか、後期の作品は”らしくないサウンド”だと一蹴され、正当な評価が下されることはなかった。

3rdアルバムである本作『Carnival of Light』は、ライドにとって最も大きな転換期を迎えたアルバムだったのではないだろうか。シューゲイザーからの完全なる脱却が図られ、ギターポップ、ブリットポップに寄った作品となり、バンドの新たな方向性が示された。しかし思うように売上が伸びず、この時期からバンド内での不和が広がっていったようである。

ライドにこびりついたシューゲイザーの印象は、再評価された現在でも根強く、彼らも否定はしないところだろう。ただしその葛藤や苦労は大きいようで、音楽性が大きく変わっていった2nd以降の作品を聴けばそれがよく分かる。同時に、ファンが求めていたのは、初期の衝動性を秘めた青臭いサウンドだったということも…。

ただ、初期から順番に聴いてみるとわかるが、とても理想的な成長を遂げているバンドであると思う。アルバムを出すごとに青臭さが薄れていき、一気に成熟味を増していく。一見地味なのだが、とても味わい深いギターロックに仕上がっており、癖になるフレーズが満載。ツインギターによるの激しいサウンドや、ドアーズのような古き良きオルガンの音色、脱力したツインボーカルが重なり、荒々しいのにとても風通しが良い。身体が宙に浮いた靄がかかったような以前の雰囲気から一変、地に足を着けた視界良好な雰囲気が印象的である。

楽曲のセンスも相変わらずで、#3「From Time to Time」なんかは永遠に聴き続けていたいと思わせるほど癖になった楽曲。暖かみがあるのに冷たい質感も残っており、まるで冬のベランダでひなたぼっこをしているかのようである。これは#4「Natural Grace」も同様である。上記の2曲はお気に入りで何度もリピートしてしまった。

音が変わったことで、変化しないライドたらしめる部分というのも再確認した。例えば、前述したツインギターとクールなコーラスのコントラスト。さり気なく使われている特徴的なフレーズなど。乱暴な言い方をすると、シューゲイザーとブリットポップの間に立つ作品といえるだろう。シューゲイザーも好きだけど、OASISや、アーバンヒムズ期のThe Verveも好きだという方にはおすすめできる。とても質の良いギターロックアルバムである。

(さらに…)

suede
1.So Young
2.Animal Nitrate
3.She’s Not Dead
4.Moving
5.Pantomime Horse
6.The Drowners
7.Sleeping Pills
8.Breakdown
9.Metal Mickey
10.Animal Lover
11.The Next Life

英国ロックシーンを叩き起こした衝撃的作品

シアトルでグランジ・ロックが隆盛を迎え、ロックが息を吹き返しはじめた90年代初頭。イギリスでも92年にロックの復興を告げるかのように、過激でスキャンダラスなバンドが登場する。それがスウェードである。

衝撃度で言えば彼らの作品の中ではダントツと言える本作「Suede」。眠りかけていた英国ロックシーンに強烈なインパクトを与えた、90年代の名作。禁忌とされていた事柄をふんだんに用いたブレッド・アンダーソンによる過激な歌詞と、気持ち悪いほどねちっこくて中性的な声。”歌うかのよう”と評された、バーナード・バトラーによる華やかなギターサウンド。The Smithsからヒントを得たと思しき音楽性は、退廃的で過激、そしてエロティックで美しい。この異様な世界観は、Suedeたらしめる部分である。このような音楽性でシーンに現れたのだから、当時の衝撃といったら想像に難くない。

本作は、シングルとしてリリースされた#1「So Young」#2「Animal Niterate」#6「The Drowners」の出来と存在感が圧倒的。ブレッドが艶やかにサビを歌い上げる横で、歪んだギターがまるでコーラスのように絡みつくのが心地良い。一方、繊細な音色で紡がれる#3「She’s Not Dead」#7「Sleeping Pills」#8「Breakdown」といったスローナンバーは、リスナーを眠りに誘うかのような優しさをもち、リスナーに小休止を促す。禍々しさの強い本作において、本作がここまで支持されているのは、相反するこのような楽曲が間にはまされているからだと感じた。

2001年の解散までに5枚のアルバムを世に送り出したが、本作が最もSuedeの音楽性を表しているのは間違いない。ちなみに、サウンドの核を担っていたバーナード・バトラーは、次作「Dog Man Star」の制作を最後にバンドを脱退。未だにバーナード・バトラーが在籍していた時こそが真のSuedeだ、という声は根強く、私もその一人だったりする。もちろん3rd以降の作品も素晴らしいのだが、やはりSuedeの音といったら、本作か2nd「Dog Man Star」である。

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1.Welcome to the North
2.Freedom Fighters
3.Bleed from Within
4.Breakin’
5.Cessation
6.Fight the Feeling
7.Guide
8.Into the Night
9.I Need Love
10.One Way In, No Way Out
11.Open Your Mind

しっとりと聴かせるダンスロック

2000年代初頭、デビューアルバム「The Music」でブレイク。以来、日本でも人気が高く、フジロックフェスの常連としてもお馴染み。そして本作は、2004年にリリースされた2ndアルバム。

メタリックなギターによるハードな味付けのサウンドと、クラブミュージックばりのノリの良さが組み合わさったデビュー作「The Music」は、”ダンスロック”という言葉を使いたくなるほどの素晴らしい作品だった。以来、ダンスミュージック寄りのバンドが次々とブレイクを果たすため、このバンドの登場がシーンに与えた影響は非常に高いものと思われる。俗にニューウェイブリバイバルと言われるものである。

そしてもう一つこのバンドを特徴づけるものが、ロブのハイトーンヴォーカル。気持ちいいくらい突き抜けて響き渡る様は、個人的に大好きだ。

そのインパクトの強かったデビュー作に対し、本作は粗が削れた上に、非常にしっとりとした雰囲気に包まれている。音圧で圧倒するようなスタイルではなく、あくまで曲の良さで攻めているような感じ。そのため、それぞれの楽曲に表情があり、アルバムを通して聴くと非常に聴き応えがある。彼らはこんなことも出来るんだと、引き出しの多さに感心させられたアルバムである。

本作で一番好きなのは、#3「Bleed From Within」。じわじわと盛り上がってくる曲展開が素晴らしく、中毒性が半端ない。そして本作ならではの曲として、ヴォーカルを聴かせることに特化した情緒的な#6「Fight the Feeling」がある。この二曲は本作では白眉である。情緒的といえば#8「Into the Night」もある。どの曲も言えることは、小難しいことを考えなくとも、単純に曲がいいということ。前作の彼らを知らなくともすんなり入っていけるし、むしろ前作よりも好きだいう方も多いかもしれない。

一方、#1「Welcome to the North」とシングルとなった#2「Freedom Fighters」は、前作の流れを引き継いだハードな音とグルーヴ感で構築されたのものとなっている。そのため冒頭から今までの彼らの音堪能でき、興奮させられる。そこから違和感を覚えない程度の変化をしていきながら、途中で#6のようなミディアムナンバーを挟んだりする。このように、新しい引き出しの内容を小出しにしていくようなアルバム展開は、前作のファンを拒もうとしない、とても素敵な内容だと思った。

前作「The Music」ほどのインパクトはないかもしれないが、一曲一曲と聴いていくと、本作の出来の良さに驚くと思う。個人的に、前作よりも本作のほうが遥かにリピート率は高い作品。
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jesusjones-doubt
1.Trust Me
2.Who? Where? Why?
3.International Bright Young Thing
4.I’m Burning
5.Right Here, Right Now
6.Nothing to Hold Me
7.Real, Real, Real
8.Welcome Back Victoria
9.Two and Two
10.Stripped
11.Blissed

ロックシーンの間に挟まれた存在

90年代初頭という、ロックシーンが地殻変動を起こしている時期に、その隙間を縫うように現れたJesus Jones。本作「Doubt」は、彼らが世界的な人気を確立した2ndアルバムである。

“デジタル・ロック、ビッグビートの先駆者”という言葉で片付けられることも多く、またメンバーのルックスやファッションに関する話題性も強かった彼ら。一方で、時代を反映したサウンドをポップに消化して鳴らしていたという印象が強く、その割にはどのジャンルの括りにも入れない彼らの不思議な存在感。その異質さは、シーンからは浮いていたと感じるほど。

「Doubt」は、#5「Right Here, Right Now」、#7「Real, Real, Real」のヒットも手伝い、最もポップ性を感じさせる作品であり、世界中で大ヒットを記録した、彼らの代表作である。シンセが大げさなほど取り入れられたニューウェイブ時代の音作り、グルーヴ感を強く持たせたマンチェスター系列のノリで一世を風靡。ケミカル・ブラザーズらの先駆的存在といえ、ミクスチャーの先駆けのようでもある。日本においても、90年代に活躍した音楽プロデューサー(小室哲哉など)は、彼らの影響を少なからず受けているんじゃないだろうか。

アルバム冒頭の#1「Trust Me」では、分厚いギターサウンドとシンセとの絡みつきによる火花散るサウンドで、時代を超越したかっこよさを感じるが、#3「International Bright Young Thing」、ヒット曲#7「Real, Real, Real」などの時代感の強い古臭い音使いが魅力的。このように当時の音楽シーンの空気感をダイレクトに味わえる作品であるともいえる。

既存の音楽の影響を強く受けながらも、時代を先取りした音作りをし、さらにそれをポップに消化させて大ヒットを収める・・・。今考えると高いポテンシャルをもったバンドだったんだと感心してしまう。しかししばらくしてロックシーンにはオルタナの波が押し寄せ、ブリットポップの波が押し寄せ、持ち味のクラブサウンドも、ビッグビートとして後継のバンドが大ヒットを記録していく・・・。事実、大ヒットの本作以降、売上は一気に落ちてしまったと言う。ジーザス・ジョーンズは、なんとも損な立ち位置にいるバンドだなぁと感じてしまった。
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